音楽ナタリー PowerPush - 中納良恵
ソロアルバムを語る、坂本慎太郎とも語る
中納良恵(EGO-WRAPPIN')の2ndソロアルバム「窓景」(まどけい)が完成した。
本作は2007年発表の「ソレイユ」以来約7年ぶりとなる中納のソロアルバム。永積崇(ハナレグミ)や坂本慎太郎という個性派が参加していることでも大きな話題を集めている(参照:EGO-WRAPPIN'中納良恵「窓景」にハナレグミ、坂本慎太郎が参加)。
今回ナタリーでは本作の魅力を紐解くべく、中納へのソロインタビューと、中納と坂本の対談を実施した。
取材・文 / 加藤一陽 撮影 / 小原啓樹
もうちょっと自分の色を出そう
──「ソレイユ」以来のソロアルバムになりました。
はい。
──ソロアルバムは7年ぶりです。
自分としてはEGO-WRAPPIN'でもずっと動いてるから、“言うなればひさしぶり”っていう感じですけど。
──「窓景」を作ろうと思ったのはいつ頃だったんですか?
2014年入ってからか、2013年の暮れか、その辺りです。2014年の前半にエゴのシングル(「BRIGHT TIME」)を出すのが決まっていて、後半少し時間作ってもらえそうだったから。それまで書きためていた曲もあったし、「またソロやりたいなあ」って思っていたんです。
──エゴの活動と並行して、ソロ用の曲も書いていたんですね。
うん。「ソレイユ」を出したあとにすぐ書いた曲もあるし。あと私、年に1回あるかないかくらいの間隔でソロライブをやっているんですけど、そのライブ用に数曲程度作ったりしていて。それでアルバムの制作期間は2014年の1月から9月まで。その間に作業を中断している時期もありました。
──「ソレイユ」の話に遡りますが、そもそも中納さんがソロをやろうと思った理由は?
私もともとシンガーソングライター系の音楽も好きで、ピアノを弾きながら歌うのに憧れがあったんです。「ソレイユ」はそういうのをやりたいっていう衝動から作ったアルバムで。
──そうだったんですね。向井秀徳(ZAZEN BOYS)さん、青柳拓次(LITTLE CREATURES)さん、鈴木惣一朗(ワールドスタンダード)さんなどが参加していました。
はい。皆さんに2曲くらいずつお願いして。
──「ソレイユ」って1曲だけカバー曲がありましたけど、ほかは基本的に作詞作曲はすべて中納さんですよね?
うん。全部作詞作曲は私がやりました。皆さんにはプロデューサーみたいな形で入ってもらって。
──参加した方々の個性がすごく出ていましたよね。一方で、今回の「窓景」にはハナレグミや坂本慎太郎さんが参加していますが、プロデュースはすべて中納さん。
そうですね。前作がプロデューサーさんたちの色がけっこう出たものになったので、今回はもうちょっと自分の色を濃くしようと思って。だからプロデュースは自分で、ドラマーの菅沼雄太くんと、エンジニアの中村督くんからいろいろアドバイスをしてもらって作っていたんです。細かい作業は3人でやっていきましたね。
──中村さんって、POTATO STUDIOの。
そうです。今回のアルバムはずっとあそこで作っていて。私パソコンとか機械のことがよくわからないから、オケの感じを調整してもらったり、サンプラーいじってもらったり。そういう機械のことを中村くんにやってもらいました。私はサンプラーのボタン押すだけ、みたいにしてもらって。あとスガちゃん(菅沼)は、最初に曲を聴いてもらったら「全部一緒にやりたい」って言ってくれて、それで一緒に音を決めていったりして。ドラムの音の微調整とかで全体の聞こえ方も変わってくるし、そうすると足す楽器も変わるし。
エゴより細かい
──「窓景」は、ジェイムス・ブレイクの曲みたいなひんやりしたサウンドから、ソングライター系の歌モノまで幅広く楽しめる作品でした。いろいろなタイプの曲が混在しているっていう意味では「ソレイユ」もそうでしたけど、前作よりもサウンドへのこだわりが強く出ているなと。
うん。いわゆる音響系の曲から四つ打ちの曲まで本当にいろいろなタイプな曲があるから、一貫性みたいなところで「大丈夫かな?」って思うこともあったんだけど、中村くんとスガちゃんが「好きなことをやればいい」って言ってくれて。
──心強いですね。では実作業はどのように?
まずは全楽曲生楽器でレコーディングをしていきました。だから、打ち込みとか波形編集をして作っていったわけじゃないんです。
──そうだったんですね。曲によっては、打ち込みや波形編集で作っていったのかと思っていました。
うん。とりあえず全部を生楽器で録って、そっから中村くんとスガちゃんと足したり引いたりしながら曲を作っていきました。
──バンドでレコーディングしたものを素材に曲を構築していくって作業だったんですね。
そうそう。だから制作が終わらなかったですね。とにかくずっと作業していました。
──聴いているとだいぶ細かくアレンジされているのがわかります。エゴもアレンジや仕掛けは細かいですけど、それ以上というか。
エゴのときは楽器をやる人がいますから、バーンってレコーディングして、その日に重ねてとかって感じだけど。今回はレコーディングもしたけど、そのあとに何を乗せていくかって考えていきました。だからエゴより時間がかかってます。
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- 2ndソロアルバム「窓景」/ 2015年1月14日発売 / TOY'S FACTORY
- 「窓景」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3996円 / TFCC-86497
- 通常盤 [CD] 3240円 / TFCC-86498
CD収録曲
- あのね、ほんとうは
- ケムニマイテ
- Talk To You
- beautiful island
- I'm a piano
- Ding Gong
- SCUBA
- 四角のトモダチ
- 写真の中のあなた
- 濡れない雨
- 大きな木の下
初回限定盤DVD収録内容
中納良恵ワンマンライブ「あのね、ほんとうは」at 神奈川・大さん橋ホール(2014年10月24日)
- 幸福の会話
- あくび
- ソレイユ
- 濡れない雨
- 大きな木の下
- no place to hide
- I'm a piano
- 水中の光
- 写真の中のあなた
- ケムニマイテ
- Ding Gong
- あのね、ほんとうは
- 夢
中納良恵 live tour 「窓景」
- 2015年2月7日(土)石川県 金沢芸術村 パフォーミングスクエア
- 2015年2月8日(日)宮城県 イズミティ21 小ホール
- 2015年2月19日(木)北海道 札幌サンプラザホール
- 2015年2月24日(火)福岡県 イムズホール
- 2015年2月26日(木)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年2月27日(金)大阪府 サンケイホールブリーゼ
- 2015年3月1日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
- 2015年3月10日(火)東京都 東京グローブ座
- 2015年3月11日(水)東京都 東京グローブ座
中納良恵(ナカノヨシエ)
EGO-WRAPPIN'のボーカリストとして活躍するアーティスト。1996年に大阪で森雅樹(G)とともにEGO-WRAPPIN'を結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェリー」がロングヒットを記録し、その名を全国に知らしめた。またEGO-WRAPPIN'の活動と並行してさまざまなアーティストの楽曲にゲスト参加し、日本のポピュラーミュージックシーンを代表するボーカリストとして高い評価を得る。2007年には、自身の作家性を押し出した1stソロアルバム「ソレイユ」を発表。EGO-WRAPPIN'とは異なる魅力を打ち出した。2015年1月に約7年ぶりのソロアルバム「窓景」を発表。