ナタリー PowerPush - THE NAMPA BOYS
満を持して全国へ 入江悠監督と熱血対談
地元でチヤホヤされていても何も変わらない
──NAMPA BOYSは東京への憧れをずっと抱いていたんですか?
澤柳昌孝(G) 松本でずっとやっていてもしょうがないとは思ってましたね。
田中 違う世界を知りたかったんですよね。
小林 うん。このままでは井の中の蛙的な感じのままだなと思ってたんですよね。
入江 松本にはライブハウスって結構あるんですか?
小林 3つ4つありますね。「閃光ライオット」というイベントをきっかけに東京でライブする機会も多くなって。そこで東京にはすげえバンドがいっぱいいるんだなって気付かされたんですよね。俺たちは地元で結構チヤホヤされていたんです。だからすげえ自信満々だったんですけど、東京でライブをやって現実を突きつけられた気がして。このままじゃいかんと思いましたね。地元のバンドシーンを盛り上げたいという気持ちがあったし、今でも松本を代表するバンドになりたいと思っているんですけど、それを実現するには地元を出なきゃいけないと思ったんです。地元でチヤホヤされていても何も変わらないって。だったら東京に出て、自分たちの功績を残したほうが地元のためにもなるんじゃないかと。札幌とか福岡とか、その土地を代表するバンドって多いじゃないですか。でも、松本を代表するバンドってあまり聞かないんですよね。じゃあ俺たちがなってやろうと思って。松本で培った音楽を東京で響かせたいなって思ってます。
入江 全員松本出身なんだよね?
小林 はい。オリジナルメンバーは俺と田中で、澤柳と後藤はあとから入りました。
澤柳 聡里に無理矢理引っ張られて加入したんですけど(笑)。
入江 でも、東京まで一緒に来たわけでしょ。それはすごいと思うんだけど。
後藤駿(Dr) 音楽をずっと続けたいという願望がある中で、聡里に誘われたんですよね。
入江 「こいつについていっていいのか?」っていう不安はなかったの?
小林 あったでしょ?
澤柳 最初はありましたね。性格もひねくれてるし(笑)。明確な決意みたいなものがあったわけじゃないんですけど、いつの間にかずっと一緒にいるような感じで。
小林 俺は「信じてほしい」とは一度も言ったことがなくて。「多分大丈夫だよ」みたいな(笑)。でも、そこでついてきてくれたのはありがたいなって。
──結成から今に至るまで小林くんと一緒にバンドをやってきた田中くんはどうですか?
田中 いろいろありましたけど、もうこいつのことは信頼してますね(笑)。
澤柳 どこまでいろいろあったんだっけ?(笑)
小林 俺、田中にクビ宣告を受けたことがあるんですよ。「お前調子に乗るなよ!」って。15歳のときに「閃光ライオット」で決勝までいったりして、実際に天狗になっていたんですよね。
入江 ああ、メンバーに鼻を折られたんだ。
田中 でも、そういうことがあったからこそ、今があると思えるので。
小林 早い段階でいろいろありすぎたんですよね、このバンドは。
入江 19歳でここまで来てるのが信じられないし、すごいなって思う。僕が「SR サイタマノラッパー」を撮ったのが27歳のときで。19歳から映画の勉強を始めて、そろそろ10年になろうかというときに「SR サイタマノラッパー」でようやく賞をもらってみたいな感じだったので。バンドやミュージシャン以上に映画監督になる道って明確にないので。7~8年ダラダラした鬱屈した生活を送っていましたから。
自分には語るべき物語がない
──入江監督はそんな自分に決着をつけるために「SR サイタマノラッパー」を撮ったんですよね。
入江 そうですね。これで最後にしようと思って、自分の原点を見つめた作品を撮ろうと思ったんです。
──「SR サイタマノラッパー」が見向きもされなかったら、そのあとはどうしようと思っていたんですか?
入江 中国とかに行って、大陸浪人にでもなろうかなと思ってました(笑)。新しい漢方薬を作って売りさばいたりしようかなって。
一同 (笑)。
──そこまでの覚悟をもって原点を見つめようと思ったときに、おのずと地元である埼玉という土地の閉塞感を描くことになったという。
入江 そうですね。「自分はなんであんなに埼玉を憎んでいたんだろう?」って。そこを見つめないことにはね。
──いろんなことに決着をつけられない?
入江 うん、そういう思いでした。
小林 俺は長野がすごく好きなので、東京にいながら長野の良いところを見つけたいという思いがあって。
入江 さっき小林くんは「長野を代表するバンドになりたい」って言ってましたけど、僕は埼玉の代表になりたいという気持ちは一切なくて。恩返ししたいという気持ちもないですし。
──でも、今だからこそ愛せる部分もあるんじゃないですか?
入江 映画を撮る過程でいろんな面白いオッサンとかに会えたりして、それは良かったと思うんですけど(笑)。埼玉という土地の無味無臭な印象は変わらないですね。埼玉をバックグラウンドにしている自分には語るべき物語がないっていう。ただ、日本全国の国道沿いの風景ってどんどん似てきているんですよね。それを僕は「サイタマ化」と呼んでるんですけど。
──地元感がなくなっていくというか。
入江 そうそう。大学のときに九州から出てきた奴と話していると長渕剛的な腰の据わった感じが出てるんですよね。「一旗揚げないと地元に帰れねえ!」みたいな。
小林 俺たちもそういう感じが少しあるかもしれない。
入江 それがうらやましいんですよね。こっちは米が尽きたらすぐ地元に帰れる距離だし(笑)。
THE NAMPA BOYS(なんぱぼーいず)
2005年に小林聡里(Vo, G)と田中悠貴(B)を中心に結成された4人組ロックバンド。メンバー全員が長野県松本市出身で、2008年の第1回「閃光ライオット」にて本戦出場を果たし、大きな注目を集める。その後地元での活動を経て、高校卒業を機に上京。都内で精力的なライブ活動を行う中で、現在の所属レーベルのスタッフの目に留まり、6月6日にテレビ東京系「クローバー」のオープニングテーマに起用された「プランジ」でデビュー。
THE NAMPA BOYSライブ情報
- MUSIC LINXS
- 2012年5月24日(木)東京都 新宿LOFT
OPEN 18:00 / START 19:00
<出演者>
THE NAMPA BOYS / SAKANAMON / KEYTALK / tricot - BARBARS PRESENTS[『B.B.Q』BARBARS QUEST~第二章 かいしんのいちげき!251のダメージをくらわせろ!~]
- 2012年5月26日(土)東京都 下北沢251
OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
THE NAMPA BOYS / BARBARS / The HARPY's - BRAND NEW AGE
- 2012年6月3日(日)大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
OPEN 17:00 / START 17:30
<出演者>
THE NAMPA BOYS / paionia / BLUE ENCOUNT / Brian the Sun / and more - FM FUKUOKApresents LIVE GOW!! vol.1
- 2012年7月15日(日)福岡県 スパイラルファクトリー
OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
THE NAMPA BOYS / The SALOVERS / OverTheDogs / and more
入江悠(いりえゆう)
1979年生まれ、埼玉県出身の映画監督。大学在学中に映画を作り始め、各地のフィルムコンテストで入選を果たす。代表作は「SR サイタマノラッパー」「SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム」「SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」など。映画界のみならず、音楽業界でも熱い注目を集め、特に「SR サイタマノラッパー」シリーズは高い評価を得ている。現在連続ドラマ初監督作品となる「クローバー」が、テレビ東京系で放送中。
ドラマ情報
テレビ東京系 ドラマ24「クローバー」
毎週金曜深夜0:12~放送中!(テレビ大阪は月曜深夜0:12~)
・オンエア局
テレビ東京ネット(テレビ東京・テレビ大阪・テレビ愛知・テレビ北海道・テレビ九州放送・テレビせとうち) / 奈良テレビ / 北陸放送