お腹の中で聴いてたかのような感覚
──ワンマンライブの話に戻りますが、衣装の影響もあったのか、僕が前にライブを観た2月頃と比べると、ステージ上での皆さんの雰囲気が全然違うと思いました。以前はなんだか切実な雰囲気を感じたんですけど、今はもっと楽しもう、楽しませようとしてる感じが伝わってくるんですよね。
河野 前はいろんなことに追い込まれてたけど、今はたぶん、余裕が生まれてきたんだと思います。
──東名阪ツアーでの経験も大きい?
一同 うーん……。
──案外、自分たちの成長を自覚していないんですね(笑)。
一同 あはは!
イケダ みんな天然ちゃんなのかも(笑)。
ムロ なんか、1つのツアーや1つの公演に特別な思い入れがあるというより、全部に対して必死すぎて、毎日が濃いんですよね。
──ああ、言われてみれば、新体制がスタートしたのが1月末でしたし、そこから13曲まで持ち曲を増やすだけでも相当な作業量ですもんね。
イケダ ほかのグループにはあまりない展開かも(笑)。
──何が皆さんのことをそこまで突き動かしたんでしょう。もうちょっとペースを抑えて活動しても問題なかったと思うんですけど。
ムロ やっぱり、6月3日にZepp Shinjukuワンマンをやることを、まだ旧体制だった昨年10月の新宿BLAZE公演で発表しちゃってたから……それまでに無理矢理にでも曲をそろえなきゃという意識が自然と刷り込まれてたんですよね。そういう意味では、このペースでこれだけの数の曲を用意して振り入れするというのは、もはや当然みたいな感覚ではありました。
──新たに増えた楽曲の中に、松隈ケンタさんが作詞作曲した「いにしえに響き続ける声」があるのは、新体制の大きなトピックの1つですよね。
パン ニコ生で私たちの特番を組んでいただいたときに視聴者と電話で話すコーナーがあったんですけど、ひと通りコーナーが終わってもまだ時間があったので、知ってる人にいきなり電話をしてみようということで、私とムロが松隈さんの名前を挙げて。その場で電話をして曲を作っていただけるようにお願いしたんです。
──それからどう展開していったんでしょうか。
パン そのとき、松隈さんは「NARLOWの活動を見てから曲を作るかどうか判断する」と言ってくださって。その後、定期公演の最中に松隈さんから電話がかかってきて、「曲、書きます」と言ってもらえました。
──松隈さんから届いた曲を聴いてみてどうでしたか?
パン なんか、お母さんのお腹の中で聴いてたかのような、「私はこれを聴いて育った!」みたいな感じでした。私はアイドルになる前から松隈さんの作った音楽を聴いてきて、NARLOWの前にいたグループでも松隈さんの曲を歌っていたけど、こんなふうにしてまた自分たちの曲を作っていただけるなんてまったく思ってなかったんです。松隈さんのことを知らなかったファンの方も「新しいNARLOW、いいね」と言ってくれて、私たちのことがいろんな人の目に留まるきっかけになったと思います。
ムロ NARLOWにとってかなり大きな出来事だったと思います。過去に松隈さんが作った曲を歌ったことがあるムロとかパンだけじゃなくて、松隈さんのサウンドによってほかのメンバーの声もすごく引き立っていて、転生者のみんなも同じように感じていると思います。NARLOWの存在がいろんな人に知られていくことがうれしいですね。
──松隈さん以外にもカンザキイオリさんや蝶々Pさんといった方々がNARLOWに楽曲を提供していますが、それらの楽曲についてはどんなことを感じましたか?
ムロ 私はもう、お腹の中にいるときから聴いてたから……。
パン 真似すんなよ(笑)。
ムロ それぐらい、蝶々Pさんもカンザキさんもありえないんですよね。もう、ありえない。だって、ずっとですもん。ずっと聴いてきて、しかもただ聴いてきただけじゃなくて、その音楽に救われて生きてきた。てか、カンザキさんは顔出しをしない方なので、実在するかどうかすらよく知らなかったというか……。だから、ライブに来てくださったときに本物かどうか疑いましたもん。カンザキイオリと言い張ってる別人なんじゃないかって。
──(笑)。
ムロ カンザキさんが提供してくださった「ゾゾゾンビ」のデモがカンザキさんの仮歌で届いたときに、「あれ、やっぱり本物だ」とやっと思いました。
パン 疑ってんなよ(笑)。
──確信するまで時間がかかりましたね(笑)。「ゾゾゾンビ」もそうですけど、メンバーの皆さんが歌詞を書いた曲とはかなり雰囲気が違いますよね。
山下 私は「こう伝えたい」とか「こう思ってる」ということを歌詞にするんですけど、カンザキさんの歌詞は会話のように歌詞が並べられていて、そこにすごく魅力を感じました。「お腹すいたね」って歌い出し、聴いたことないじゃないですか(笑)。そういうところにカンザキさんの世界観が表れてるなって。
自分が言ってほしかった言葉を歌詞にしている
──一方、メンバーによる作詞曲も増えていますが、ムロさんと山下さんが書く歌詞は「死」「狂う」「殺す」といった強い言葉がよく登場するのが特徴だと感じました。こういう言葉はどんなところから湧いてくるんですか?
ムロ 私は無意識です。元気なときに歌詞を書けないんですよ。絵もそうなんですけど、元気じゃないときに作ったものこそが人の心に響くと思っているところがあって。
──身を削って書いてる感じがします。
ムロ そうですね。本当にそうです。もう、泣きながら書いたりして。
──「Bet yourself now!」に出てくる「道標を歌うから」も覚悟がないと言い切れないフレーズだと思うし、これ以外にも「よくぞここまで書き切ったな」と感じる言葉が随所にあります。
ムロ 「こういう歌詞が世の中にあればいいのに」って私はよく思うので、そういうことを書いてます。
──というと?
ムロ 自分が今まで生きてきた中で、人に言ってほしかった言葉とか、断言してほしかった言葉ってすごくたくさんあるんですよ。自分以外の誰かもこういう言葉を欲してるんだろうなと思いながら書きました。あと、そういう歌詞のパートは、あえてほかのメンバーに担当してもらっています。自分が言われたかった言葉をNARLOWのメンバーに歌ってもらうことによって、「私に対して歌ってくれてるんだ!」と思えるんです。
山下 私も、「死にたい」と思ったから「死にたい」って書きました。そのまんまです(笑)。曲によってテーマは変えるので、今自分が置かれてる環境について書くこともあるし、落ち込んでる人の背中を押すような歌詞を書くこともあるんですけど、「夏とスノードロップ」では自分が感じた「今、死にたい」という感情を素直につづりました。自分が歌詞に込めた思い、メッセージを転生者に伝えたいし、それ以外の人に対しても伝わったらいいなと意識しています。
──ムロさんや山下さんに対して、パンさんが書く歌詞は、ふんわりと包み込むような優しさがあるなと感じました。
パン 優しさ、出てますか?
──シンプルにそう感じましたけど、ご自身としては自覚はないですか?
山下 優しいというか、はかないよね。
パン Zepp Shinjukuで初めて披露した「心星」について話すと、この曲で「星」として表現されているのは、聴く人によってはNARLOWのことかもしれないし、恋人だったり、友達だったり、もしくはペットのことを思い浮かべる人もいると思います。でも、私にとってはZepp Shinjukuでのライブが「星」で。あのライブは「がんばってまた明日を生きよう」と思えるくらい大切なものだったんですよね。誰しもそういう大切なものを見つけて見失わないでいれば、この先も生きていけるんじゃないかなと、そういう気持ちで歌詞を書きました。
NARLOWって本当に難しい
──振付についてはメンバーのうち、河野さんが携わっていますね。河野さんが振りを手がけた最新曲というと?
河野 「ゾゾゾンビ」ですね。ちょっとセリフが入っていたり、今までとは違うタイプの曲だったので振りを考えるのが難しそうと思ってたんですけど、1日でできました(笑)。
──すごい。
河野 転生者が真似できる振りにしようと決めていて、実際、サビ終わりにそういうパートがあるんですけど、そこ以外は直感で「これがいい!」と感じた振りにしました。なので、何も考えてない……は言いすぎかもしれないですけど、自分の中では一番しっくりくる振付になりました。
──ここまで話を聞いてきて思ったんですけど、NARLOWって直感型のメンバーが多いんですか?
イケダ 多い気がする。
河野 一発で「これだ!」って決めて、そのまま突き進んじゃう感じですね。
──グループ全体が暴走しそうなとき、それを抑えるメンバーはいるんですか?
パン いない……?
イケダ みんな全力で走り去っていきます。
──あはは!
河野 これは大人に聞いたほうがいいかも(笑)。
──(スタッフに向かって)どうですか?
スタッフ たぶん、イケダさんです。
イケダ あー、しっかりしてるんで。
河野 自分で言うな(笑)。
イケダ でも、自分のことは止められないから。
山下 全力疾走だよね(笑)。
──突っ走るタイプのメンバーがそろっているからこそ、短期間で多くの曲を作ることができたのかもしれないですね。現実的に「無茶だよ」って言う人がいたら勢いが削がれるし。
イケダ 確かに。
──これだけ曲が増えた今お聞きしたいんですけど、「NARLOWらしい曲」ってどういうものだと思いますか?
イケダ 難しい質問ですね(笑)。なんか、NARLOWらしさの定義って本当に難しいんです。めっちゃいろんな系統の曲があるじゃないですか。アンソロジーみたいな。(ほかのメンバーに向かって)アンソロジーってわかる? いろんな作家さんが1つの題材のもとに書く、まとまった分厚い本のことなんだけど、NARLOWの曲はアンソロジーを見てるような気分になるんですよ。それぞれにいろんな味があって面白い、バラエティパックみたいな。それがNARLOWらしさだと思ってます。でも、私自身はまだ「これが一番NARLOWらしい」っていうものが全然わかってないんですけど。
──じゃあ、逆に「NARLOWらしくない曲」はどんなものだと思います?
山下 え……超ラブソング、みたいな?(笑) 聴く人によってはラブソングに聞こえたり、家族やメンバーのことをイメージした歌詞は今のNARLOWにもあるけど、「大好き!」みたいな曲はNARLOWらしくないと思います。
──そういうストレートなラブソングは書けないですか。
ムロ 恋愛しないので(笑)。
──あはは!
イケダ そういう曲をNARLOWとしてやることはマジで想像できないです。
──新体制になってから半年ほどが経ったのでお聞きしたいんですけど、今、旧体制を振り返ってみてどう感じますか?
河野 あの頃はあの頃で勢いがあったと思います。曲もロックがメインだったし。やっぱり、今でも旧体制の曲のほうが好きという転生者の人もいるし、新体制になってからライブに来なくなってしまった人もいて。でも、今は今のよさが確実にあると思うし、個人的には旧体制は旧体制として冷静に振り返ることができます。
──今でも旧体制に引きずられるところはありますか? それとも割り切れてる?
山下 別物だと思ってやってます。「あれはあれでよかった。でも今もいい」って。
──それは徐々に切り替えられた感じ?
河野 時間の経過とともに。やっぱり曲が増えたことが大きい気がします。新体制になったばかりの頃は持ち曲が5曲だけで、対バンイベントでは同じ曲を2回やったりすることが多かったんです。でも、今はやれることが増えてきたし、それに伴って徐々に切り替えられた感じがします。
ムロ 曲に限らずなんでもそうですけど、自分は急な変化に対応する能力が低くて。でも今の自分の気持ちは完全に新体制に染まっているから、今あの頃を振り返ってみても……どうだったっけなあって感じです。
──9月には全国11カ所を回る全国ツアーが始まります。どんなツアーにしたいですか?
パン 前回のツアーは東名阪を回って、それからZepp Shinjukuで1stワンマンをやったんですけど、ワンマンのチケットは即完できなかったんですよね。今回は全国を回れるし、期間も前回より長いし、曲も増えたし、少しは強くなったと思うので、ファイナルのSpotify O-WESTをパンパンにしたいです。そして転生者とお互いの熱をぶつけ合って、愛と感謝を伝え合えたらいいなって思います。
公演情報
NARLOW 2nd Tour「Apollo」
- 2024年9月21日(土)東京都 下北沢 LIVEHOLIC
- 2024年10月6日(日)広島県 CAVE-BE
- 2024年10月14日(月・祝)山梨県 KAZOO HALL
- 2024年11月3日(日・祝)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
- 2024年11月10日(日)大阪府 ROCKTOWN
- 2024年12月8日(日)千葉県 千葉LOOK
- 2024年12月15日(日)北海道 SPiCE
- 2025年1月12日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2025年1月18日(土)愛知県 X-HALL -ZEN-
- 2025年2月9日(日)福岡県 LiveHouse 秘密
- 2025年2月15日(土)東京都 Spotify O-WEST
プロフィール
NARLOW(ナロウ)
BiS、LADYBABY、NMB48などの元メンバーを中心とした6人組ガールズグループ。「ロキノン系」を標榜し、抒情的な歌詞とミクスチャーロック、エモーショナルなギター、ピアノサウンドを中心とした楽曲とともに、2023年6月に神奈川・KT Zepp Yokohamaでステージデビューを果たした。2023年12月よりメンバーを中心に歌詞や振付を作り上げる新体制に移行し、2024年1月に東京・WWW Xで新体制お披露目公演を開催。2024年3月に東名阪ツアー「Road to Zepp Shinjuku FIRST ONE MAN TOUR 2024 "Kill the Grim Reaper"」をスタートさせ、デビュー1周年記念日の6月3日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でワンマンライブを行った。9月から2025年2月にかけて計11公演の全国ツアー「NARLOW 2nd Tour『Apollo』」を開催する。