ナタリー PowerPush - ナオト・インティライミ
旅の果てに見つけた ナイスな瞬間をキャッチする
アーティストエゴよりも共有感
──今作を聴いているとナオトさんってDJ的感覚、つまりグッドミュージックの紹介者的感覚の強い人なのかな、っていう気がするんです。EDMだったり、スティールパンサウンドに見られるようなトライバルなリズムだったりを取り入れているのは、普段テレビでナオトさんを観ている、バリバリの音楽マニアではない人たちに「世界にはこんな面白い音楽があるんだぜ」って伝えたいからなんじゃないか、って。
あるかも!
──あれっ!? 「かも」なんですか。自覚的にやってるのかと思ってた(笑)。
意図的にやってるわけじゃないんだけど、確かに音楽を始めるきっかけ自体、誰かに憧れてとか、バンドを組んでとかじゃないから。もともと中2のギターを始めたのは「オレがギターを弾けたら、仲間が集まったときに流行りの曲や合唱コンクールで使われた曲なんかを一緒に歌えて楽しいんじゃないか」と思ったからだし。
──アーティストの自我のありようとしてはかなり変わってますよね。
よく言われます(笑)。「オレのメッセージを聴きやがれ!」とかっていうよりは、その空間で鳴ってると気持ちのいい音は何かっていうことを考えて音楽をやってる。それはこの20年何も変わってないですね。今、言っていただいたように「Nice catch the moment!」が、EDMもあれば、「Catch the moment」や「365」みたいなサーフミュージックというかアイランドミュージックもあるし、「introduction ~Do whatcha wanna」みたいなスキャットで構成するジャズみたいなものもあるっていう内容になってるのは、そういう面白い音楽を通じて、みんなで場を共有したいからなんですよ。ただ現地のオリジナルとはちょっと違う。オレの中にもともとあるJ-POP魂みたいなものと、そういう海外で体験したリズムを融合させることで日本人としての音楽、日本のリスナーの皆さんにも親しんでもらえるサウンドを作っているつもりではいて。
テレビの前の人たちと3年前の自分に聴かせたい1枚
──その融合ってうまくいってますよね。というのも、アルバム収録曲の中には4つ打ちの曲が多いんですけど、基本的にどれも4つ打ちに聞こえないんですよ。キック以外の太鼓やベースやギターのリズムが日本や欧米の16ビートのものとはどこか違うから。それがすごくダンサブルなんだけど、どこが表拍なのかわからなくて面白くて。
ラテンのリズムって同じ16ビートでもスネアの入る位置なんかが根本的に違うから、南米のクラブやライブハウスで夜中じゅう遊んでると、だんだんわけがわかならくなってくるんですよ。おっしゃる通り、どこが表拍なのかわからないから。そのリズムを一晩中聴いてるとトリップできてすごく気持ちよくはあるんだけど、わからないっていうのはやっぱりすごく悔しいじゃないですか(笑)。だから毎日毎日研究がてらライブハウスやクラブに通ってると、向こうのプレイヤーから顔を覚えられて「なんだお前、今日も来たのか」「じゃあ一緒にやるか」って演奏させてもらえるみたいなことが多々あるんですよね。で、そうやって現場のリズムを体で直接食らっていると「なんだこりゃ? なんだこりゃ?」「あっ、そういうことか!」ってわかる瞬間がやって来るというか、自分の血肉になる瞬間があって。それが自然と出てきちゃってるんでしょうね。
──旅先で知ったリズムを意図的に導入するのではなく、おのずとそうなっちゃってる感じなんですか。
そうですね。なんとなく「曲でも作ろうかな」ってギターを握ってカッティングしている段階からそういうリズムになっちゃってますから。ファーストアレンジ以前、作曲の時点でリズムが決まっちゃってるんですよ。で、今回のアルバムはそういうところも聴いてもらいたいですね。テレビの中のナオト・インティライミ像、ちょっと切ないラブソングを歌う調子のいい兄ちゃん的なイメージを持っていただけることももちろんありがたいことなんだけど「まあそういうキャラやイメージを一回取っ払って、ちょっとオレの曲、聴いてみてよ」「きっと楽しいから」と。
──ホント、ギターを始めた中学生の頃と同じノリなんですね(笑)。
ちょっとダマされたと思って聴いてほしい(笑)。あと3年前、デビューしたての頃のオレにも聴いてもらいたいかな。「こんなアルバムできちゃったよ。お前にはできねえだろ?」って。
──「でもまあがんばりな。3年後にはこんなの作れるようになるはずだから」と(笑)。
うん。自慢しながら応援してやりたいですね(笑)。
- ニューアルバム「Nice catch the moment!」 / 2013年5月15日発売 / ユニバーサル・シグマ
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3800円 / UMCK-9619
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3800円 / UMCK-9619
- 通常盤 [CD] 3059円 / UMCK-1445
CD収録曲
- introduction~Do whatcha wanna~
- Brand new day
- 恋する季節
- I'm chi-zu-ers
- 365
- 君生まれし日
- ナイテタッテ
- Ballooooon!!
- しあわせになるために
- 未来スケッチ
- 声をきかせて
- I FEEL IT GOOD
- Catch the moment
初回限定盤DVD収録内容
- ナイテタッテ(MUSIC VIDEO)
- しあわせになるために(MUSIC VIDEO)
- 恋する季節(MUSIC VIDEO)
- Yeah!(Live at 横浜アリーナon 2012.12.07 「ナオト・インティライミ アリーナツアー2012」)
- Hello(Live at 横浜アリーナon 2012.12.07 「ナオト・インティライミ アリーナツアー2012」)
- 君に逢いたかった(Live at 横浜アリーナon 2012.12.07 「ナオト・インティライミ アリーナツアー2012」)
ナオト・インティライミ
三重県生まれ、千葉県育ち。世界29カ国を515日間かけて1人で渡り歩き、各地でライブを行うなど、世界の音楽と文化を体感。帰国後となる2009年には自らのソロ活動のほか、サポートメンバーとしてMr.Childrenのツアーにも帯同する。そして2010年4月、ナオト・インティライミ名義でのメジャーデビューシングル「カーニバる?」をリリース。同7月には1stアルバム「Shall we travel??」を発表し、メジャーデビューからわずか8ヶ月となる12月には東京・日本武道館公演も開催する。その後も2011年リリースの2ndアルバム「ADVENTURE」がオリコン週間アルバムランキング3位、2012年の3rdアルバム「風歌キャラバン」が同1位を獲得、同年末には紅白歌合戦に初出場するなど快進撃を続け、2013年5月、4thアルバム「Nice catch the moment!」をリリースした。