音楽ナタリー Power Push - nano.RIPE

長い旅路を経て真のツアーバンドへ

nano.RIPEがニューシングル「こだまことだま」をリリースした。

シングルの表題曲はアニメ「のんのんびより りぴーと」のオープニングテーマとしてオンエアされているナンバー。アニメの第1シーズンのテーマ曲も担当しているnano.RIPEは、前作のテーマ曲「なないろびより」の続編として今回の新曲を書き下ろした。音楽ナタリーでは47都道府県ツアー「47.186」の真っ最中であるメンバーにインタビューを実施。各地でのライブの手応えやツアー中に行われたシングル制作の背景、また9月にメジャーデビュー5周年を迎える彼女たちの次なる目標などを語ってもらった。

取材・文 / 倉嶌孝彦

すべて違うセットリストで

──前回のインタビュー(参照:nano.RIPE「七色眼鏡のヒミツ」インタビュー)はちょうど47都道府県ツアーの直前でした。現在はツアー真っ最中ですが、ライブの手応えはどうですか?

きみコ(G, Vo)

きみコ(G, Vo) ツアー前にリリースした「七色眼鏡のヒミツ」は挑戦的な曲がたくさん入ったアルバムだったんですけど、ライブではお客さんにもすぐに受け入れてもらえて。

青山友樹(Dr) 皆さんの反応のおかげで、ぼくらも曲の理解が深まってますね。「この曲はこういうノリでやればいいのか」っていうのがよくわかるんです。

──バンドの公式Twitterアカウントでは、毎回ライブ後にその日のセットリストが公開されています。同じツアーでも各公演でセットリストを毎回変えてますよね?

きみコ そうです。すべての公演で違うセットリストです。

青山 演奏する側も「うわ、今日これやるんだ!」みたいな驚きがありますね(笑)。

──曲目は誰が決めているんですか?

きみコ 基本的にあたしが決めています。Twitter上でリクエストを募ったりもしていますけど、例えば金沢のライブだったら金沢を舞台にしたアニメ「花咲くいろは」のオープニングテーマ「ハナノイロ」を演奏したり、七夕の日は星とか月とかが出てくる曲を多めに入れたり。

青山 日によっては7曲連続で激しいのが続いたりして。ライブ前にセットリスト見て「今日やばい死ぬかも」と思うことも……(笑)。

アベノブユキ(B) ツアーをやってきて、ライブの最初の音が合うようになってきてるよね。演奏中とかの間の取り方もお互いうまくなってるし。逆に音のタイミングが合わなかったりすると「あ、今日ちょっと調子悪いかも」とかもすぐわかるんだよね。

ササキジュン(G) この間、5日連続でライブがあって。今までこんなに毎日続けてやったことなかったから、大変だったけど「生きてるなあ」って実感できて少し気持ちよかったんですよね。

──毎回セットリストは違いますが、アルバム「七色眼鏡のヒミツ」の収録曲「こたえあわせ」と「有色透明」はライブの終盤に必ず2曲続けて演奏していますよね。

きみコ 演奏する曲は違うけど、その2曲を軸にすることで今回の「47.186」っていうツアーにまとまりができてると思うんですよね。やっぱりアルバムの中でも「こたえあわせ」と「有色透明」はバンドにとって重要な曲になったという感じがしてます。

“奇跡の1年”を彩る表題曲

──今回のシングル表題曲「こだまことだま」は、まさにツアー中に制作されたものということですよね。

きみコ 曲自体はアニメ「のんのんびより りぴーと」のタイアップのお話をいただいた頃だから……、今年の頭くらいに作ったものですね。レコーディングにはツアー中に少し時間ができたときに取り組んだんですけど、ライブのテンションをそのままCDに入れられたというか。バンドに一体感がある中で録れたので、レコーディングはスムーズでしたね。

青山 どちらかというと、カップリングのほうが苦戦したね。

アベノブユキ(B)

アベ カップリングの「日付変更線」は、リズム隊だけ「七色眼鏡のヒミツ」を作ったときに録ってるんです。(ササキ)ジュンくんから要望があったので、僕はこのときアップライトベースを弾いたんですけど、これがけっこう大変で苦労したのを覚えています。

──「日付変更線」にはピアノの音も入っていますが、これはきみコさんが?

きみコ あたしが弾いています。「七色眼鏡のヒミツ」っていうアルバムが挑戦的な作品だったこともあって、「日付変更線」は特にアルバムの影響を受けている曲かもしれないですね。鍵盤もそうですし、弦の音を入れていたり。そういう4人の担当以外の音を入れることに抵抗がなかったのは、「七色眼鏡のヒミツ」をリリースしたあとだったからっていうのが大きいですね。

──表題曲「こだまことだま」はアニメ「のんのんびより りぴーと」のオープニングテーマですが、nano.RIPEはアニメの前作「のんのんびより」でもテーマ曲も担当しています。今回の曲には続編のテーマ曲ならではの仕掛けが用意されていますよね。

きみコ アニメが続編であるように、「こだまことだま」も「なないろびより」の続編にしようと思って。歌詞にも共通のキーワードを入れてますし、そういうところを探してもらっても面白いかもしれないですね。

──「こだまことだま」の歌詞には別れのニュアンスが含まれているのが印象的でした。

きみコ 「のんのんびより りぴーと」というアニメでは、「のんのんびより」で主人公たちが過ごした同じ1年間がもう一度描かれているんです。この作品のことをアニメの監督は「奇跡の1年」って呼んでいて。振り返ってみれば、みんなの人生にも「あの頃に戻りたいな」って思えるような1年ってあると思うんです。今回の曲では、そういう貴重な時間が終わってしまうことをわかった上で1年間を過ごせたら、という思いを詞に込めていて。だから「終わってしまう」といった言葉も歌詞に書いているんです。

ニューシングル「こだまことだま」2015年7月22日発売 / Lantis
CD+DVD / 2268円 / LACM-14372 / Amazon.co.jp
アニメ盤(CDのみ) / 1296円 / LACM-14373 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. こだまことだま
  2. みずたまり
  3. 日付変更線 ※CD+DVD盤のみ
CD+DVD盤 DVD収録内容
  • こだまことだま(Music Video)
  • MAKING OF “こだまことだま”機材編 / レコーディング編 / ミュージックビデオ撮影編
  • ライブ映像「深窓音楽演奏会 其の壱」2014.9.23 Live at Shinjuku BLAZE ※nano.RIPEの出演部分のみ
    1. 透明な世界
    2. なないろびより
    3. 月花
    4. ハナノイロ
    5. 面影ワープ
    6. リアルワールド
    7. 影踏み
nano.RIPE(ナノライプ)

nano.RIPEきみコ(G, Vo)、ササキジュン(G)、アベノブユキ(B)、青山友樹(Dr)による4人組バンド。2004年にきみコとササキジュンを中心に結成された。自主制作で2枚のシングルとアルバムをそれぞれ発表。2008年にはアルバム「空飛ぶクツ」をインディーズからリリースした。2010年9月にアニメ「花咲くいろは」のイメージソングとなった「パトリシア」でメジャーデビュー。翌2011年10月には、「パトリシア」を含む5枚のシングル曲を収録したメジャー1stアルバム「星の夜の脈の音の」を発表した。2015年4月に4thアルバム「七色眼鏡のヒミツ」をリリース。さらにこのアルバムを携えた47都道府県ツアー「5th Anniversary Program Vol.2 nano.RIPE TOUR 2015『47.186』」をスタートさせた。7月にはアニメ「のんのんびより りぴーと」のオープニングテーマ「こだまことだま」を表題曲に収録した14枚目のシングルを発表。また9月にはバンド初のシングル集「シアワセのクツ」をリリースする。