ぶっ飛んだクラシックコンサートを
──ここからは5月に行われるフルオーケストラ公演についてお話を聞かせてください。そもそもなぜオーケストラ公演をやろうと思い立ったのでしょうか?
やったことがないからですね。今回は自分1人で思い付いたことではないですけど、とにかくいつもどんな新しいことができるかを考えていて、5周年の最後に何か新しいことをやるとしたらこれしかないんじゃないかと思ったんです。正直今まででいろいろやってきてるし、ミュージックビデオではイージス艦に乗ったし、軍艦島にも行っちゃってますからね(笑)。でも、オーケストラ公演は内心いつかやりたいと思ってたんですよ。もともと自分はクラシック音楽が大好きですし、いつも曲を書いてくださっているWEST GROUNDもクラシック出身の方なので、いずれはこういう方向にいくんじゃないかと予想していたところもあって。しかも今回は5周年なので、自分としてはこれはご褒美だと思ってます。何十人ものオーケストラに囲まれて、最高の環境で自分の曲を届けるなんて、なかなかできないことですから。
──コンサートには「Symphony of Stars」というタイトルが付けられていますが、こちらにはどんな思いが込められてるのですか?
自分は無限の宇宙とか星が好きで、5年間の活動の中で歌詞にそういう言葉をけっこう入れているんです。「The Crossing」(2017年5月にリリースされた最新オリジナルアルバム)に入ってる「Pentagram」など星をテーマにした曲も多いので、それが全部集結して星座になるようなコンサートになればと思って付けました。「Symphony」はオーケストラを表すシンフォニーでもあるし、お客さんを含めてそれが1個のシンフォニーになれば、というイメージですね。
──ナノさんの楽曲はロックなイメージが強いので、きっとオーケストラとの共演を意外に思われた人も多いと思います。
その意外さが楽しめるんじゃないかなと思っていて。予想が付いてしまうことをやってもつまらないですから。オーケストラアレンジをしてもらう前は自分でも「これはちょっと無理じゃない?」と思うものも正直あったんですけど、デモを聴くと鳥肌が立って「ヤバいなこれ」と。音楽って無限なんだと思わされましたね。
──今回はオーケストラと一緒にバンドも演奏に参加されるんですよね?
そうです。言っても普通のクラシックコンサートではないので、そこはあまりガチガチにお上品な要素だけにはならないと思うし、ぶっ飛んだ部分も大事にしたいと思ってます。なので“ぶっ飛んだクラシックコンサート”を期待していただければと(笑)。
ナノのルーツとオーケストラ
──ちなみにナノさんは今までオーケストラのコンサートをご覧になったことは?
アメリカに住んでいたときはホリデーシーズンによく観に行ってましたね。あとは自分でも小さい頃に合唱部に入っていて、教会とかいろんなところで歌ってたので、オーケストラとの関わりはあったんです。それと、本当に数年だけなんですけどバイオリンを習っていて、演奏会に出たこともあったので、ひさびさにクラシックの雰囲気を味わえるのが楽しみですね。
──オーケストラサウンドのだいご味はどんなところにあると思いますか?
オーケストラや合唱というのは調和が大事ですけど……自分がなぜ子供の頃入っていた合唱部を途中で辞めてしまったのかと言うと、調和を守らなくてはならないことが自分にとっては難しいものだったからなんです。チームスポーツも苦手で、自分のやりたいことにひたすら突き進んでしまうタイプなんですね。だから今回は、オーケストラの調和の素晴らしさと、自分がいつもソロでやっているやり方をうまく合体させるところがチャレンジですし、自分の調和要素を磨き上げる機会だと思います。
──ファン的には、今回のオーケストラアレンジによって楽曲がどのように変わるのかも気になるところだと思います。
たぶん「この曲はやるだろうな」と予想が付く曲もあると思うんですよ。でも、今回は意外なアレンジがあったり、「これをオーケストラでバラードにしちゃうの?」とか、逆に「これはバラードにしないんだ」というのもあって。自分はサプライズが好きなので、そこは期待してもらっていいと思います。
──最新アルバムの「The Crossing」も「Because of You」などストリングスの入ってる曲が多いですものね。
なんだかんだで今までもストリングスが入った曲がわりとあるんですよ。「いつかオーケストラコンサートをやるときは歌いたい」と思っていた曲もあったので、曲を絞り込むのも難しかったし、正直もっと入れたい曲があったんですけど、今回は第1回にふさわしいものとしてみんなで選別してベストのセットリストを組み立てました。もし「この曲はやらないの?」と思う曲があったとしても、今後どこかでチャンスがあるかもと思ってるし。
──ナノさんの楽曲を多く手がけているWEST GROUNDさんはクラシックの素養があって、音の作り方も楽器を重層的に組み立てられるタイプなので、そういう意味ではオーケストラアレンジにもマッチしそうですよね。
確かにWEST GROUNDさんの音の重ね方はクラシックに近いと思うし、曲の構成もAメロ、Bメロ、Cメロの流れがクラシック音楽に近いものがあって、オーケストラ向けだったりするんですよね。
音楽そのものに改めて惚れさせたい
──歌唱面でもいつもと違うアプローチが要求されるのでは?
歌に関しては今までで一番気を付けてますね。後ろの音がオーケストラになると、ごまかしの効かない素の自分の声が出てしまう。これまで勢いで歌っていたところも、ひと言ひと言を丁寧に歌うことが重要だなと感じていて。もちろんうまく歌わなくてはいけないのは前提なんですけど、技術面でも今までになかった要素を磨いていくのがリハーサルでの一番の課題ですね。
──例えば、ビートの激しい曲がバラードアレンジになったりすると、歌うときの感情の入れ方も普段と変わってくると思うのですが。
そうですね。今回のようにいつもと違う雰囲気のアレンジにすると、自分が書いた歌詞なのに意味が違って聞こえてきたりするんです。そうすると表現の仕方も声の出し方も変わってきますから。でも、オーケストラはより感情的に聴こえる音でもあるし、いつもよりも感情を伝えられる機会になるんじゃないかなと思っていて。普段のライブでは、やる気とかパワーみたいなものを伝えてきましたけど、今回はそういった要素はもちろん、今までのライブになかった“感情”や“感動”を皆さんに届けられたらと思います。切なさとか優しさとか愛とか、人間的な要素をもっと入れていきたいですね。
──そこは5年間の成長であったり、ファンとの距離感がより近くなった今だからこそ表現できる部分かもしれないですね。
そうですね。でも来てくれる方には、自分にではなく、音楽そのものに改めて惚れさせたいんですよ。音楽を聴いて泣いたり感動したりすることはいっぱいあると思うんですけど、改めて「やっぱり音楽好きだなあ」と思ってもらえるようなコンサートにしたいです。
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涙腺ヤバそうな理想の会場
- ナノ 5th Anniversary Concert
~Symphony of Stars~ -
2018年5月6日(日)東京都 東京芸術劇場コンサートホール
<出演者>ナノ / 東京ニューシティ管弦楽団
- ナノ「The Crossing」
- 2017年5月31日発売 / FlyingDog
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NA ver. [CD+DVD]
3240円 / VTZL-125 -
NO ver. [CD2枚組]
3024円 / VTZL-126 -
通常盤 [CD]
2592円 / VTCL-60449
- CD収録曲
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- MY LEBERATION [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- Eye of the Beholder [作詞:ナノ / 作・編曲:中西航介]
- Nameless Nemesis [作詞:ナノ / 作・編曲:中西航介]
- Hybrid Heart [作詞:ナノ / 作・編曲:buzzG]
- Bull's Eye [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- PARAISO [作詞:ナノ / 作曲:ゆよゆっぺ / 編曲:ゆよゆっぺ、WEST GROUND]
- Beautiful Disaster [作詞:ナノ / 作・編曲:Powerless]
- DREAMCATHCER [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- Because of You [作詞:ナノ / 作・編曲:重永亮介]
- Milestone [作詞・作曲:ナノ / 編曲:龍田洪]
- Pentagram [作詞:ナノ / 作・編曲:ゆよゆっぺ]
- The Crossing [作詞:ナノ / 作・編曲:SHO from MY FIRST STORY]
- 「NA ver.」DVD収録内容
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- MY LEBERATION
- Bull's Eye
- DREAMCATHCER
- The Crossing
- 「NO ver.」CD DISC 2収録内容
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- Mirror, Mirror [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- Last Refrain [作詞:ナノ / 作曲:WEST GROUND / 編曲:亀岡夏海]
- HolloWorld [作詞:ナノ / 作・編曲:SHO from MY FIRST STORY]
- bittersweet [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- DARE DEVIL [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- HAVEN [作詞:ナノ / 作・編曲:WEST GROUND]
- GALLOWS BELL 5th Anniversary ver. [作詞・作曲:buzzG / 編曲:伊賀拓郎]
- ナノ
- アメリカ・ニューヨーク州出身、7月12日生まれ。卓越した歌唱力と、日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに、洋楽やVOCALOIDのカバー楽曲の投稿を始め、国内外問わず多くの音楽、アニメユーザーの支持を集める。2012年3月にアルバム「nanoir」でデビューを果たし、1年後の2013年3月には東京・新木場STUDIO COUSTで初のワンマンライブ「Remember your color.」を大成功のうちに収めた。同年5月にはドイツ・デュッセルドルフで行われたジャパニーズカルチャーコンベンション「DoKomi」に招待され、初の海外公演を体験。以降は海外でのライブも積極的に行っている。デビュー5周年を迎えた2017年は2枚のシングルと1枚のオリジナルアルバムのリリース、全国ツアー、初のサイン会など精力的に活動した。2018年5月にはアニバーサリーイヤーの締めくくりとなるオーケストラとのコラボレーションコンサート「ナノ 5th Anniversary Concert ~Symphony of Stars~」を東京・東京芸術劇場コンサートホールで開催。また4月に東京・シアター1010で上演される舞台「大正浪漫探偵譚-六つのマリア像-」では主題歌を担当する。