ナタリー PowerPush - 中島美嘉
自分の声と直感を信じて。ニューアルバム「VOICE」完成
「LIFE」「SAKURA~花霞~(DAISHI DANCE)」「永遠の詩」といったヒットシングルを含むニューアルバム「VOICE」。“TRUST YOUR VOICE”というテーマを掲げた本作には、「小さいころから、自分の直感を信じて生きてきた」という彼女自身の生き方、そして、歌に対する真摯なモチベーションが色濃く反映されている。バラード、レゲエ、ヘビィロックからアップテンポのポップチューンまでを含むカラフルな音楽性も驚くほどに高品質。このアルバムによって中島美嘉は、そのポテンシャルをさらに大きく広げることになるだろう。
取材・文/森朋之
アルバムタイトルは右の手首に入れたタトゥから
——「VOICE」というタイトルのことから教えてもらえますか?
私が何の気なしにやったことが、みんなの胸にガーンと来たらしいんですよね、どうやら。
——どういうこと?
タトゥを入れたんですよ(右の手首の内側に“TRUST YOUR VOICE”の文字が刻まれている)。“自分の声を信じる、自分の直感を信じる”っていう意味なんだけど、自分自身のテーマというか、実際に美嘉はそうやって生きていきたから。私はホントに何気なくやったんだけど、これを見たプロデューサーがえらく感激しちゃったんです。「それだよ!」って。で、タイトルも“TRUST YOUR VOICE”にしたいって言い出して。でも、いままでのタイトルはぜんぶワンワードだから、「じゃあ、『VOICE』はどう?」って。
——なるほど。「TRUST YOUR VOICE」というタイトルの曲も収録されてますが、これはまさに中島さん自身の生き方であり、アルバムの中心的なメッセージを含んでますよね。
そうですね。ここまではっきり(メッセージを)打ち出した曲はいままでなかったかも。本当に私は、自分の直感だけを頼りに生きてきたところがあるから……親がよく言ってますからね。あなたは小さいときから、一度言い出したら聞かなかったって(笑)。もちろん、迷うこともありますけどね。そういうときはちゃんと人の意見も聞くし。
——自分のやりたいことがわからない、っていう人も多いみたいですけどね。
うーん……。いつも言うんですけど、焦らないことですよね。ヘタに焦ると、余計に自分のことが見えなくなるというか。私だって、どうしてこういう状況にいるのかわかんないくらいだから。
——ずっと歌っていくなんて、思ってなかった?
うん。デビューしたあと、バイトを探そうとしたことがあるんですよ。「これじゃあ食べていけないな」って思ったから。事務所の人がビックリしてましたけどね(笑)。
——(笑)。でも、歌に対する思いはさらに強くなってるんじゃないですか?「VOICE」というタイトルも、実は“自分の歌”への気持ちの表れなんじゃないかな、と。
そうかもね。前までは、努力してるっていうのを人に知られたくなかったんですよ。だから大変だったんです、練習時間を確保するのが(笑)。
——努力=かっこよくない、みたいな?
うーん……。でも「何でもカンタンにやっちゃうね」とは思われたかったのかも。あのね、「NANA」の映画のなかで、「天才だと思われたかった」っていうセリフがあるんですよ。それ、すごく共感したんですよね。でも、私はもちろん天才ではないっていう。家では必死になってやってたわけだから。
本格的なボイストレーニングを受けて、改めて歌の深さを知った
——そういえば「2008年は自分自身の向上のために時間を割きたい」って言ってましたよね。
そう。「どうしてニューヨークに住んでるの?」(彼女は2008年の春から、ニューヨークに住まいを移している)って聞かれたら、「ボイトレのためです」って答えるしかないからね。ホントのことだから、隠す必要もないかなって。本格的なボイストレーニングはいままでやったことがなかったし、やれば何か変わるかなって思ったし。そうやって自信をつけようと思ってたんだけど、まあ、なかなか上手くはいかないですよね。
——そうですか?
うん。それに「ボイトレやってるんだから」っていう周りの期待もあるじゃないですか。それに答えなきゃっていう気持ちがプレッシャーに変わっていって、またぜんぶが悪いほうに(笑)。何て言うか、やっぱり歌は難しいですよ。知れば知るほど深さがわかってきて、「ぜんぜんダメだな」って思うようになって。
——中島さんは実感してないのかもしれないけど、ボーカルの表現は大きく向上してると思いますよ。強さが加わった、というか。
スタッフにもそんなふうに言われてるんですけどね。自分ではわからないです。
——ボーカルのレコーディングもニューヨークだったんですよね?
はい。それはね、良かったと思いますね。それしかやることがないから、すごく集中できるんですよ。日本だと他の仕事も入ってきちゃうから、「この曲は絶対、今日中に録らなくちゃいけない」ってことも多かったんだったけど、向こうではもっと時間をかけられるので。地下鉄でスタジオにいって、終わったらまた地下鉄で帰るっていう生活も良かったですね。それだけで気分転換もできるし、本当の意味で初心に帰れる気がするんですよね。
——なるほど。では、楽曲についていくつか聞かせてください。まず柴田淳さんの書き下ろしによる「声」。「あなたのために歌い続ける」という思いが伝わるバラードですが、「TRUST YOUR VOICE」と並んで、アルバムの中心を形作ってる曲だと思いました。
うん、めっちゃいい曲ですよね。柴田淳さんには、私が直接連絡を取ったんですよ。メイクの方に頼んで、ファンレターを渡してもらって(笑)。以前から、すごく好きだったので……。この曲も本当に素晴らしいし、私にとっても大事な曲になりました。ご本人とやりとりさせてもらったから、特にそう思いますね。
——歌詞の内容についても話したんですか?
そうですね。「私としてはここの歌詞が気に入ってます」ということも教えてもらったり。「たとえ私があなたの景色だったとしても」というところなんですけど、その表現には本当に驚かされたし、魂を込めて歌いましたね。
——シングルとしてリリースされた「ORION」はオーセンティックなバラード。やっぱり、中島さんのバラードはいいですね。
最初にデモを聴いたときは、それほど印象に残らなかったんですけどね。そのころはMICA 3 CHUのことで頭がいっぱいだったから、アップテンポの曲しか興味がなくて(笑)。もちろん、いまは大好きですけどね。「ORION」は男っぽいバラードだなと思ってるんですよ。だから、声もかなり張ってるんです。いままでは細く、繊細に歌うのが好きだったから、そこはかなり違いますね。
CD収録曲
- LIFE
- SAKURA~花霞~(DAISHI DANCE)
- FOCUS
- 永遠の詩
- ORION
- あなたがいるから
- MY GENTLEMAN
- TRUST YOUR VOICE
- IT'S TOO LATE
- I DON'T KNOW
- SHUT UP
- conFusiOn
- FLOWER OF TIME
- 声
DVD収録内容(ビデオクリップ)
- LIFE
- 永遠の詩
- SAKURA~花霞~
- I DON'T KNOW
- ORION
- FOCUS
プロフィール
中島美嘉(なかしまみか)
1983年鹿児島生まれ。2001年にドラマ「傷だらけのラブソング」のヒロインに抜擢され、シングル「STARS」で大型新人としてデビュー。2002年リリースの1stアルバム「TRUE」がミリオンセラーを記録し、一躍トップスターの仲間入りを果たす。その後も「雪の華」「愛してる」「桜色舞うころ」などヒット曲を連発。女優としても活躍し、2005年公開の映画「NANA」では主役のナナ役を熱演。NANA starring MIKA NAKASHIMA名義で発表した主題歌「GLAMOROUS SKY」もチャート1位を記録した。2008年には森三中とのコラボレーションユニットMICA 3 CHUとしても活動。日本を代表する歌姫としてアジア圏での人気も高く、ファッションリーダーとしても確かな支持を獲得している。