音楽ナタリー Power Push - 南波志帆
3年の修行期間を経て見つけた“ときめき”ワールド
お正月のやりとり
──そうやって距離を縮めて縮めて、ついには一緒に音楽を作る関係に至ったと。
南波 そうですね。自分のレーベルを作って、新しい環境で音楽を作ることになったときに、まずスタッフから「どんな人に曲を書いてほしい?」と言われて真っ先に浮かんだのが、かよぽんだったんです。それをどうしても通したくて、いろんな方にわがままを聞いていただきました。今回は曲作りの過程が印象的で……。
──どういうふうに?
南波 かよぽんはお正月返上で曲を作ってくれたんです。お正月に急にかよぽんから電話がかかってきて、「志帆ちゃんには歌いたくないことを歌ってほしくないから、今2パターン作っているんだけど、志帆ちゃんはどっちの気分?」って。ほかにも「嫌いな言葉はある?」とか細かいところまで気にしてくれて、すごく歌い手に寄り添ってくれる感じと言いますか。そのあとも、かよぽんがメールでインタビューをしてくれて(笑)。
吉澤 ふふふ(笑)。
南波 そんなやりとりの中で、今の私のリアリティを、より詩的に表現してくれて。めちゃめちゃかよぽんの愛を感じて、泣いちゃいましたね。思い入れの強い1曲になりました。
──吉澤さんは「ひさしぶりに、誰かを思いやる気持ちだけで曲が書けました」とコメントしてましたね(参照:南波志帆アルバムにトーレ・ヨハンソン、持田香織ほか豪華作家陣)。
吉澤 私は去年メジャーデビューしてから、何枚もCDを出させてもらったり、ワンマンツアーをやらせてもらったりして……うれしい反面、その分曲もたくさん書かなくちゃいけなくて。私は基本的に、曲を書くのは苦しい気持ちが多くを占めてて、しんどいんです。毎回自分の底の浅さを思い知る作業でもあるので。そうやってどんどん自分の曲を書くのがつらくなっているときに、志帆ちゃんから話をいただいたんです。
──折よく同じ4月にリリースされる私立恵比寿中学のニューアルバムにも吉澤さんが書き下ろした曲が収録されますが(参照:エビ中3rdアルバム「穴空」にABEDON、フジ、吉澤嘉代子ら豪華作家陣)、こちらはまた趣の異なる曲になっていますよね。
吉澤 エビ中さんはグループなので1人の人物像を浮き彫りにするような感じじゃないから、自分の作風の中でもひょうきんなほうに寄せて書きました。でも志帆ちゃんは1人で歌う女の子だし……私も歌う人なので、人の言葉が介入してくるときに、自分に合わない部分があると落ち着かないだろうなと想像が付くから、志帆ちゃんにはできるだけ嫌だと思う言葉を歌ってほしくなかった。歌詞の内容はもちろん、自分では使わない語尾だとか、そういうのも全部排除した曲が作りたくて。だからまずは「普段はどんな感じなんだろう」と思って、志帆ちゃんのラジオや昔出演したテレビ番組をたくさんチェックして。
南波 恥ずかしい(笑)。
吉澤 それで「ずっと器用な人だと思ってたけど、実は不器用な部分があるんじゃないか」って妄想したんです。「こう見えて、実は不器用だったらいいな」って。志帆ちゃんの今までの曲はどれも素敵だったので、ものすごくプレッシャーがあったんです。私の印象だと、キラキラしている少女像。でも実は志帆ちゃんも、曲のイメージと自分自身のギャップに右往左往しているんじゃないか……とか。
「おとぎ話のように」で過去の自分にも改めて感謝できた
──確かに「おとぎ話のように」は今までの南波さんの楽曲にはなかった、等身大な生々しさがありますよね。
吉澤 フィクションではあるんですけど、この芸能界で生き抜く南波志帆、みたいな(笑)。なんと言うか、世知辛い曲にしたかったんです。芸能界はやっぱり大人の世界なので、中学生でデビューしたら、どうしても周りの友達よりも早く大人にならざるを得なかった部分もあるのかなあとか。それでもそこに立つ、と思える気持ちはどこから来るんだろうとか……完全に妄想ですけど、お正月から志帆ちゃんにハマりすぎてズブズブになっちゃって(笑)。
──自分の中に一度、想像上の南波志帆を取り込んだんですね。
吉澤 ずっと志帆ちゃんのことばかり考えてて、お母さんにも「志帆ちゃんはね、こういう経験をしてきてね」って話したり。勝手に志帆ちゃんの心の中を旅しているような時間で、それは私にとってすごく幸せな時間だったんですよね。勝手ながら「ひさしぶりに誰かを思いやる気持ちだけで曲を書いてる」という感覚があって。私も南波志帆という人に夢を見ている1人だという自覚はあるんですけど。
南波 いやあ、ありがたいですね。
──アーティスト南波志帆の新しい一歩を象徴する曲になったと思いますし、これを大人が物語として書いたのではなく、年齢の近い友達が書いたというのがすごくいいなと思います。
南波 うんうん、本当に。書いてくれたのはかよぽんだけど、自分の言葉として歌えるし、歌うたびにこみ上げてくるものがあります。私は中学3年生でデビューして、そのときどきで壁にぶつかってはもがいて、大変なこともたくさんありましたけど、そのときどきの自分がなんとかバトンをつないできたから今の自分があるんだなって。かよぽんが書いてくれた歌を通して、過去の自分にも改めて感謝できたというか。このタイミングで、こんなに特別で素敵な歌を作っていただけたことが、これからの人生にとっても宝物になるんだろうなって……今話しながら泣きそうになっちゃいましたけど(笑)。
──出会ったタイミングも、アルバムを作ることになったタイミングもちょうどよかったのかもしれませんね。
南波 お互い深いところまで話して、私も今までほかの人に話してないようなことまで話せるほど、かよぽんとは通じ合っているところがあって。勝手に戦友のような気持ちになっています。10年先も20年先も、かよぽんとは一緒に面白いことをしていきたいなあって。なんならおばあちゃんになっても一緒にお茶とかしていたい(笑)。
吉澤 うれしいー。
──今回は心の底まで見せ合うようなコラボレーションでしたけど、次はまったく別方向でも面白そうですよね。吉澤さんが得意とするひょうきんサイドの曲でも。
南波 そうですね。ザ・ひょうきんな人なので。これからも公私共々よろしくお願いします。
吉澤 いいともー。
南波 あははははは(笑)。
南波志帆 ライブ情報
sparkjoy hour ~pops joy~
- 2016年4月25日(月)東京都 TSUTAYA O-WEST
- <出演者> 南波志帆 / 堂島孝平 / ONIGAWARA
sparkjoy hour ~city joy~
- 2016年5月24日(火)東京都 TSUTAYA O-WEST
- <出演者> 南波志帆 / LUCKY TAPES / Sugar's Campaign
南波志帆「THE NANBA SHOW 『meets sparkjoy』 tour 2016☆」
- 2016年7月15日(金)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- 2016年7月16日(土)福岡県 ROOMS
- 2016年7月22日(金)東京都 TSUTAYA O-WEST
南波志帆「meets sparkjoy」発売記念インストアライブ&サインお渡し会
- 2016年4月9日(土)東京都 タワーレコード渋谷店1Fイベントスペース
- START 13:00
- 2016年4月10日(日)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋街店
- START 15:00
- 2016年4月10日(日)兵庫県 タワーレコード神戸店
- START 18:30
- 2016年4月15日(金)神奈川県 タワーレコード横浜ビブレ店
- START 20:00
- 2016年4月16日(土)東京都 タワーレコード錦糸町店
- START 13:00
- 2016年4月16日(土)東京都 タワーレコード新宿店
- START 21:00
※サイン会あり - 2016年4月17日(日)東京都 TOWERmini汐留店
- START 16:00
- 2016年4月30日(土)福岡県 タワーレコード福岡パルコ店
- START 13:00
- 南波志帆 ニューアルバム「meets sparkjoy」 / 2016年4月6日発売 / 3024円 / sparkjoy records / SPJR-001
- 南波志帆 ニューアルバム「meets sparkjoy」
- TOWER RECORDS ONLINE
- Amazon.co.jp
収録曲
- Good Morning Sunshine
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- 夢じゃない。
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- necco
[作詞:持田香織 / 作曲:Tore Johansson、Martin Gjerstad、Susanne Johansson / 編曲:Tore Johansson]
- コバルトブルー
[作詞・作曲:ブルー・ペパーズ / 編曲:the sparkjoy band]
- Coffee Break
[作詞:THE CHARM PARK、fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK、URU]
- ミモザ
[作詞:佐川ちとせ / 作曲:sugar me / 編曲:the sparkjoy band]
- おとぎ話のように
[作詞・作曲:吉澤嘉代子 / 編曲:the sparkjoy band]
- トラベル
[作詞:tofubeats / 作曲:Tore Johansson、Martin Gjerstad、Vilma Johansson]
- にじいろの街で
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- Adieu Tristesse
[作詞:fifi leger / 作・編曲:THE CHARM PARK]
- Antique
[作詞・作曲・編曲:市川和則]
南波志帆(ナンバシホ)
1993年6月14日生まれ。福岡県出身。2008年11月、矢野博康プロデュースによる1stミニアルバム「はじめまして、私。」でLD&Kよりデビューを果たす。2010年6月にはメジャー第1弾ミニアルバム「ごめんね、私。」、2011年7月20日には初のフルアルバム「水色ジェネレーション」、2012年12月には2ndフルアルバム「乙女失格。」をリリース。透明感のある歌声と独特の存在感が話題を呼び、幅広い層から支持を集める。2014年2月にはタルトタタンとのユニット・ナンバタタン、同年6月には5人組クリエイターユニット・xxx of WONDERの一員としてそれぞれCD作品を発表。2016年1月には新たな活動拠点として、タワーレコード内に自身が主宰するレーベル「sparkjoy records」を設立した。4月には同レーベル第1弾作品となる自身のオリジナルアルバム「meets sparkjoy」をリリース。7月には大阪、福岡、東京の3都市を回るワンマンツアー「THE NANBA SHOW 『meets sparkjoy』 tour 2016☆」を開催する。
吉澤嘉代子(ヨシザワカヨコ)
1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街で育ち、16歳から作詞作曲を始める。2010年11月にヤマハ主催のコンテスト「"The 4th Music Revolution" JAPAN FINAL」に出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2013年6月にインディーズ1stミニアルバム「魔女図鑑」でCDデビューを果たす。2014年5月には、日本クラウン、ヤマハミュージックアーティスト、ヤマハミュージックパブリッシングの3社が合同で設立した新レーベル「e-stretch RECORDS」の第1弾アーティストとしてミニアルバム「変身少女」でメジャーデビュー。2015年3月に1stフルアルバム「箒星図鑑」、2016年2月には2ndフルアルバム「東京絶景」をリリースした。4月には初のホール公演を含むワンマンツアー「吉澤嘉代子 絶景ツアー “夢をみているのよ”」を行う。