舐達麻|俺たちは普通の人間、だからこそ誰よりも真剣に音楽をやってる

ワル自慢じゃなく日常のことを歌ってるだけ

──舐達麻も大麻や刑務所のことを非常にリアルにラップしていますよね。

BADSAIKUSH 自分で何かリリックを書くとして、どんなことを書きます? 自分の身に起きたことしか書けないじゃないですか。みんな刑務所の描写がどうとか大麻の描写がどうとか言うけど、俺らにはそれしかないんで。作り話を書いてるわけじゃないし、誰かに言われてやってるわけでもない。体験したことを語ってるだけだから。DELTA9KIDは刑務所に長く入ってたし、俺も入ってたし、そのときのことを思い出して書くだけです。

DELTA9KID

DELTA9KID そうだね。大麻がどうとか言ってるから、ワル自慢してると思われる方もいらっしゃると思うんですけど、全然そんなことないんです。日常のことをただ歌ってるだけなんで。ただ一生懸命、自分に向き合ってます。

BADSAIKUSH リリックを書き始めるとき、何を書こうかなっていうときは絶対にウィード吸ってるんですよ。だから、そのことを書くしかないじゃないですか。

DELTA9KID ありのままだよね。

BADSAIKUSH ウィードがないと、たぶん音楽をやりたいとも思わない。でも誰よりも絶対に真剣なんです。数値とかで測れるなら自分の横に出してほしいくらいですよ。大袈裟かもしれないですけど、俺たちは命懸けてるんですよ。ヒップホップのために死ねるとかそういうことじゃなくて。命っていうのは人生であり生涯。生涯というのは“今”のこと。ずっと働かずに今ヒップホップだけをやってる。ラップをやるために働くのがダサいとかじゃなくて、1日8時間働いてたら残りの時間は疲れてラップなんかできないから。俺たちは普通の人間だから、ほかの人が働いている時間もずっと音楽をやらないと絶対に芽が出ないし、人よりもたくさんの時間を費やさないといけない。そのためにはお金は簡単に入ってこなきゃいけない。でも、だからって人をぶっ飛ばして金を奪ってるわけじゃない。別に人をぶっ飛ばして金奪ってもいいけど、そういうことはしてないし。

──なるほど……。

BADSAIKUSH 俺たち、売れなかったらどうするかなんて何も考えてないんですよ。バカだから。だけどラップだけを20歳そこそこの頃からずーっと続けてきてる。そういう姿勢でヒップホップに取り組んでる人たちをほかに見たことがないです。いるかもしれないけど、少なくとも俺たちは見たことがない。だから俺たちは誰よりも真剣なんです。ウィードなかったらイヤですけど。

DELTA9KID 楽しくないとできないよね。

BADSAIKUSH “楽しい”ってところから始まってるんで、そこにしかこだわってない。

ビート選びを適当にやってる奴はラッパーを辞めたほうがいい

──曲作りで3人がぶつかることはありますか?

BADSAIKUSH 俺がいつもキレてるね。

G-PLANTS

G-PLANTS でも、ぶつかるって感じじゃない。やらなきゃいけないことを言われて「ああ、そうか」と思うことなんで。この3人がぶつかっても厄介じゃないですか?(笑)

BADSAIKUSH 厄介だねえ。

G-PLANTS 間違ったことを言われたら「なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ?」ってなるけど、言われてることが一理どころか何理もあるなって(笑)。

DELTA9KID いい悪いの判断がちゃんとできてるよね。全員の共通認識がある。

G-PLANTS それが去年バズったりした要因だと思います。

──リリックを書くのは皆さん速いんですか?

G-PLANTS いや速くないです。常に悩んでます。

BADSAIKUSH 俺は超速いです。

DELTA9KID 僕も書き始めたらバッといけちゃいますね。いいビートがリリックを書かせてくれる。

──作品作りはビート選びから始まるんですか?

賽 a.k.a. BADSAIKUSH

BADSAIKUSH もちろん。ラッパーの9割はビート選びを適当にやってるんですけど、その時点で辞めたほうがいいよってマジで思います。ビートとラップしかないのにビート選びを超真剣にやらない理由がわからない。ラップで出せる力って自分の持ってる実力の100%が限界ですけど、ビートはレベルの高いやつを選べばいいだけじゃないですか。なのに、わざわざ70点のビートを選ぶのは「はあ?」って思うんですよ。ビートがどれだけ大事なのかを考えてない。俺たちは絶対的にビート選びを優先していて、いいビートじゃなきゃ聴きたくない。

──舐達麻の楽曲は聴き心地のいいビートが特徴でもあります。

BADSAIKUSH チルとかジャジーとかローファイとかじゃビートは語れないんですよ。俺たちが選ぶのは最新のビート。もちろんジャジーだったり、チルだったりするけど、新しいってことが大事だと思ってます。

──新しいというのは?

BADSAIKUSH 今の時代にしかないものですね。今流行ってるという意味ではなく、まだ誰も聴いたことがない最新の音。それがGREEN ASSASSIN DOLLARのビートです。GREEN ASSASSIN DOLLARからはたくさんビートが送られてきますけど、もちろん全部がクラシックというわけではないので、その中から直感でクラシックとなるようなビートを選んでいます。

──その感覚は3人で合致してるんですか?

BADSAIKUSH 30曲ぐらいトラックを渡されて「5曲選んできて」ってなったら全部がかぶることはないと思うんですけど、「このビートが一番いいでしょ」っていうのは絶対にみんな同じですね。