いろいろな人と関わっていくことが刺激になる

──このシングルはディレクターをはじめ制作陣との二人三脚体制で誕生した作品になりますが、制作現場はどんな様子でしたか？

今回のディレクターと一緒に曲を作るのは初めてだったんですけど、本気で音楽が好きだから制作をやってるっていうのが伝わってくるので、気持ちと気持ちのぶつかりあいでした。ディレクション中に言われた「こんな気持ちで歌って」ってリクエストも感覚的だけどわかりやすく、共感できるところがありましたね。

──制作体制という点で、「中ノ森BANDのときと違う」と感じる部分はどんなところですか？

当たり前ですけど、メンバーがいないっていうところですね。バンドはみんなのセンスや知識を1つにしてサウンドを構築していくものだと思うんですよ。中ノ森BANDの作品はバンドがあって初めてできるもので、ソロだと外部のアレンジャーさんやプロデューサーさんとのやり取りはあっても濃さやセンス、責任感は自分の占める部分が多いんです。そういう意味では全然違いますね。

──率直に、中ノ森さんにとってバンドとソロのどちらが自分に合ってると感じていますか？

1人でいろいろな人と関わって、新しい技術や引き出しを増やしていくことに刺激を感じますね。今回のようにディレクターによって自分から出てくるものが変わるってことを私はすごく楽しみにしていて。「こんな声が出せるんだ！」「こういう歌も自分は歌えるんだ！」みたいに、その人のパワーが新たな私を引き出してくれるというか。

自分のできることをどんどんやっていきたい

──いろいろな人から刺激を受けて、それを自分の歌やパフォーマンスに反映していくことを繰り返し、自分の力量を上げていきたいって思っている？

自分のできることをどんどんやっていきたいとは思います。そうすれば自分の幅が広がる気がしますね。だからこそプロデューサーさんなりディレクターさんっていうのはそれをどういう形で広げてくれるのかってところがすごく重要で。

──活動を続けて、将来的に自分はこういうアーティストになりたいといったイメージはありますか？

うーん……アーティスト像を頭の中で変に「こう」って決めてしまわないで、真摯に音楽に向き合っていく、関わっていくことで将来の自分が自然に作られていくんじゃないかなって思います。

──具体的なイメージを持たない、と。

そうですね。今回FlyingDogさんとご縁があり、ソロでメジャーデビューというお話をいただきました。ほかにもインディーズの事務所に所属して楽曲提供や制作、コーラスやCMソングを歌ったりもしていて。そこで初めて「音楽ってこんなにたくさんやれることがあるんだ！」って思いました。前はそういうことを知らないまま、ただ真ん中で歌うことだけでしたし。音楽とのいろいろな関わり方にやっと気付けたんです。

──実際に体験しないとわからないことがほとんどですよね。

今こうやって東京にいて取材をしてもらっていて言うのもそうですけど、当時の自分にしてみたら今の状況は「こうなりたい」「なりたくない」とか以前に「あ、今こんなことしてる。人生何があるかわからないな」っていうことだらけで。だから頭で考えすぎず、1秒1秒を真摯に取り組んでいけたらなあって。昔は「武道館に立って」とかいろいろあったんですけど（笑）。

──今作の「Get the glory」に中ノ森さんが込めた「シンプルでありたい」っていうメッセージともリンクしてますね。

そうですね。過去に「自分のプランと違う」って感じたときの悲しみ、屈辱……いろんなものが沸き起こったことがあったんです。だからものすごく先のことよりも目の前のこと、例えば「まずは何週間か先のライブをどう完成させるか考えよう！」っていう方向にシフトしたんですよね。