ナオト・インティライミ|J-POPに世界のトレンド掛け合わせた“新ティライミ”をご提案

ナオト・インティライミの21枚目のシングル「Start To Rain」が10月24日にリリースされた。

2017年1月に自身の原点に立ち返るため、世界を回る旅に出ることを宣言し、約半年間日本を離れていたナオト。帰国後にはその旅の模様を収めたドキュメンタリー映画「ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2」が劇場公開され、2018年に入ると1人だけで全国47都道府県を巡るライブツアー「こんなの初めて!!ナオト・インティライミ 独りっきりで全国47都道府県 弾き語りツアー2018」を開始、さらに7月には20枚目のシングル「ハイビスカス / しおり」を発表するなど、精力的な活動を展開している。

今年2枚目となるシングルの表題曲「Start To Rain」はブラックミュージックを基調としたさわやかなナンバー。カップリングの「Sing a song」は「ハイビスカス」でも取り入れたトロピカルハウス調の楽曲に仕上がった。音楽ナタリーのインタビューではシングル「Start To Rain」の制作はもちろん、旅から帰ってきてからの制作スタンス、今後の音楽活動に関する構想についてもたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 高橋拓也 撮影 / 草場雄介

24カ月連続リリースでも大丈夫

──すでに1カ月経ってしまいましたが(※取材は9月下旬に実施)、まずはお誕生日おめでとうございます。

ありがとうございます!

──今回のシングルの表題曲「Start to Rain」はナオトさんのお誕生日、8月15日に“謎の新曲”としてZIP-FMで解禁となり、1日中オンエアされました(参照:明日誕生日のナオト・インティライミ、謎の新曲でZIP-FM占拠)。珍しい解禁方法でしたね。

ZIP-FMは僕の出生地である、東海地方のラジオ局なんです。それに12月には愛知でドーム公演もあるので(12月29日に愛知・ナゴヤドームで開催される「ナオト・インティライミ ドーム公演2018~4万人でオマットゥリ!年の瀬、みんなで、しゃっちほこ!@ナゴヤドーム~」)、こんな形で解禁してみました。

──前回のシングル「ハイビスカス / しおり」は7月にリリースされ、今回の「Start to Rain」は10月にリリース。およそ3カ月という短いスパンでの発表となりました。

そう言われるとハイペースだね。でも僕は6年ぐらい、ずっとこの間隔で新曲を発表してきたんですよ。旅に出る前も4カ月に1枚ぐらいのペースで発売していたから。旅を経たあとも曲がたくさんできていて、今なら24カ月連続リリースでも大丈夫。そのぐらいやりたい音楽があふれている状態かな。

ナオト・インティライミ

──ナオトさんは前回のインタビューで「全部形にするには、一生をかけても間に合わないと思う」とおっしゃっていました(参考:ナオト・インティライミ「旅歌ダイアリー2」特集)。今も同じくらいのペースで作品の構想が生まれているのですか?

ずっとそのモードだね。自分の作り出したものは歌い切れないから、プロデュース業や楽曲提供は盛んにやっていきたいと思っています。

──最近では、さだまさしさんと楽曲を制作し(参照:さだまさし、アルバムに“ナオト・マサシ・インティライミ”楽曲を収録)、BOYS AND MENには新曲「あなたに出逢えたこと」を提供しました(参照:BOYS AND MENシングルc/wにアニキ分ナオト・インティライミ提供曲)。

ナオト・インティライミ

これまでもSMAPとかキスマイ(Kis-My-Ft2)とか、いろいろな人たちに楽曲を提供してきたんですけど、さださんとの楽曲はがっつりプロデュースやアレンジを担当させてもらったんです。こういった形でほかの人の楽曲に関わってみたかったし、敬愛するさださんの作品に参加する夢も叶って光栄でした。

──ナオトさんとさださんは長年交流があり、以前音楽ナタリーにて展開されたナオトさんの特集でもさださんがコメントを寄せていました(参照:ナオト・インティライミ「Viva The World !」特集)。この共作はどういった経緯で実現したのですか?

「パスワード シンドローム」という曲はさださんと一緒に飲んでたときの世間話がきっかけになったんです。「パスワード覚えらんねえなあ……」「わかります、最近はパスワードの文字数が多いですよね」ってさださんと話しているうちに曲のイメージが湧いてきて、「さださん、俺もう頭の中で音が鳴ってるんですけど」「じゃあやってみるか」ってなって。もう2、3日後には土台を完成させて、さださんに投げて……。このコラボでは“誰も聴いたことのないさだまさしの曲”が作りたかったんですよ。ラジオから「パスワード シンドローム」が流れたときにさださんの曲だと思わないようなものにしたかった。さださんぐらいの大御所だったらあそこまで冒険する必要はないし、新しいことをやりたがらないだろうけど、あの方は「お前無茶やらせるねー!」って面白がって乗ってくださって。うれしかったですし、すごく貴重な体験でしたね。

J-POPに世界のトレンドを組み合わせる“新ティライミ”スタイル

──今回のシングルの表題曲「Start To Rain」はベース、ドラムなどリズムを強調した楽曲になっています。ブラックミュージック、特にファンク的な要素が前面に押し出されたように感じました。

この曲はひさしぶりに自分だけでアレンジを手がけたんですよ。今まではアレンジャーと一緒に制作することが多かったんですけど、「Start To Rain」は自分の中でイメージが固まっていたから、それをそのまま形にしたんです。ファンク色を特別に強くしようとは思ってなかったんだけど、去年の旅を経て、海外のクリエイターたちと曲を作るようになってから、自分の中にあるそういうテイストが再開花したのかな。

──今年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演された際、ナオトさんはマイアミでのレコーディングから帰ってきたばかりだとお話していました(参照:サザン13年ぶりに出演した「RIJF」後半戦、MWAMやももクロら100組熱演)。「Start To Rain」も海外で制作したんですか?

この曲は日本で制作しました。旅を終えたあと、月の半分はロサンゼルスかマイアミにいるんです。「Start To Rain」は去年の秋頃には8割ぐらいできていて、1人でも完成させられたんだけど、「このぐらいの完成度で落ち着いちゃうんだろうな……」って思ったんです。それでロサンゼルスにこの楽曲を持っていって、現地のクリエイターたちに相談して、歌詞やメロディをいじって歌入れしました。そして日本に持ち帰って、国内のミュージシャンたちとレコーディングしたんです。

──日本とロサンゼルス、ハイブリッドな環境で完成したんですね。

うんうん。ホントにそうね。

ナオト・インティライミ

──レコーディングに関して、海外と日本で意識の違いはありますか?

海外のほうが圧倒的に気が楽だね。ワンルームにスピーカーとか機材が用意されていて、いいマイクが1本あればすぐ作業できるんです。あれを経験しちゃったから、スタジオらしいと言うか、緊張感のある環境で制作するってことはもうないかな……そういう海外のスタイル、やり方がすごく性に合って、日本でもこの方法を導入しました。

──ご自身専用の作業部屋を用意したり。

ナオト・インティライミ

そうそう。作詞や曲作り、歌入れとかほとんどの作業はその部屋で行って、そのまま作品にしています。今までは曲の構想から歌入れ本番まで、ある程度決まった流れがあったんですけど、その過程がすべてすっ飛んでるから瞬発力がすごくて。「ハイビスカス」もその新しい環境で制作した1曲です。

──旅に出る前の曲と比べると、「ハイビスカス」も「Start To Rain」もとてもリラックスした雰囲気の楽曲になりました。レコーディング環境の変化も影響しているのかもしれないですね。

旅に出る前の楽曲と全然違うもんね。もっと日常生活の中にある感じ。

──サウンドについても音を入れすぎず、部分的に口笛やキーボードのサウンドが入っているシンプルなアレンジが施されています。今回はあえて音数を減らしたんですか?

まさにそうですね。でも狙ったと言うよりは、今の自分のスタイルに合わせたという感じ。今世界でトレンドになってる音楽は、そんなに音数が多くないんです。そういう意味では世界のオントレンドな作風を反映したことにもなるかも。でもメロディやフロウはJ-POP的にして、ハイブリッドな落としどころを見つけたかったんです。

──J-POP的な要素は必ず盛り込むよう、心がけているんですね。

何しろ僕はJ-POPが大好きだし、J-POPを聴いて育ってきたから。66カ国を旅して、世界一メロディが豊かな音楽はJ-POPだって、自分の中で証明されているんです。最近は海外での活動も始めているけど、海外かぶれするつもりもまったくなくて。今は海外のものすごくイケてる、トレンディなものをうまくJ-POPに落とし込んでいきたい。それが僕の新しいスタイル、新ティライミですね。