中田裕二|さらに奥行きを増した“中田節”がここに

歌って生きものだから楽しい

──話を戻しますが、最近はヒップホップ世代の海外のシンガーソングライターをよく聴かれているということで。そのあたりは、先行配信された「ランナー」あたりにも反映されているのかなと。

中田裕二

前作に入っていた「正体」もラップ調の曲でしたけど、ラップというかラップ調の歌は好きな形の1つではあって。自由に言葉遊びをしながら、リズムをフリーな感じで拍に当てていく、そういうスタイルは海外のシンガーソングライターに多いなと思うんですよ。最近聴いている中では、ジョルジャ・スミスがそうだし、自分と同じ世代だとメイヤー・ホーソーンとかジョン・レジェンドもそうなんだけど、あの人たちはもっとルーツミュージック感が出てるかな。でもまあ、海外の人たちの歌ってだいたいがリズムにカッチリ乗せてるわけじゃないですよね。レイドバックしてるというか。あのスタイルが、僕の歌謡曲っぽさにハマるんですよ。

──なるほど。

そもそも歌謡曲も、昔の歌手の人はジャストで歌を乗せないというか、曲の原型がどうのってことじゃなくて、毎回歌うごとに雰囲気を変えていったりするんですよね。歌って生きものだから、それがすごく楽しいなって。なので、ラップそのものの影響というよりも、歌のリズム遊びみたいな感覚ですね。こういうリズム感で曲を書くと詞も変わってくるんですよ。きっちりリズムの決まってる曲は、歌詞のハメ方もきっちりしちゃう。それはそれで難しいんですけどね。

これぞ“中田節”

──その「ランナー」に続く「誰の所為」や、2発目の先行配信となった「幻を突き止めて」あたりは、王道の“中田節”とでもいいますか。ファンキーなバンドサウンドに色っぽいメロディが乗ってくる、これまでずっと中田さんの音楽に心酔してきたファンの方ならば、アルバムを聴き進めて「誰の所為」のイントロが鳴った瞬間にニヤニヤしてしまうんじゃないかと。

最近、「これは中田節ですね」ってよく言われるようになりました(笑)。こういう感じ、ほかになんてネーミングしたらいいですかね? 歌謡ソウルみたいな、そんな感じですけど。

──これらはライブのメンバーでレコーディングされてる曲ですよね。現在のバンド編成も定着してきましたが、バンドだからこそ味わえる充実感みたいなものも楽曲から伝わってきます。

中田裕二

ずっしりと大人のバンドのグルーヴを楽しんでほしいっていう曲ですね。各プレイヤーの人間性が発揮されてるし、こういう曲調への理解はすごくありますから。年齢を重ねてきてるからこそかもしれないけど、こうきたらこう返すみたいなことが自然にできちゃう人たちなんですよ。

──「レールのない列車」もこのメンバーでの曲ですけど、こちらはちょっとテイストが変わっていて、ブルースロックというか、アーシーなサウンドになっています。メロディもゆったりとした感じで。

The Rolling Stonesの音楽に一時期ハマっていて。アルバムでいうと「Let It Bleed」とか1960年代後半から1970年代前半あたりの、ああいうサウンドのバランスでやってみたかったんです。ブルースロックっぽいところで中田裕二の感じを出したらどうなるのかなあって。ギターのアレンジも、「あの時代の雰囲気でやっちゃってください」って平泉(光司)さんにお任せしました。

──ラストに入っている「終わらないこの旅を」は、千ヶ崎学さん(B)、楠均さん(Dr)というKIRINJIのリズム隊が参加している曲で、Tomi Yoさんが弾かれているピアノも美しいハートフルなバラードですね。とてもラストっぽいラスト曲なので、曲の素晴らしさはもちろん、アルバムという形へのこだわりを感じさせる曲だと思いました。

そうですね、アナログライクなポリシーでA面、B面という感覚も考えてますから。後半のほうがバンドサウンドが多めになっているので、聴く人の気分をだんだん“中田裕二色”に染めていくというか、お風呂に入ったときに最初「あっちぃ!」って思うけど、だんだんなじんできて「いい湯だな」ってなる感じというか(笑)。まあ、やっぱりアルバムで音楽を聴くっていうのはいいですよね。今回もいいアルバムができたなと思います。

中田裕二

ツアー情報

TOUR 19 "Sanctuary"[※バンド編成]
  • 2019年5月16日(木)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2019年5月18日(土)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2019年5月19日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2019年5月25日(土)福岡県 スカラエスパシオ
  • 2019年6月1日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2019年6月2日(日)静岡県 SOUND SHOWER ark
  • 2019年6月8日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2019年6月15日(土)東京都 EX THEATER ROPPONGI
  • 2019年6月22日(土)宮城県 darwin
  • 2019年6月23日(日)神奈川県 横浜ランドマークホール
  • 2019年6月30日(日)北海道 cube garden
中田裕二の謡うロマン街道(終了分は割愛)[※弾き語り]
  • 2019年5月26日(日)熊本県 早川倉庫(※SOLD OUT)
  • 2019年6月9日(日)岡山県 蔭凉寺
  • 2019年6月29日(土)北海道 函館山山頂展望台ホール クレモナ
  • 2019年7月6日(土)香川県 玉藻公園披雲閣
  • 2019年7月7日(日)愛媛県 宝厳寺 本堂