仲村宗悟が11月18日に初の配信シングル「Oh No!!」をリリースした。
10月30日でアーティストデビュー1周年を迎えた仲村が「今、歌いたい曲」という意志を持って自ら作詞作曲を手がけた本作。コロナ禍による鬱屈したムードを吹き飛ばすように、「もっと本能のままに生きてもいいんじゃない?」というメッセージをノリのいいファンクサウンドに乗せた1曲となっている。
来年2月には、テレビアニメ「スケートリーディング☆スターズ」のエンディング主題歌を表題曲とした3rdシングル「JUMP」の発売も控える仲村。彼に「Oh No!!」に込めた思いやレコーディング時のエピソードを聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 山口真由子
バンド編成ならではの一体感
──仲村さんは10月30日にアーティストデビュー1周年を迎えました。当日には生配信イベント「仲村宗悟 デビュー1周年記念生配信イベント」が開催されましたね。
はい。ファンの皆さんに直接会うのは難しいけど、せっかくの1周年だから何かやりたいよねということで配信イベントをやらせていただくことになりました。当日はライブハウスからの配信で、トークに加えて生ライブもして。昔はライブハウスに立っていたので、改めてライブハウスで歌うのはいいなと思いました。しかもバンドセットだったので、その一体感をひさしぶりに味わえたのも楽しかったですね。緊張はほとんどしなかったですし、やっている間にスイッチが入っちゃって、客席にいないはずのお客さんが見えたりもして。ただ、「imitation」でめちゃめちゃ歌詞間違えましたけど(笑)。
──歌詞を間違えるのはけっこう珍しいことだとライブ中に発言されていましたよね。
そうですね。しかも自分で書いた曲だったので、「え!?」みたいな(笑)。でも、イベント終了後にハッシュタグをたどってファンの方のコメントを見ていたら、皆さん喜んでくださっていたので、それはすごくよかったなと思いました。何より僕自身、本当に楽しかったですからね。4曲じゃ全然足りなくて、もっと歌いたくなるくらいテンションが上がってました。
──今年はコロナの影響でなかなかライブができない状況でしたから、ステージ上で歌うことへの欲求が高まっていたところもあったんでしょうね。
本当にそう思います。ライブへの思いがより強くなりました。実はアーティストデビュー1周年のタイミングに合わせて1stライブツアーを開催しようという話もありましたからね。
──そうだったんですか。だったらなおさらですよね。
でもそこに関しては、世の中がまだまだ大変な状況なので、急ぐ必要もないんじゃないかなという気持ちもあって。来るべき機会まで、皆さんに会いたいという思いを温めて、なんの気兼ねもなくみんなで喜び合える1stライブを改めてできればいいなと思います。それに代わるものとして今回配信イベントができて、楽しい時間を皆さんと共有できたことがすごくうれしかったです。
今書きたい歌詞、今書きたい曲
──配信イベントでは仲村さんが作詞作曲を手がけた新曲「Oh No!!」のリリースが発表され、ライブではいち早く披露もされていましたね。来年2月10日には、1月から始まるテレビアニメ「スケートリーディング☆スターズ」のエンディング主題歌「JUMP」を表題曲とした3rdシングルのリリースが決定しています。まさかその前に新曲が届くことになるとは。ファンの方にとってはうれしい驚きだったんじゃないでしょうか。
「カラフル」(2020年3月リリースの2ndシングル)から「JUMP」(2021年2月リリースの3rdシングル)まで、リリースのスパンがちょっと開きすぎじゃないかなと思ったんです。なので間に、配信リリースするのはどうかなという話になって。今はもう配信リリースという形も世の中にしっかり浸透してますからね。僕としてもそこに対して「CDじゃないとダメ」みたいなこだわりは一切なかったです。「だったら出そう!」ということになり、そこですぐ新曲を作ったんですよね。
──配信イベント内では、「今自分が歌いたい曲を作った」とおっしゃってましたね。
はい。今書きたい歌詞、今書きたい曲を作らせてもらいました。夏頃に自宅にいなければならない期間があって。この曲はその期間にガーッとものすごいスピードで書き上げました。世界が大変な状況になってしまった今だからこそ生まれた曲なんじゃないかなとは思いますね。僕が書いた曲に対してアレンジをしてもらい、レコーディングもポンポンと進んだ結果、このタイミングでリリースできることになりました。このスピード感はまさに配信ならではですよね。曲をスピーディに届けるという意味で配信はいい手段だなと改めて感じました。
──具体的にはどんな流れで曲作りが進んでいったのでしょう?
まず、大元になるイントロなどのギターフレーズ自体は数カ月前からあって、「お、これはちょっとファンクな曲が作れそうだぞ」みたいな手応えがあったんです。ただ、できた当初にメロを乗せるチャレンジを何回かしたのですが、そこではうまくいかなかったのでちょっと保留にしておいたんです。そのあと、自宅にいなきゃいけない期間に、そのフレーズをなんとなく弾いてみたところ、メロディがバーッと浮かんできて。そこからはもう歌詞も含めて一気に最後まで作れた感じでしたね。
我慢しなくていい
──歌詞に関してはどんなイメージで書いていったんですか?
サビのメロが出てきたときになんとなく“Oh No!!”という言葉が浮かんできたので、それをタイトルにしたうえで、歌詞に関してもそこから広げていきました。「そっか。俺は今、“Oh No!!”と思っているんだな」みたいな感じで(笑)。
──無意識に“Oh No!!”と叫びたくなってしまうような精神状態だった、みたいな。
そうそう。要は今っていろんな人がさまざまなストレスを抱え、それを我慢している状況が世界中で起きているわけじゃないですか。そこで生まれる感情みたいなものが自然と出たのかもしれないです。ただ、そんな状況の中にいたとしても物事には決して我慢しなくていいものもあるんじゃないかなと僕は思ったんです。例えば好きなものを好きと発信することであったりとか。それはコロナ禍であろうがあるまいが我慢する必要はない。僕自身、せっかくアーティストとしてデビューさせてもらったわけだから、自分の言いたいことを我慢せず、歌詞や曲として発信していくべきだと思っています。
──少しシニカルな視点を交えて紡がれたこの曲の歌詞からは、“もう少し本能のままに生きてもいいんじゃない?”っていうメッセージが感じられますよね。
そうですね。人間が「成功したい、愛されたい、愛したい」といったことを本能的に願うのは決してダメではないはずですから。とはいえ、一方ではその本能を理性で制御できることも人間の美しさだと思うんです。だって、何かを壊したいっていう暴力的な本能のままに行動してたら、それはもう犯罪になってしまうわけですから(笑)。
──要はバランスということなんでしょうね。本能だけで生きることはできないし、かといってそれを制御しすぎたらつまらない人生になってしまう可能性もあるという。
結局、人生を天国にするか地獄にするかは自分次第ですから。そのバランスは自分で選べばいいよってことですよね。考え方次第で地獄だと思っていた状況を天国に逆転させることもできる。ただ、自分で選んだことにはそれ相応の責任が乗っかってくるけどね、という話です。今回の歌詞は自分自身に言い聞かせている部分もあると思いますね。
──すごくパワフルでポジティブに見える仲村さんも、人生を地獄のように感じてしまうこともあるんですか?
全然ありますよ。コロナ禍でも感じるし、そうじゃない部分でもちょくちょく感じますね。そうなったとき僕の場合は1回とことん落ち込むんですよ。眠れなくなるくらいまで、自分のことをとことん考える。そうすると、気持ちを切り替えて、前に足を踏み出そうという思考になるんですよね。それは沖縄で言うところの“なんくるないさー”精神なのかもしれないですけど(笑)。
──2ndシングルに収録されていた「imitation」にも「どうしちゃったっていいや」というフレーズがありましたよね。もっと言うと、あの曲も自分を押し殺して生きることと本能のおもむくままに生きることの狭間で揺れ動く内容でした。
あー確かにそうですね。覚えていただいていてありがとうございます! 結局、そういうテーマが自分にとっては大事なことなんでしょうね。根底にずっとあるテーマというか。それが今回の曲でも自然と出たのかもしれないです。
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90年代ファンクと最新の音との融合