中嶋ユキノ|夢を叶えた先にあった 今だからこそ歌える歌

自分で自分の歌をジャッジする

──ところで、レコーディングではボーカルについて浜田さんからアドバイスをいただくこともあるんですか?

ボーカルは水谷さんのスタジオで4テイクくらい録ったあとは、それを持ち帰ってすべて自分で編集して完成させています。浜田さんは「自分の歌は自分が一番よくわかってるはずだから」って言ってくださって。

──すごい。ご自身のジャッジなんですね。

ボーカル録りが終わってから1週間くらいは、ずっと自宅で缶詰状態でした(笑)。自分の声をずっと聴き続けているうちによくわからなくなって、この歌い方はいいのか悪いのか……みたいにどんどん細かい部分が気になってきて。難しいんですけど、“よすぎてもよくない”んですよね。何度も歌えばよくなっていくものでもないし、ピッチやリズムが合っていればいいっていう問題でもなくて。「この日は調子が悪かったんだな」と思ったら家で録り直して、編集までやります。

──それはバックコーラスや仮歌で得た経験があるからできることですよね。

そうですね。二十代のときは自分のレコーディングでもほかの方にディレクションしていただいたりしましたけど、前作から自分で自分の歌をジャッジするということを始めて。ここまで自分で歌のレコーディングや編集をしている人はシンガーソングライターではなかなかいないだろうなって自分でも思います(笑)。

極めたいことには全力

──バックコーラスではほかの方との声の重なり方も重要かと思いますが、1人で歌われるときとでは歌への向き合い方もやはり違いますか。

違いますね。バックコーラスの場合はメインボーカルの方のニュアンスや呼吸に照準を合わせていくことが大半なので。例えばアイドルの方たちのコーラスをする場合は、彼女たちの声質に合わせて自分の声色も変化させたりして。逆に浜田さんのライブでコーラスをやらせていただくときは、「コーラスではなく1人のシンガーとして、自分のパートをメインボーカルのように歌ってください」とおっしゃってくださるんです。コーラスをさせていただくアーティストさんによって、求められるものもそれぞれ違うんですよね。

──なるほど。それだけいろいろな技をお持ちなのに、ボイストレーニングに通ったことがないというのもすごい話です。

二十代のうちに発声を少し習ったくらいで、ピアノも歌もすべて独学なんです。あとは職人的に極めていく作業と言うか……自分が極めたいことには全力で。それが私にとっての音楽です。それ以外の趣味なんて何1つないのが悩みでもあって。普通のOLさんが行くような料理教室とかヨガとか、行ってみたいんですけどね(笑)。

コーラス現場で得る発見

──本当に歌の仕事がライフワークなんでしょうね。シンガーソングライターとしてデビューされても、並行してコーラスや仮歌の仕事も続けられているし。

中嶋ユキノ

「私はもうシンガーソングライターだから裏方のお仕事しません!」って感じはまったくないんです。同時に違う夢を追いかけている感じ。自分がメインボーカルで歌っていたと思いきや次の日には別のアーティストのライブにコーラスで参加していたりするので、なかなか不思議ですけど(笑)。

──さまざまなアーティストのライブに参加したり、一緒に過ごす中で得たものも大きいのでは?

それはありますね。「この人はこうやって緊張を解いているんだ」みたいなこともわかるので、自分の活動だけに集中するより精神衛生上もよくて。私は昔から心配性だし、こだわりすぎて自分のことしか見えなくなってしまいがちで、普段から「あれはどうしよう!」「これをやらなきゃ!」って不安をかき集めながら生きているタイプなので(笑)。ほかの現場に行くと「この人みたいに楽に考えればいいのか」なんて発見もあります。

──「空色のゆめ」はそんなユキノさんの人間味も、歌への思いも聴こえてくる楽曲が詰まった作品になりましたね。

とにかく歌うことが好きなんです。小さい頃から微塵の迷いもなく歌が好きで、きっとおばあちゃんになってもその思いは変わらないと思います。三十代でメジャーデビューする女性シンガーソングライターもなかなかいないと思うんですけど、ほかの歌のお仕事もやらせていただきながらの活動が今とても楽しくて。この夏は全国各地で弾き語りのインストアライブもあるので、皆さんにも一緒に楽しんでいただけたらなと思っています。

中嶋ユキノ「空色のゆめ」
2017年8月9日発売 / SME Records
中嶋ユキノ「空色のゆめ」

[CD] 3000円
SECL-2181

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収録曲
  1. Love and Dreams [作詞・作曲:中嶋ユキノ、浜田省吾]
  2. HAPPINESS [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
  3. 伝わんないと意味がない [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
  4. ビールとカーネーション [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
  5. 左手で書いたラブレター [作詞:春嵐 / 作曲:浜田省吾]
  6. STEP UP [作詞:中嶋ユキノ / 作曲:宗本康兵]
  7. 桜ひとひら [作詞:中嶋ユキノ、尾上文 / 作曲:Sin]
  8. キラキラ [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
  9. 願い文字 [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
  10. てがみ [作詞:春嵐 / 作曲:浜田省吾]
  11. 夢のとびら [作詞:中嶋ユキノ、浜田省吾 / 作曲:宗本康兵]
  12. わたしのはなし [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
中嶋ユキノ「アコースティックライブツアー『空色のゆめ旅 2017』」
  • 2017年10月1日(日)石川県 もっきりや
  • 2017年10月7日(土)福岡県 ROOMS
  • 2017年11月12日(日)北海道 札幌くう
  • 2017年11月19日(日)宮城県 SENDAI KOFFEE
  • 2017年11月26日(日)愛知県 Live DOXY
  • 2017年12月3日(日)大阪府 BananaHall
中嶋ユキノ「ワンマンライブ『空色のゆめ歌 2017』 in 日本橋三井ホール」
  • 2017年10月22日(日)東京都 日本橋三井ホール
中嶋ユキノ(ナカジマユキノ)
1984年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。2003年に音楽活動を始め、川嶋あい、水樹奈々、ももいろクローバーZなどのライブや、華原朋美、ポルノグラフィティ、久保田利伸らのレコーディングにコーラスとして参加する。並行して中森明菜、上戸彩、AAAなどへ歌詞を提供するなど作家としても活躍。2011年に「桜ひとひら」を配信リリースし、以降コンスタントに楽曲を配信する。2012年には配信楽曲を集めたアルバム「Dear...」を、2013年にはセルフプロデュースによる弾き語りアルバム「Starting Over」をリリース。2015年に浜田省吾のアルバム「Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター」に収録されている「夜はこれから」にフィーチャリングボーカルとして参加した縁で、浜田のツアーにも参加。2016年8月に浜田省吾プロデュースによるメジャーデビューアルバム「N.Y.」を発表。2017年8月に同じく浜田省吾プロデュースの2ndアルバム「空色のゆめ」をリリースした。