「イエスマンじゃん!」「よし、いなくなってもらおう」
──ちなみに「イエスマン」というモチーフはどこから?
ナナヲ 「とりあえず誰かに消えてほしいな」みたいなことをぼんやり考えていて(笑)。当時はすごい荒んでたから。で、そのときナナヲは自分の意思に反して「はい」とか「わかりました」とかよく言ってるなーってふと気付いたときに「イエスマンじゃん!」と思って、「よし、いなくなってもらおうか」みたいな(笑)。
朝日 僕は「人類殲滅のテーマ」を作ってるときにナナヲさんがTwitterでヘイトを吐いているのを見て、「俺のことじゃねえよな?」と思ったりしました(笑)。
ナナヲ そんなわけがない(笑)。
──「イエスマン」、消えてもらえそうですか?
ナナヲ ねえ、そうしていきたいんですけど。まあちょっとずつ、徐々にね、じわじわと。
朝日 でも「イエスマン」はどっかのタイミングで、何もしなくても勝手に消えますからね。特にナナヲさんみたいな人だったら、そのうち必ず。
ナナヲ なるほど、勝手に自滅していくのか。なんか、「イエスマンイズデッド」は会社員の人とか、組織に属している人に刺さるみたいなことを言われて。うれしいなって思う反面、通勤中に聴いたりしちゃダメなんじゃないかとも(笑)。
朝日 そう。俺も派遣バイトについての歌詞をめちゃくちゃ書いてます。「粉洗剤の詰め方が違う」ってめっちゃ怒られたとか。
ナナヲ あはは(笑)。嫌になっちゃうこと、すごくいっぱいありますよね。
朝日 さっきナナヲさんの歌い方の話になりましたけど、同じように「イエスマンイズデッド」にもナナヲさんが好きな音楽がごちゃ混ぜになってる部分があるんでしょうね。いろんな作家さんから楽曲提供してもらうアーティストって、作詞をする人はけっこういるけど、作曲までする人は珍しいじゃないですか。作曲からも人柄が見えるから、面白いですよね。
ナナヲ 自分で作詞作曲した曲も増やしていければナナヲの……なんだろうな、本質みたいなものも透けて見えてくるかもしれないから、これからも入れていきたいですね。いい曲が書ければ(笑)。
けど、変わろうとしてる
──最終曲の「ダメレオンハート」はナナヲさんとお付き合いの長いナユタン星人さんの提供曲で、この曲がもっともナナヲアカリのパブリックイメージに近い曲だと僕は感じまして。
ナナヲ うんうん。
──あるいはもっともナナヲアカリ色が強い曲とも言えると思うのですが、その歌詞では「別の色に変わりたい」という意味のことを歌っている。それが「DAMELEON」という物語の着地の仕方としても美しいなと。
ナナヲ ありがとうございます。おっしゃる通り、朝日さんの「人類殲滅のテーマ」がオープニングテーマだとしたら、この「ダメレオンハート」がエンディグテーマとしてすべてを回収してくれているかのようで。
朝日 最後にこの曲があると安心しますよね。
ナナヲ 「ダメレオンハート」はタイトルチューンなんですけど、作り方が面白くて。まず阿東里枝さんというマンガ家の方がマンガを描いてくださって、それに合わせてナユタンさんが曲を書き下ろしてくださったんです。もう「変わりたいけど変われない。けど、変わろうとしてる」っていうのがすごくナナヲアカリらしいし、ナナヲアカリを聴いてくれている人にもそういう人が多いと思うし、ナナヲ自身も今まさにそういうポイントにいるから……っていうのをナユタンさんにお話ししました。
朝日 マンガから曲を作るって、すごいなナユタンさん。
ナナヲ 「めっちゃ大変でしたけど面白かったです」と言ってくれました。あと、ナユタンさんとは今まで何曲も一緒にやらせてもらってるから「ダダダダ天使」の「ダメダメ」だったり「ワンルームシュガーライフ」の「キラキラ」だったり、過去の曲を彷彿とさせるワードを散りばめるという遊び心もあって、さすがだなと。
朝日 小粋ですよね、ナユタンさんの曲は。「ダメレオンハート」はナナヲさんのポエトリーもカッコよくて、「ラッパーだったんですか?」って思いました。
ナナヲ それ、ナユタンさんにもめっちゃ言われました。最近、ナナヲ自身がヒップホップをよく聴いていることもあって、無意識のうちにそのムーブが滲み出ていたらしく。このポエトリー部分は自分で書いてるんですけど、それも含めて歌詞が全部マンガのコマに対応してるから、ミュージックビデオもマンガみたいにできたんですよ。
朝日 このMVで面白かったのが、ナナヲさんっぽい人が出てくるじゃないですか。
ナナヲ 笑っちゃいますよね。あれは、髪の毛が短いときのナナヲを描いてくださったんですけど、目にハイライトが入ってキラキラしてるんですよ。それを観た人たちから「目が死んでないナナヲアカリなんて……」みたいなことをすごく言われて。「そこまで死んどらんやろ!」って思いました(笑)。
音楽って案外残るもんですね
ナナヲ なんか、今こうして朝日さんと対談させてもらっているわけですけど、石風呂さんの曲を聴いてた中学時代のナナヲからしたら信じられないことなんですよ。当時の自分に「朝日さんに曲を書いてもらって、それをお前が歌ってるよ」と言っても絶対に信じない。だから、本当にありがとうございます、と改めて言わせください。
朝日 いえいえ、こちらこそご一緒できて楽しかったです。ちなみにナナヲさんが中学生のとき、石風呂はどんな曲を出してました?
ナナヲ みんな「ゆるふわ樹海ガール」をカラオケで歌ってました。その頃から今まで活動を続けてくださったということに関しても、もう感謝しかない。
朝日 じゃあ8年ぐらい前か。ネクライトーキーでもいまだに「ゆるふわ」をやってるから、音楽って案外残るもんですね。年上のミュージシャンの人から「10年残る音楽を」みたいな話をされたりするんですけど、「俺はそんなの考えて作ってないなあ」「好きでやってるだけだなあ」みたいに思ってたんですよ。でも、なんやかんやで10年も音楽をやってるし、それこそ8年前に書いた曲の話を今してくれる人もいる。だから、もしかしたらこの先「ナナヲさんの曲がきっかけで音楽に目覚めたんです」っていうプロのミュージシャンが現れるかもしれない。
ナナヲ そうなったら素敵ですよね。
朝日 その曲が「人類殲滅のテーマ」だったりしないかなあ(笑)。
──この「DAMELEON」のリリースに合わせて全国ツアー「DAMELEON RELEASE TOUR『CHANGING!』」が始まりますが、ナナヲさんはどういうツアーにしたいですか?
ナナヲ 「CHANGING!」というタイトルを掲げたツアーでもあるので、このナナヲ史上最高傑作かもしれない「DAMELEON」を、よりよいものにどんどん変えていけるようなツアーにしたいですね。やっぱりみんなと一緒に、ライブハウスで歌って初めて見えてくることがたくさんあるし、ナナヲ自身もすごくライブが好きなので、とにかくブチアガっていきたい。
──この機会に、朝日さんに何かアドバイスを求めてみては?
ナナヲ 今回のツアーで初めて北海道に行くんですけど、何がおいしいですか? それ以外にもおいしい食べ物があればぜひ。
朝日 ああ、北海道は何を食べてもおいしかったですね。あとは……広島だったらウニホーレン、福岡はごまさばがうますぎました。
ナナヲ なるほど。いやあ、いいことが聞けたな。
──僕はライブパフォーマンスに関するアドバイスのつもりだったのですが……。
ナナヲ パフォーマンスに関してはネクライトーキーのライブですでに学んでますから(笑)。
朝日 ライブはもう好きにやってればね。嘘がなければそれでいいんじゃないですか。
ライブ情報
- DAMELEON RELEASE TOUR「CHANGING!」
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- 2019年10月26日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2019年11月1日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2019年11月3日(日・祝)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2019年11月7日(木)香川県 DIME
- 2019年11月9日(土)福岡県 DRUM Be-1
- 2019年11月10日(日)広島県 CAVE-BE
- 2019年11月17日(日)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2019年11月23日(土・祝)愛知県 APOLLO BASE
- 2019年11月24日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2019年11月27日(水)東京都 LIQUIDROOM
- 2019年12月8日(日)東京都 新宿BLAZE