音楽ナタリー Power Push - 中嶋ユキノ

浜田省吾が惚れ込んだキャリア13年の“新人” 満を持してメジャーへ

音楽人生を変えた浜田省吾との出会い

──ミニアルバム「Starting Over」をリリースした時点で、活動をスタートさせてから10年が経っていたわけですよね。コーラスとしてのレコーディング参加やライブサポート、歌詞提供、さらにソロとしてもコンスタントに活動はしている状況はありながらも、どこかにもどかしい気持ちもあったのでは?

中嶋ユキノ

ありました! ソロシンガーとしてメジャーデビューしたいという夢はありながらも、もうチャンスはないんじゃないかなっていうあきらめの気持ちが大きくなっていたというか。周りの友達はみんな結婚して、子供ができているという状況の中で、自分はどうしたらいいんだろうって。音楽は続けていくにしても、どう人生設計をしていけばいいのかなって。で、そういった気持ちの中で作った「Starting Over」でやり切っちゃった感覚が強くなったので、もうここで完結かなみたいな(笑)。そのあとに何を作ればいいのか、何を歌えばいいのかがわからなくなってしまったんですよね。正直、もうシンガーソングライターにこだわらなくてもいいんじゃないかってことも考えてました。歌1本で、いろんな仕事をやっていけばいいかなって。そうしたら! そんなときにすごい出会いがあったんですよ!

──浜田省吾さんとの出会いが。

そうなんです。いろいろな迷いを抱えてる中、2015年に浜田省吾さんのアルバム(「Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター」)の「夜はこれから」という曲にフィーチャリングボーカルとして参加させていただく機会に恵まれ、そのあとのツアーもコーラスとしてご一緒できることになったんです。私としてはこの経験を通して何かを吸収すれば、また何かを形にできることもあるのかもなって漠然とした思いはあったんですね。でもまあ具体的に何をすればいいかはわからなくって。そんな状態のときに浜田さんから「アルバムを作ってみませんか?」っていうお話をいただいたんです。

──浜田さんはミニアルバム「Starting Over」を聴いて、中嶋さんをプロデュースすることを決めたそうですね。

はい。あの作品で自分なりにやり切れたからこそ、素晴らしいチャンスをいただけたんだと思います。まだ自分の中での迷いがあったからすぐにお返事はできなかったんですけど、いろいろ迷っているってことは自分の中にはまだやれるんじゃないか、どこかであきらめちゃダメなんじゃないかっていう気持ちが残っているんだろうなってことに気付いたので、最終的に「ぜひお願いします!」ってお伝えしましたね。

──そこからアルバムの制作はどのように進んだんですか?

浜田さんといろんなお話をさせていただく中で、今回は基本的に今までに出した楽曲をリメイクしてアルバムを構成しようっていうことになりました。なので、浜田さんのツアー後に形にした「朝がくれば」という1曲以外はすべて既発曲になりますね。できた時期はバラバラですけど、だいたいが20代後半にできた曲になってます。

大先輩方を前に妥協しない頑固さ

──アレンジを手がけているのは浜田さん楽曲でおなじみの水谷公生さんですね。

はい。今回収録されるのはこれまでに出してきた曲たちなのでどれもがすでにアレンジされているんですね。なので、私がそれぞれの曲をピアノと歌だけで録り直して、キーとテンポがわかる状態でまずお渡ししました。で、それをアレンジしていただく感じなんですけど、できあがったものを提示されるのではなく、浜田さんと水谷さんと私でほぼ毎日スタジオに入り、現場で一緒にアレンジしていった感じなんですよね。

──へえ、それはすごく贅沢な経験ですよね。

そうですね。「こんな感じどう?」って言われたものに対して、私が「いいと思います!」とか「それはどうなんですかねえ」とか言いながら作っていくんですよ。それはもうやりがいがある作業でしたね。

──あのお二人を前にして自分の意見を言うのはなかなか勇気が要りそうですが(笑)。

大先輩方ですからね(笑)。ただ、今回のアルバムは絶対に自分が後悔しないものを作る、そして何度も聴ける作品にするっていう自分なりの思いがあったので、そこは緊張しながらも遠慮しないで意見を言わせてもらってましたね。

スタッフ 中嶋さんは譲らないところは譲らない頑固なところがあるんで、プロデューサーもだいぶ苦労してました(笑)。

あはははは(笑)。そうですね。意見は曲げない!みたいな。そういう瞬間も多々ありました。でも、浜田さんも水谷さんも絶対に妥協しない方々なので、私のそういう性格は理解してくださったみたいで。けっこう熱くなることもありましたけど(笑)、最終的にはみんなが「イエス!」みたいな感じで終われたのでホントによかったなって思いますね。

ニューアルバム「N.Y.」2016年8月31日発売 / 3000円 / SME Records / SECL-1973
「哀余る」
収録曲
  1. September Dream
  2. 雨降りフラレ
  3. 斜め45度
  4. そばにいるから
  5. 大好きって言えば良かった
  6. 朝がくれば
  7. 助手席
  8. ALL FOR ONE
  9. 月灯り
  10. 夜はこれから(N.Y.Version)
  11. 時計の針
  12. Starting Over
  13. アイシテルの言葉
ライブ情報

中嶋ユキノ Live “November 2016 in N.Y.”
2016年11月2日(水)東京都 クラブeX
OPEN 18:30 / START 19:00

中嶋ユキノ(ナカジマユキノ)

1984年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。2003年に音楽活動を始め、川嶋あい、水樹奈々、ももいろクローバーZなどのライブや、華原朋美、ポルノグラフィティ、久保田利伸らのレコーディングにコーラスとして参加する。並行して中森明菜、上戸彩、AAAなどへ歌詞を提供するなど作家としても活躍。2011年に「桜ひとひら」を配信リリースし、以降コンスタントに楽曲を配信する。2012年には配信楽曲を集めたアルバム「Dear...」を、2013年にはセルフプロデュースによる弾き語りアルバム「Starting Over」をリリース。2015年に浜田省吾のアルバム「Journey of a Songwriter ~ 旅するソングライター」に収録されている「夜はこれから」にコーラスで参加した縁で、浜田のツアーにも参加。2016年8月に浜田省吾プロデュースによるメジャーデビューアルバム「N.Y.」を発表した。