浜田さんはサラッと歌われてるけど
──そして今作には、浜田省吾さんとアレンジャーの水谷公生さん、作家の春嵐さんによるプロジェクト・Fairlifeの楽曲「左手で書いたラブレター」「てがみ」のカバーも収録されています。
2曲共すごく好きな曲だったんですけど、まさか自分のアルバムに収録させてもらえるとは思わなかったのでうれしいです。Fairlifeの曲を女性がカバーするとどうなるのかは歌ってみないとわからないところもあったので、浜田さんと一緒にキーを決めて、アレンジも水谷さんにお任せして今回の形になりました。
──「左手で書いたラブレター」はロマンチックで大人なムードのアレンジですが、後半には「燃え尽きて 灰となるよ」というような激しい感情が描かれていて。
そうそう。もちろん作家さんだからということもありますけど、春嵐さんが書く歌詞には自分では絶対書けないような表現がたくさんありました。それを自分の歌でどう表現するか……浜田さんはサラッと歌われてるんですけど、なかなか難しかったです。「てがみ」の歌詞もグッとくるところがあったので、ライブで皆さんの前で歌うのが楽しみで。どんな人でも共感できる歌詞なんじゃないかなと思います。
──その「てがみ」もそうですが、今作は全体を通してミニマムなアレンジやアコースティックサウンドが多いように感じました。
そうですね。きっとJ-POPの王道バラードだったら、ドラム、ベース、エレキギターにアコースティックギター、ピアノにストリングス……みたいなアレンジになると思うんですけど、そうじゃなくて、もっと1つひとつの言葉を大事に聴かせたいという思いはあります。私はリスナーとしてもパフォーマンスする側としても、いろいろ音を入れすぎない、言葉がきちんと耳に入ってくる歌が好きなので。アレンジャーとして参加してくださった水谷さんも、「歌をよりよく引き立てたい」と同じ思いを持ってくださっていたんです。
今だから歌えるメッセージソング
──「夢のとびら」は浜田省吾さんと一緒に歌詞を書かれています。制作においてはどのようなやり取りを?
スタジオで私がピアノを弾いて、浜田さんがギターを入れて、打ち込みなんかも駆使しながら2人でアルバムのデモ作りを進めていたんですけど。ある日、浜田さんがこの曲の歌詞について「こういうふうに書き換えてみたらどうかな?」と少し手直ししてくださったんです。もともと私が付けていた歌詞は「夢が叶わない、信じるのは簡単じゃない」っていうような、「叶わない、叶えたい」という一方的な気持ちの強いものだったんですね。対して浜田さんが提案してくださったのは、女性への応援歌と言うか。
──なるほど。
それから「女性がこの曲を聴いて一歩前に踏み出す勇気を持ってくれたらいいな」とか、そういうイメージで歌詞を書き直しました。ここまでもがいてきたぶん、32歳の今だから歌えるメッセージソングと言うか。いろいろな夢を追いかけている女性を後押ししてあげられるような、そんな曲になったと思います。
国語の成績が1だったなんて 絶対に言えない
──アルバムのラストを飾る「わたしのはなし」は自らをさらけ出すような歌詞で、「だから 唄うのよ」というフレーズも真っ直ぐに響く1曲になりましたね。一発録りならではの空気感や息遣いも感じられます。
歌詞は自分ではない別の主人公を立てて書くことが多いんですけど、ある方に「自分自身のことを書いてみたらどうかな?」と言っていただいて。そういえばノンフィクションの曲って書いたことないなと思って作ったのがこの曲です。私はメロディから曲を作ることが多いんですけど、この曲に関しては先に文字数も決めずにバーッと詞を書いてそのまま曲にしたら、ひと言も言葉を変えることなく仕上がって。自分の中でも新しかったですね。「国語の成績が1だったなんて 絶対に言えない」なんて書いてますけど……ホントに、「国語の成績が1なのになんで作詞家やってるの」とか、よく言われました(笑)。
──と言うか、国語で1って逆に取れない気がします(笑)。
そうなんですよ!(笑) 中3の2学期頃だったかな、高校受験を目前にして国語で1を取ってしまって。それまでずっと2だったんですけど(笑)、それで推薦入試が受からなかったり……苦い思い出です。でも「言葉で表現したい」なんて言いながら、実際は今も会話が苦手なタイプで。なんて言うか、自分が言いたいことをうまく人に伝えられないんです。相手を怒らせたくないとか揉めたくないとか思っているうちにどんどん話せなくなって、最終的に「何言ってるかわからない」とか言われちゃったりして。「わたしのはなし」にはそんな中嶋ユキノがそのまま書かれています。
──言葉やコミュニケーションに対して敏感だからこそ、考えたり、不器用になってしまうところもあるんでしょうね。
そうなのかもしれないですね。そう言えばこの曲を初めてライブで披露したとき、終わったらお客さんが5秒くらい固まっちゃって。「やっちゃったなー。こんな私自身の曲を聴いても『そうですか』みたいな感じだろうな」と思ってたんですけど、一瞬の静寂のあと、とても大きな拍手をいただけて。お客さんが「ものすごく共感できました」と伝えてくれたときに、これは確かに「わたしのはなし」なんだけど、聴いてくれた人それぞれの「わたしのはなし」になっているんだなと感激しました。
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自分で自分の歌をジャッジする
- 中嶋ユキノ「空色のゆめ」
- 2017年8月9日発売 / SME Records
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[CD] 3000円
SECL-2181
- 収録曲
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- Love and Dreams [作詞・作曲:中嶋ユキノ、浜田省吾]
- HAPPINESS [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
- 伝わんないと意味がない [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
- ビールとカーネーション [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
- 左手で書いたラブレター [作詞:春嵐 / 作曲:浜田省吾]
- STEP UP [作詞:中嶋ユキノ / 作曲:宗本康兵]
- 桜ひとひら [作詞:中嶋ユキノ、尾上文 / 作曲:Sin]
- キラキラ [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
- 願い文字 [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
- てがみ [作詞:春嵐 / 作曲:浜田省吾]
- 夢のとびら [作詞:中嶋ユキノ、浜田省吾 / 作曲:宗本康兵]
- わたしのはなし [作詞・作曲:中嶋ユキノ]
- 中嶋ユキノ「アコースティックライブツアー『空色のゆめ旅 2017』」
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- 2017年10月1日(日)石川県 もっきりや
- 2017年10月7日(土)福岡県 ROOMS
- 2017年11月12日(日)北海道 札幌くう
- 2017年11月19日(日)宮城県 SENDAI KOFFEE
- 2017年11月26日(日)愛知県 Live DOXY
- 2017年12月3日(日)大阪府 BananaHall
- 中嶋ユキノ「ワンマンライブ『空色のゆめ歌 2017』 in 日本橋三井ホール」
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- 2017年10月22日(日)東京都 日本橋三井ホール
- 中嶋ユキノ(ナカジマユキノ)
- 1984年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。2003年に音楽活動を始め、川嶋あい、水樹奈々、ももいろクローバーZなどのライブや、華原朋美、ポルノグラフィティ、久保田利伸らのレコーディングにコーラスとして参加する。並行して中森明菜、上戸彩、AAAなどへ歌詞を提供するなど作家としても活躍。2011年に「桜ひとひら」を配信リリースし、以降コンスタントに楽曲を配信する。2012年には配信楽曲を集めたアルバム「Dear...」を、2013年にはセルフプロデュースによる弾き語りアルバム「Starting Over」をリリース。2015年に浜田省吾のアルバム「Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター」に収録されている「夜はこれから」にフィーチャリングボーカルとして参加した縁で、浜田のツアーにも参加。2016年8月に浜田省吾プロデュースによるメジャーデビューアルバム「N.Y.」を発表。2017年8月に同じく浜田省吾プロデュースの2ndアルバム「空色のゆめ」をリリースした。