ナタリー PowerPush - 南波志帆
きらめく「水色ジェネレーション」連想クイズで不思議キャラを探る
2008年11月に15歳の若さでデビューを果たした南波志帆が、18歳となったこの夏、ついに1stフルアルバム「水色ジェネレーション」を完成させた。
独特な透明感を持つ歌声で、ファンのみならず多くのポップス職人たちを惹き付ける彼女。初のフルアルバムとなる今作にはプロデューサー矢野博康(ex.Cymbals)をはじめ、宮川弾、堀込泰行(キリンジ)、奥田健介(NONA REEVES)、YUKI、土岐麻子、コトリンゴ、G.RINA、SPANOVA、awamok、おおはた雄一、小出祐介(Base Ball Bear)、山口一郎(サカナクション)といった豪華作家陣が顔を揃えている。
ナタリーではアルバムリリースを記念して、南波志帆単独インタビューを行った。前半はデビューからこれまでの軌跡を振り返るストレートインタビュー、後半はアルバム「水色ジェネレーション」収録曲のタイトルにちなんだ質問に答えてもらい、一風変わった彼女のキャラクターを深く掘り下げてみた。
取材・文/臼杵成晃 撮影/中西求
デビューのきっかけは“眼力”
──南波さんは先日18歳になったばかり(1993年6月14日生まれ)ですけど、アーティストとしてのキャリアはすでに3年あるんですよね。
そう。意外と中堅なんです(笑)。
──そもそものデビューのきっかけは?
昔から歌うことが大好きで、福岡市内で行われた歌のイベントに出たところを今のレコード会社の方にスカウトされまして。中学でも軽音楽部でボーカルをやったりしてました。
──元々目立ちたがりといえば目立ちたがりだったんでしょうか。
シャイな目立ちたがり屋みたいな(笑)。人の前で何かをするのは小さい頃から好きでしたね。ステージに立つまではいつも緊張していて、人も何十人食べてるんだというぐらい食べるんですよ。
──人を食べる!?
あ、リアルには食べてないですよ(笑)。手のひらに「人」と書いて。でもステージの上に立つと、楽しさのほうが勝っちゃうんですよ。緊張以上に楽しさが勝ってしまい「歌うことは楽しい!」という気持ちが出てくるので、ライブはいつも本当に心から楽しんでいます。歌手になりたいという憧れはずっとあったんですけど、声はずっとコンプレックスだったんです。私がイメージしていた「歌手」は、やっぱりパワフルな歌声なので。私の声はパワフルとは正反対だから、憧れはすごくあったんですけど、まさか自分が歌手になれるとは思っていなかったです。
──スカウトされたときはどう思いましたか?
最初はぶっちゃけ「スカウトは東京の話でしょ?」と思っていたから「絶対ニセモノだ!」と(笑)。「お母さん、なんか変な人来た」みたいなことを言ってお母さんを呼んで連れていったら、ちゃんと名刺をいただいて。
──あとでスカウト理由は訊きましたか?
「眼力が強い」みたいなことを。歌と関係ないじゃん!みたいな(笑)。「歌が飛び抜けてうまいわけではないけど、人を惹きつける力を持ってる」と。……あ! 今思い出しましたけど、あのとき「君が17歳になったときを見てみたい」と言われました。
──すでに1年経過しちゃってますけど(笑)。
何も言われてない! あれー?
「ロマンチック先輩」と呼んでるんです
──デビューにあたってのレッスンの先生は、現在にいたるまでプロデューサーを務める矢野博康さんですよね。どういう印象でしたか?
最初はプロデューサーの方というと……すごく怖くて怪しい感じの人という勝手なイメージがあったんですよ。サングラスかけて「君、いいねえ」みたいな感じの人かなと思っていました。
──いわゆる“業界人”みたいな?
そうそう。「南波ちゃん、イイよー!」みたいな感じの人が来たらどうしよう、という不安を14歳なりに感じてたんですけど、実際矢野さんとお会いしたら、癒しオーラ全開で(笑)。リラックスできる雰囲気を作ってくださるし、優しい方なんですけど、でもやっぱり音楽に対してはストイックで、良いテイクが録れないと本当に何回も何回もやるんです。そういうところはすごく尊敬してます。矢野さんに出会わなかったら、たぶん今私はここにいないので、矢野さんは私にとっての“音楽の父”ですね。
──矢野さんをはじめ、南波さんに楽曲を提供される方は皆さんひとクセもふたクセもあって、王道的なメロディに収まらない難度の高いポップスを作られる方が多いですけど、結構大変なのでは?
いろんな人に「歌うの大変でしょう」とか「難しいでしょ」と言われるんですけど、難しいと思うよりも、どっちかというと「こういうこと仕掛けてきたか」みたいな。どう自分なりにこの壁を超えていこうというほうに気持ちが行ってしまうので、難しい曲ほど燃えますね。
──男性作家が描く乙女像についてはどう思いますか。南波さんのたたずまいに触発されるのか、男性作家さんのほうがむしろ乙女濃度の高い楽曲が多い気がするんですけど。
宮川弾さんとかね! 弾さんのこと「ロマンチック先輩」と呼んでいるんです(笑)。弾さんの曲は、恋してるとき特有のトキメキとかキラメキ、詰まりまくっていますよね。なんでなんだろう、弾さん。でも女の子から見ても共感できるんです。
14歳の自分に「あんたなんのために東京に来たのよ!?」と言われた
──今回のアルバムは、そうやってデビューからじっくりと積み上げられてきた南波志帆の世界観を、フルアルバムというかたちで丁寧にパッケージした作品だと感じました。
きっと私のファンになってくださった方の中には、素晴らしいアーティストさんが楽曲を提供している女の子というイメージで気に留めてくださった方が多いと思うんです。だから主人公はあくまで楽曲であって、私は必要なんだろうかと不安になることもありました。求められている主人公像を演じたりしている、そういうことがすごくイヤというか「本当の自分じゃないな」と感じることもあったんですけど、最近は「自分の声があってこそ、この曲は成り立つんだ」と自分の歌に対して自信を持てるようになりました。そういう責任感もあって、今の自分が持っている強さも表現できたアルバムになったと思います。
──このアルバムで成長できた部分を挙げるとしたら?
14歳ぐらいの頃の自分が歌っている映像を観る機会があったんですね。そのとき、画面の中にいる自分がすごく強く見えたんです。この子はすごく自信があるんだなと。きっと何も知らないがゆえの自信だったと思うんですけど、そのときの自分に「あんたなんのために東京に来たのよ!?」と言われた気がしたんです。そのとき持っていた自分のメラメラした部分をまた思い出せたし、失いかけていた自信を取り戻すことができました。未熟な自分を受け入れることで、今やらなければいけないこともわかったし、進むべき道がより明確になりました。
CD収録曲
- 水色ジェネレーション
- ミライクロニクル
- こどなの階段
- たぶん、青春。
- みっつの涙
- まちかどハルジオン
- もんだいとこたえ
- ふたりのけんか
- あいのことかも
- 2センチのテレビ塔
- オーロラに隠れて
南波志帆(なんばしほ)
1993年6月14日生まれ。福岡県出身。2008年11月、矢野博康プロデュースによる1stミニアルバム「はじめまして、私。」でLD&Kよりデビューを果たした。2009年9月には2ndミニアルバム「君に届くかな、私。」2010年6月23日にはメジャー第1弾ミニアルバム「ごめんね、私。」を発表。透明感のある歌声と独特の存在感が話題を呼び、幅広い層から支持を集めている。2011年7月20日に初のフルアルバム「水色ジェネレーション」をリリース。