ナタリー PowerPush - nano.RIPE

きみコが明かす作詞への思い

アニメ「バクマン。」の主人公に感情移入

──ここからは、ニューシングル「もしもの話」について伺いたいと思います。人気アニメ「バクマン。」の主題歌として書き下ろした曲ですよね。

はい。アニメの制作サイドからオファーをいただいて、原作のストーリーなども理解しながら書き始めていきました。

──曲を作る上で意識したことはありましたか?

制作サイドから疾走感のある曲という希望をいただいたので、そこは意識しました。

──歌詞はどんなふうに書き進めましたか?

これは以前からそうなんですが、基本的にタイアップのお話をいただいたときはそのアニメの世界をストレートに歌にしようとはあまり考えなくて。お話の中で共感できる部分だったり、自分と重ね合わせて歌えるところをピックアップして書くってことが多いんです。で、今回の「バクマン。」は、主人公の2人がマンガ家を目指してがんばってるってところに共感を抱きまして……。

──マンガ家とミュージシャンという畑が違うだけで、何かに情熱を注いでいるという部分は一緒ですもんね。

そうなんです。だから今回はただそこだけを置き換えて、自分の思いを素直に書いていった感じです。

──歌詞を読むと葛藤する主人公の様子がよく伝わってきますが、これはきみコさんの等身大?

あたし、根がすごく暗いので(笑)。小さいことをいつまでも考えてしまったり、ずっと同じことで悩んだりしてるんですけど、それってきっと死ぬまで変わらないし、答えも出ないんだろうなって。だから、さっきアルバムのところでも話しましたが、「それはそれで歌ってしまおう」って(笑)。

──でも、そこに共感する人もきっと多いと思います。私も最後の2行「何かを手に入れたくて流した涙やついたウソが いつの日かきみやぼくのことをオトナにするのかな」が、「ああ、わかるなー」って。

ありがとうございます。「○○かな?」とか聴いた人に憶測させるような表現は自分の歌詞に多いなって思うんですけど、これもそうですよね。あまり断定するような歌は歌えないので。

──ただこれって、憶測プラス願望も少し混じってますよね?

あ、そうかもしれない。大体はそうであってほしいって気持ちや、小さな希望のようなものも入ってるかもしれないですね。

歌は自分のためだけに書いている

──きみコさんは普段どのように作詞をするんですか?

基本的には普段考えてることを吐き出すように書く歌が多いんですけど、時々なんとなく自分の頭にあるイメージを物語として描くこともあります。あとは空想から生まれるものだったり、実体験を空想の物語に変えてしまったり、結構いろんな書き方はしてますね。でもひとつ共通するのは、嘘というか、自分が思ってないことは書けないってこと。あたしの目から見て感じたことを素直につづるようにしてるし、「みんなだったらこう思うだろうな……」っていうのも書かないですね。歌は自分のために書いてるので。

──でも、聴いた人が自分に置き換えながら感情を委ねられる余白もちゃんとあるのがすごいなって。

正しいのかはわからないんですけど、あたしは自分が思うことだけを書いて、ライブも自分がやりたいからやってるんです。一度も「人のために」っていうことがないんですね。なのに聴いてくれる人がいて、ライブに来てくれる人がいて、「私も(ぼくも)そう思いました」って言ってもらえたりするのが最初はすごく不思議で……。でも途中からだんだん、そう言ってもらうことを実はあたしが一番望んでるんじゃないかって気が付いたんです。あたしは「あなたもそうなんだ。1人じゃないよ」ってことを伝えたいんじゃなくて、「あ、共感してくれたんだ。じゃああたしは1人じゃない」って安心したいのかなって。

──なるほど。

でも、そのサイクルってすごく素敵なことだなって思うんです。だから歌詞は自分のことだけ歌ってるけど、やっぱり聴いてくれる人がいてこそなので、皆さんが自分に置き換えて考えてもらえるような余白はどの曲にも残しておきたいっていうのも考えてますね。

歌詞を書かなくなったら、いなくなっちゃうかも(笑)

──きみコさんにとって作詞とはどのような行為なのでしょうか?

感情のはけ口じゃないですけど、あたしは多分、書くことによってバランスをとっているのかなって。極端な言い方ですけど、歌詞を書いたり歌を歌ってない人はどうやってそういう部分を保ってるんだろう?って不思議なくらいなんです。

──自分にとっては、それが当たり前だから?

はい。書いてなかったら、今頃、あたしどうしてるんだろう?って。書くことで昇華されたり、事実を受け入れられることがあったり、認めたくないこともそれを歌えるようになったらもう乗り越えられたってことなのかなって思ったり。

──なくてはならない自己表現なんですね。衣食住と同じくらい?

そうですね。いや……それより大事なものかもしれない。

──書かなくなったら、どうなっちゃうんでしょう?

どうでしょうね(笑)。いなくなっちゃうかもしれないです(笑)。

──では最後に、12月から始まるワンマンツアーへの意気込みをお願いします!

nano.RIPEはずっとライブバンドって言ってきてるんですが、本当にCDの印象とは全く違うライブをすると自分たちでは思ってて。もちろんCDも全力で作ってるんですけど、本当のnano.RIPEはライブハウスにしかないというか、今その瞬間の生きたnano.RIPEはライブハウスでしか見せられないと思ってるので、ぜひCDだけでなく、生のぼくらを観に来てもらえたらうれしいです。

nano.RIPE LIVE TOUR2012「アナザーワールド」

  • 2012年12月9日(日)宮城県 仙台PARK SQUARE
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2012年12月15日(土)愛知県 名古屋Electric Lady Land
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2012年12月16日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2012年12月22日(土)石川県 金沢AZ
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2012年12月23日(日・祝)石川県 金沢AZ
    OPEN 16:30 / START 17:00
    ※スペシャル企画
  • 2012年12月26日(水)東京都 赤坂BLITZ
    OPEN 18:30 / START 19:00

一般発売日:11月11日(日)
前売券:3500円(金沢公演のみ2日間通し券(6000円)あり)
当日券:4000円(金沢公演は前売券のみ)
※各会場オールスタンディング(赤坂BLITZは1F席のみの販売となります。)
※各会場ドリンク代 ¥500が入場時に別途必要となります。
※3歳以上はチケットが必要です。

ニューアルバム「プラスとマイナスのしくみ」 / 2012年10月3日発売 / Lantis
ニューアルバム「プラスとマイナスのしくみ」初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / LACA-35237
ニューアルバム「プラスとマイナスのしくみ」通常盤 [CD] 3000円 / LACA-15237
CD収録曲
  1. うつくしい世界
  2. ぼくなりのおとぎ話
  3. 絵空事
  4. アドバルーン
  5. アンサーソング
  6. ナンバーゼロ
  7. よすが
  8. ゆきのせい
  9. ページの中で
  10. リアルワールド
  11. サクゴエ
  12. かえりみち
  13. グッバイ
  14. 架空線
DVD収録内容
  1. ナンバーゼロ (music video)
  2. Making of “ナンバーゼロ”
  3. アドバルーン(nano.RIPE TOUR 2012“ループホールの向こう側” Live at SHINJUKU BLAZE)
  4. 月影とブランコ(nano.RIPE TOUR 2012“ループホールの向こう側” Live at SHINJUKU BLAZE)
  5. 15秒(nano.RIPE TOUR 2012 “ループホールの向こう側” Live at SHINJUKU BLAZE)
  6. バーチャルボーイ (nano.RIPE TOUR 2012 “ループホールの向こう側”Live at SHINJUKU BLAZE)
  7. 面影ワープ(nano.RIPE TOUR 2012“ループホールの向こう側” Live at SHINJUKU BLAZE)
nano.RIPE 「もしもの話」short ver.
nano.RIPE(なのらいぷ)

nano.RIPE

きみコ(Vo, G)、ササキジュン(G)、アベノブユキ(B)によるスリーピースバンド。2004年にきみコとササキジュンを中心に結成された。自主制作で2枚のシングルとアルバムをそれぞれ発表。2008年にはアルバム「空飛ぶクツ」をインディーズからリリースした。2010年7月にアニメ「花咲くいろは」のイメージソングとなった「パトリシア」を表題曲として収録したシングルでメジャーデビュー。翌2011年には、「パトリシア」を含む5枚のシングル曲を収録したメジャー1stアルバム「星の夜の脈の音の」を発売。2012年10月に2ndアルバム「プラスとマイナスのしくみ」、アニメ「バクマン。」のために書き下ろした「もしもの話」を含むニューシングルを発表。12月からは5都市6公演を回るツアーをスタートさせる。