音楽ナタリー PowerPush - ナノ

トリプルタイアップ作を通じて明かす 制作へのこだわりと新たな可能性

曲がプレイしてる人たちの邪魔になっちゃいけない

──「M3~ソノ黒キ鋼~ver.」のみ収録のカップリング曲「PARALYZE:D」は、PlayStation Vitaのゲームソフト「RE:VICE[D]」の主題歌。サビでのキャッチーなメロディが印象的で、聴いていてとても高揚感が湧いてくるロックチューンですね。

ナノ「INFINITY≠ZERO」PVのワンシーン。

「PARALYZE:D」はゲームの世界に寄せたというか……やっぱりゲームの楽曲って、アニメや映画とは違った独特さがあるんです。曲がプレイしてる人たちの邪魔になっちゃいけないというのも大きくて。だってゲームと関係ない、まったくぶっ飛んだことを主張されても、ゲームをしてる人は困ると思うし。だから、ゲームをしている人のお手伝いをするのがテーマ曲の役目だと思うんですよ。

──プレイしているときに流れて、プレイヤーの高揚感を煽るような。

まさにそうですね。ゲームをしてる人が聴いたときに、より興奮するような曲を目指してます。そういう意味では、アニメのテーマ曲を作るときとは、ちょっと取り組み方が違いますね。今回の作品で言ったらゲームとアニメと映画、それぞれちょっとずつ制作する際の姿勢が異なっていて。だから作ってる側もマンネリにならないんですよ。

──それにしても、なかなかないことですよね。1つの作品に映画、アニメ、ゲームのタイアップが詰まってるって。

変な話、ここまでテーマの異なるものを1つの作品にまとめたらとっ散らかったものになるんじゃないかっていう不安もあったんですけど、最終的には1本芯の通ったシングルになったと思うし、自分的にもすごく納得できる仕上がりになったと思います。それにタイアップが付いた曲だろうが、タイアップのことを知らなくても存分に楽しめますしね。

──とは言っても、「INFINITY≠ZERO」は「幕末高校生」の主題歌として映画館で大音量で流れるわけですよ。

はい……ヤバいですね!(笑) もう……なんだろう……なんか夢みたいな話ですよね、ホントに。自分でもずっと信じられなかったんですけど、やっと最近実感が湧いてきたというか。もちろん自分も映画館に観に行く予定ですけど……心がザワザワしながら見ると思いますよ。

──さっきナノさんも言ってましたが、この映画を観に来た人の中にはナノさんのことを知らない人も多いかもしれないし、ここで初めてナノさんの楽曲に触れるわけで。これまでアプローチできなかったフィールドに自身の音楽を届ける、絶好のチャンスになるわけですよね。

そうですね。恐らく今まで自分が踏み入ったことないフィールドだろうし、ほとんどの人が「ナノって誰?」みたいな感じだと思うので。そこはすごく楽しみな部分もあります。

1曲たりとも気を抜かず、聴きごたえのある作品を

ナノのオリジナルキャラクター「ちびナノ」

──そして「ナノ ver.」のみ収録のカップリング曲「Dusty Mirror」は、本作の中で唯一タイアップが付いていないミディアムテンポのロックチューンです。これまでのナノさんの楽曲にはなかったアメリカンロックテイストの、とても解放感のある楽曲に仕上がりましたね。

こういうタイプの曲は今までやったことがなかったんですけど、すごくライブに向いてる曲だと思います。「SABLE」みたいな激しさはないんだけど、不思議とパワーを感じさせる楽曲で。この解放感は絶対にライブで聴いたときに気持ちいいんだろうなって、ずっと思ってました。

──実際に6月の野音ライブでも初披露されましたが、本当に野外にピッタリでしたね(参照:ナノ×マイファス、シングル共演の次は野音ツーマンライブ)。

そうですね。逆にライブに来れなかった人たちにも早く生で聴かせたくて。

──改めて歌詞を読んでみると、空を見上げて星に願いを込めるという歌詞の世界観が野音ライブのシチュエーションにピッタリだったんだなと思いました。

実はこの曲は9月に行うツアー「World of stars.」のテーマ曲なんです。最初は宇宙をイメージして書いてたんですけど、聴いたときにブワーっていろいろ想像が広がるような感じになってほしいなと思って。歌詞にも「Stars」や「Universe」といったキーワードがたくさん散りばめられているし、「World of stars.」っていうテーマにもすごく合っているなと思ったんです。

──じゃあこの曲は今度のツアーにおいて重要な楽曲と言えますね。

そうですね。実は今度のツアーはこれまでのライブからガラッと変わった……今までにないようなステージにしたいと思っていて。音楽面においても「Dusty Mirror」みたいな、今までやったことがなかったタイプの曲をツアーのテーマ曲にするっていうのも大きいですし。「Dusty Mirror」はシングルにおけるカップリング曲なんだけど、今後のナノの活動においてすごく大事な役目を果たすことになると思ってます。

──本作で唯一の非タイアップ曲にそういう重要な役目が与えられているのも興味深いですし、こういった楽曲を通じてどんどん新しいナノ像が作り上げられていくんでしょうね。

そうですね。歌う側としてはどれもシングルの表題曲にしたいって気持ちで制作に臨んでますし。リスナーの中には「表題曲よりもカップリング曲のほうが好き」っていう人もいると思いますしね。そういう意味でも、今後も1曲たりとも気を抜かず、聴きごたえのある作品を作っていきたいと思ってます。

──特に今回は映画やアニメを通じてこのシングルを手に取った人が、「Dusty Mirror」を聴いたときに「ほかにもこんなにいい曲があるじゃん」って思うかもしれませんし。

そういう驚きがあると、買ってくれた人はやっぱりうれしいと思うんですよ。もしかしたら、そこからアルバムも買って聴いてみたいって思うきっかけにもなるかもしれないし。特にナノの場合はシングルのカップリング曲でいろんな実験をしていて、前作「Born to be」だったら「NEW WORLD」みたいなハウスミュージック調の曲、「SAVIOR OF SONG」だったら「Our Story」みたいにピアノとバイオリンだけをバックに歌うバラードっていう、シングルの表題曲からはイメージできないナノを体感することができる。そういう挑戦は今後も続けていきたいですね。

INFINITY≠ZERO / ナノ Music Clip

ニューシングル「INFINITY≠ZERO / SABLE」/ 2014年7月23日発売 / FlyingDog
ナノver. [CD] 1512円 / VTCL-35189
M3~ソノ黑キ鋼~ver. [CD] 1512円 / VTCL-35188
ナノver. 収録曲
  1. INFINITY≠ZERO
  2. SABLE
  3. Dusty Mirror
  4. INFINITY≠ZERO Instrumental ver.
  5. SABLE Instrumental ver.
  6. Dusty Mirror Instrumental ver.
M3~ソノ黒キ鋼~ver. 収録曲
  1. SABLE
  2. INFINITY≠ZERO
  3. PARALYZE:D
  4. SABLE Instrumental ver.
  5. INFINITY≠ZERO Instrumental ver.
  6. PARALYZE:D Instrumental ver.
ナノ「World of stars.」
  • 2014年9月18日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2014年9月19日(金)大阪府 Zepp Namba
  • 2014年9月26日(金)東京都 Zepp Tokyo
ナノ

アメリカ・ニューヨーク州出身、7月12日生まれ。卓越した歌唱力と、日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに、洋楽やVOCALOIDのカバー楽曲の投稿を始め、現在までに国内外問わず多くの音楽、アニメユーザーの支持を集める。 2012年3月にデビューアルバム「nanoir」(ナノワール)をリリース。オリコンデイリーランキングでは発売日に10位を記録し、新人では異例のチャートアクションを起こす。2013年2月には2ndアルバム「N」を発売し、オリコン週間ランキング8位にランクイン。同年5月18、19日には、ドイツ・デュッセルドルフで行われたジャパニーズカルチャーコンベンション「DoKomi」に招待され、ライブ会場キャパ満員の1500人を集客した。2014年7月に映画「幕末高校生」の主題歌「INFINITY≠ZERO」、テレビアニメ「M3~ソノ黒キ鋼」の新エンディングテーマ「SABLE」、PlayStation Vitaのゲームソフト「RE:VICE[D]」の主題歌「PARALYZE:D」を含む両A面シングル「INFINITY≠ZERO / SABLE」をリリース。さらに9月には自身2度目のライブツアー「World of stars.」を東京、大阪、名古屋の各Zepp会場で行う。