NakamuraEmi|いくつもの出会いの中で、少しだけ広く世界を見て

自分自身を貫けばよかったんだな

──Emiさんの以前の音楽スタイルは学生時代と同じく歌も八方美人だったそうで、音楽の中でこれだけ遠慮なく言葉を発する今があるのが意外です。

二十代後半まではホントに愛だの恋だのがメインで、よくわかってもいないのにそういう歌を書いたりしていました。「人に感動してもらいたいです!」って言いながら音楽をやっていたので(笑)。簡単に「愛」という言葉を使ったりしてたんです。

──お話を聞いていると、そういう人って周りの友達には言えない本音を吐き出すために曲を書くパターンに行きそうですけどね。そういう始まりじゃなかったんですね。

最初はそこにすら行けてなかったんです。人に嫌われずに生きることが当たり前になっちゃってたので。自分は何に対しても自信がなかったんですけど、ちょっと歌を褒められたから、それがうれしくて歌を歌い始めて曲を書いていたので、人に嫌われない、好かれたいための歌詞だったんだと思うんです。

NakamuraEmi

──でも今、Emiさんがおっしゃっている「ブレずに活動する」というのは、その当時考えていたこととは真逆のベクトルと言うか。

そうですね。三十代からは自分に向き合って。曲の中で強い言葉が言えるのは、自分に向かって書いてるからなんですよ。人に対してだったらまだいろんなことを考えてしまうんですけど……この強い言葉たちは自分のために書いていて、もし誰かが何か言おうとも「いや、私のことなんで」って思えるから、できているんです。これをメジャーのフィールドから広められるなんて思ってなかったというのが率直な思いです。

──そうした音楽スタイルの変化はEmiさんご自身にどういう変化をもたらしましたか?

まずは生活が変わりました。変わったと言うか、変えたんです。彼氏と長く付き合うことが多かったので、人数は少なくとも誰かがいつも隣にいてくれる感じだったんですけど、「まずは1人になろう!」と思って彼氏と別れたり、実家を出て一人暮らしをしたり、とにかく仕事をがんばったりというのを無我夢中でやり始めました。私は当たり前に幸せな環境に居過ぎたんだなと思って。「自分はどうなのか」と言うことに向き合わなくても何とかやってこれちゃったけど、まずは自分と向き合うために、そうやって。

──それは自分の日常や生き方が音楽に出るし、そういうことを歌っていかなきゃいけないと思ったからですか?

NakamuraEmi

「歌っていかなきゃ」とまでは最初は思えなかったですけど、まずは「自分がラッパーの方たちみたいにカッコいい人間になるためには」という発想で。そうやって何かを手放すと、周りから「え、こんな大事なときに彼を振っちゃったの?」とか「Emi信じられない」とか言われるんですよ。その人とは結婚の話もしていたし、そのために仕事をがんばってくれたりもしていたので、共通の友達から一気に嫌われるような状況になった。「うわ、これって中学のときと同じだ」とか一瞬よぎるんですけど。そのときに「でも私はラッパーみたいにカッコよくなりたいんだ、だから嫌われてるけどしょうがないんだ」って言い聞かせました。そうしたら、何年か活動を続けるうちに「Emiはこうしたかったんだね」ってわかってもらえるようになって。中学のときの自分の性格は問題だったけど、「自分自身を貫けばよかったんだな」って、そのときに思いました。

──2度目の自己改革だったんですね。

まさにそうです(笑)。

──自己表現や生き様を曲に刻むうえで「やっぱり自分には音楽しかないんだ」と思いましたか?

NakamuraEmi

そうですね。私はいつも葛藤とか「自分ってダメだな」っていう思いをノートに書いていて。友達にそういうことを話すタイプでもないから、それがどんどん溜まっていったんです。そんな言葉たちを見て「憧れのヒップホップのスタイルだったら……見よう見まねでもラップみたいにしゃべれば、曲にたくさん歌詞が入るんじゃないかな」と思って。もう、人に聴かせるとかじゃなく、とにかく見よう見まねで曲を作り出してからが始まりでした。デビュー前にスタジオでバイトをしていたこともあって、ヒップホップやレゲエのミュージシャンが周りにたくさんいて。地元の神奈川県厚木市にはそういう人が多かった、というのも影響しています(笑)。

やっと隅から隅まで

──今回のアルバムは「モチベーション」というファンキーな曲で締めくくられていますが、この曲もEmiさんがいろんな仕事をされてこられたからこそ書けた曲ですよね。

最後のほうは男性ばかりの職場だったので、自分が暗い顔をしていると周りにもそれが移っていく感じとか。「今日はあの先輩、すごくニコニコしてるな」と思うと自分もうれしくなったりとか。「人の笑顔というのはすごく影響力が大きいんだな」というのを感じてこの曲を書きました。この曲を作った当時はファンクとかが気になっていて、「こういうテイストにしたいな」っていうイメージがありました。プロデューサーのカワムラさんがジャズをやっていた人なのでこういう曲調もすごく得意なんですよ。「新しい風が吹くような曲を作りたい!」という気持ちで作りました。

──今回のアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」、作り終わってみてどうですか。

デビューして3作目になるんですけど、やっと隅から隅まで自分の思いを込められた気がしています。もちろん今までも思いは込めてきたんですけど、「曲に思いを込める」ということしかできていなかったんです。でも今回は音にこだわったり、作る空間だったり、作品にするまでの流れがやっとわかってきたので。その流れを踏まえて曲を構築して録音することができました。私にとってすごく大事なものができたなと思っています。今後もブレずに、自分が曲を書く原動力はいろいろと経験をして失敗したりヘコんだり、でもがんばろうって立ち直ったりっていう気持ちなので。またここから、とにかくいろんな初体験をしていくことが大事かなと思っています。

NakamuraEmi
NakamuraEmi「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」
2018年3月21日発売 / 日本コロムビア
NakamuraEmi「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」初回限定盤

初回限定盤 [CD]
2916円 / COCP-40289

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NakamuraEmi「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」通常盤

通常盤 [CD]
2916円 / COCP-40297

※初回限定盤が終了次第、通常盤に切り替わります。

NakamuraEmi「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」アナログ盤

アナログ盤 [アナログ]
4320円 / COJA-9330

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CD収録曲
  1. Don't (Album mix)
  2. N
  3. かかってこいよ
  4. 新聞
  5. 波を待つのさ
  6. 星なんて言わず
  7. 教室
  8. モチベーション
アナログ盤収録曲

SIDE A

  1. Don't (Album mix)
  2. N
  3. かかってこいよ
  4. 新聞

SIDE B

  1. 波を待つのさ
  2. 星なんて言わず
  3. 教室
  4. モチベーション

ライブ情報

NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5 ~Release Tour 2018~

2人編成公演(NakamuraEmi、カワムラヒロシ)

  • 2018年5月2日(水)群馬県 高崎clubFLEEZ
  • 2018年5月3日(木・祝)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2018年5月9日(水)石川県 金沢21世紀美術館シアター21
  • 2018年5月10日(木)新潟県 ジョイアミーア
  • 2018年5月13日(日)高知県 X-pt.
  • 2018年5月15日(火)京都府 磔磔
  • 2018年5月16日(水)兵庫県 チキンジョージ
  • 2018年5月18日(金)熊本県 熊本B.9 V2
  • 2018年5月19日(土)長崎県 DRUM Be-7
  • 2018年5月22日(火)岐阜県 岐阜club-G
  • 2018年5月23日(水)三重県 M'AXA
  • 2018年5月26日(土)広島県 Live Juke
  • 2018年5月27日(日)岡山県 DESPERADO
  • 2018年5月30日(水)福島県 郡山CLUB #9
  • 2018年5月31日(木)宮城県 仙台MACANA
  • 2018年6月2日(土)北海道 函館あうん堂ホール
  • 2018年6月3日(日)北海道 cube garden

バンド編成公演

  • 2018年6月22日(金)福岡県 DRUM Be-1
  • 2018年6月23日(土)香川県 DIME
  • 2018年6月27日(水)東京都 EX THEATER ROPPONGI
  • 2018年6月30日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2018年7月1日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
NakamuraEmi(ナカムラエミ)
NakamuraEmi
1982年生まれ、神奈川県厚木市出身。2007年に中村絵美としてアーティスト活動を開始。2011年頃、カフェやライブハウスで歌う中で出会ったヒップホップやジャズに影響を受けて、歌とフロウを行き来する現在の独特な歌唱スタイルを確立。NakamuraEmiとして新たに音楽活動を始める。2012年10月にシングル「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.1」をリリース。翌年にはミニアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.2」を発表する。2014年7月にはAugusta Campにオープニングアクトとして出演。2015年にはミニアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.3」をリリースし、7月に行われたライブでオフィスオーガスタへの所属と日本コロムビアからのメジャーデビューを発表した。1月20日にデビュー作となる1stアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST」をリリース。2017年3月に2ndアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4」を発表し、5月にはテレビアニメ「笑ゥせぇるすまんNEW」の主題歌「Don't」を担当する。2018年3月に3rdアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5」を発売し、5月からは今作のリリースを記念した全国ツアーを実施する。