音楽ナタリー PowerPush -ななみ
13曲で届けるななみの愛
「海猿」っぽくしてください
──新曲の中でもアルバムの6曲目「出逢えたのはあの店で」には驚きました。ななみさんが声色を変えて、アイドルソングっぽい曲をノリノリで歌うとは思っていませんでしたので……。
この曲は今の自分にはあまりない、若さをよみがえらせて作ったものです(笑)。
──ただキャッチーなだけじゃなくて歌詞の中にちょっと影があるところがななみさんらしいですよね。
そうかもしれませんね。「あなたに出会えたせいで何も考えられないんだよ」って歌っているところとか。みんなはこの曲を聴いて「ななみのキャラクターとちょっと違う」って思うかもしれませんが、女性はみんなこういう気持ちを持っていたと思うんです。もしかしたら今の私にはないかもしれませんけど、過去にさかのぼっていけばそういう気持ちを持っていた時期を思い出せるわけですから。
──アルバムの曲順もすごく面白いですよね。この曲の次「許されざる愛」は曲調がR&Bで、アリシア・キーズなどの洋楽アーティストが好きというななみさんのルーツを感じさせる楽曲です。
R&Bの曲ってすごく好きでよく聴いていたんですけど、歌ったことはあんまりなかったんですよ。今回初めてこういう曲を歌ってみて、本当に好きなジャンルなんだなって思いました。
──アレンジもすごく多彩です。バンドサウンドの曲があったと思えば、ピアノの弾き語りの曲やストリングスの入った編成のものもありますし。
豪華にしすぎたかなって曲もあるんです。「君という宝物」って曲は、アレンジャーの方に「『海猿』っぽくしてください」って頼んで。
──「海猿」ってあのドラマや映画のですか?
そうです。映画の主題歌を担当した伊藤由奈さんが崖の上でバラードを歌ってるイメージがあって、「そんな感じにしてください!」みたいな要望を言ってました。「去れ負け犬よ」のときは、「Aerosmithさんみたいに、砂漠のような場所でアンプを置いて演奏してる雰囲気に」ってお願いしたり。
──曲の雰囲気を絵面でイメージするんですね。
そうなんです。MVをすぐ思い浮かべて「こういう情景に似合う感じで」って伝えてます。アレンジをお願いするのに音で説明してしまうと、誤解が生じてしまうんですよね。風景とか情景を伝えると、なんとなくだと思うんですけど、わかってもらえる。アレンジャーさんは大変な思いをしてるかもしれませんけど(笑)。
──アルバムの最後の曲が、デビュー曲「愛が叫んでる」だったのも印象的でした。
本当にいろんな曲が入ってるので、アルバムを最後に締められるのが「愛が叫んでる」しかなかったんです。なんかボスみたいな感じ(笑)。この曲がなかったら「Music Revolution」(「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」)でもグランプリを取れなかったわけですから。だからこの曲で終わりなんじゃなくて、これが始まりなんだよっていうメッセージもこっそり入れたいなと思って最後に持ってきています。
曲は子供みたいなもの
──デビュー曲「愛が叫んでる」をはじめとして、ななみさんは実体験をベースにして曲を作るとおっしゃっていましたが(参照:ななみ「愛が叫んでる」インタビュー)、新曲を作り続けることでネタ切れになったりはしないんですか?
ネタ切れにはならないですね。例えば過去に1つの恋があったとするじゃないですか、それで10曲くらい曲ができるんですよ。その恋がもしこうなっていたらっていう想像で曲を書くこともあるし、恋の始まりも曲になるし、恋の終わりも曲になるから。
──自分の過去を掘り下げていくことで曲を作っていくんですね。
自分の経験を曲にすることで、その頃の気持ちが救われるんですよ。例えばアルバムに入ってる「Dahlia」とかを聴くと「ああ当時の私ってこんなふうに思ってたんだ」ってビックリするんですよ。「悲しみにありがとう」って曲は、失恋がテーマなんですけど、当時の私がどれほど人を信じられていなかったのか思い出したりして。ある意味、曲を作ることによってそのときの苦しい感情を終わらせているんです。
──過去の経験や感情をベースにした曲を、現在のななみさんは客観視できてるということなんですか?
そうですね。だから私は作曲ができて本当によかったなあと思ってるんです。普通の人だったら「今日、課長うざかったなう」とかTwitterに書いてスッキリするところを、私は曲を書いて、しかもその曲でみんなに共感してもらえるのは幸せなことだなって。自分が作った曲が自分の子供みたいに感じるときがあるんですよ(笑)。
──どういうことですか?
現実の兄弟の中でできる子とできない子がいるように、月に10曲くらい作っていると、できの悪い曲とできのいい曲が出てくるんです。でもできが悪いからと言って、ボツにするのはかわいそうだし、それをどう変えてあげられるかが親の仕事なんじゃないかなって思っていて。だから最近は1曲1曲をすごく大事にするようになりました。
──ちなみに、ななみさんのこれまでの歌手活動の中で曲ができない時期、スランプとかってなかったんですか?
1回もないですね。いくらでも書ける自信があるんですよ。だって私は音楽以外のことができないから(笑)。人が生活していく中で使うべき意識を全部音楽につぎ込んでるわけですから、スランプなんて作らないでって神様に願ってるんです。でもスランプに陥ったらそのときの気持ちを歌ってまた曲ができるな、とも思ってます。
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収録曲
- I'll wake up
- 去れ負け犬よ
- 約束を果たすその日まで
- I live for love
- 愛してる
- 出逢えたのはあの店で
- 許されざる愛
- ポケットの恋花火
- 君という宝物
- 悲しみにありがとう
- Dahlia
- 涙レンズ
- 愛が叫んでる
“~73 Street Mission 2015~”
1st Album「ななみ」リリース全国ストリートライブツアー
- 2015年5月13日(水)~17日(日)九州各地
※開催地、開催時間などの詳細はオフィシャルサイトや、ななみスタッフTwitter、Facebookで随時発表。 - 2015年5月23日(土)東京都 新宿駅、渋谷駅周辺予定
- 2015年5月27日(水)愛知県 名古屋駅周辺予定
- 2015年5月28日(木)愛知県 名古屋市内予定
- 2015年5月30日(土)埼玉県 大宮駅、川口駅周辺予定
- and more
- ※6、7月も「73 street mission 2015」は全国で展開予定。
ななみ
1993年、大分県生まれ。学生時代から地元大分でライブの経験を積み、2013年1月に行われたヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」でグランプリを受賞。NHK大分放送局のノンフィクション番組「ドキュメント 桃」の主題歌として書き下ろし曲「桜」がオンエアされるなど、地元大分での注目を集めた。グランプリ受賞後は、全国22カ所を1人で回る弾き語りツアーを行い、着実にその知名度を上げていく。2014年10月、自身が“暗黒時代”と呼ぶ学生の頃の経験をモチーフにした楽曲「愛が叫んでる」をシングルリリースし、日本クラウンとヤマハが合同で設立したe-stretch RECORDSよりメジャーデビュー。2015年2月に2ndシングル「I'll wake up」を、同年5月に1stアルバム「ななみ」を発表した。