ナタリー PowerPush - 中田裕二
椿屋四重奏解散を経て本格始動 1stソロアルバムついに完成
生きてる間も、人間は生や死を繰り返してるようなものだと思う
──「endless」は、生や死や輪廻に関して歌った曲だと思うんですが。これも震災が書かせた曲だったんでしょうか?
いや、これは去年からあった曲なんです。でも今の時代に合った曲だと思って、絶対に入れようと思ってたんです。
──前からあった曲だったんですね。ということは、震災とは関係なく、中田さん自身の考えが強く反映された曲である、と。
そうですね。元々、俺は生まれ変わりを信じてるんですよ。でもやっぱり重い意味を持つようになりましたね。イベントでもこの曲は歌ってましたし……。たくさんの方が家族を亡くされたわけですけれど、そういうときにかけてあげる言葉はなかなかないと思うんです。悲しみは本人しかわからないから。でも、無駄に亡くなったとは思いたくない。生き残った者としては、形を変えて次に生まれてきてくれると思いたい。それを信じることも、生きてる者の使命だと思うし。終わりは始まりという言葉もあるし、止まっていてはダメだと思うんです。生きていかなきゃいけないし、残された者は進んでいかなきゃいけない。言葉にするのは難しいんですけれども……。
──わかります。
自分が被災したわけではないし簡単なことは言えないんですけど、少しでも救いになればということは思います。
──これは、今の時代のムードに似合う曲かもしれないけれど、同時に普遍的なことを歌ってる曲だとも思うんですよね。
確かにそうかもしれないですね。生きてる間も、人間って生や死を繰り返してるようなものだと思うんですよ。出会いと別れもそうかもしれないし。そういうサイクルの中に全てがあるのかなって思います。大事に歌いたい曲ですね。
──この曲でアルバムを終えるというやり方もあったと思うんですが、最後に「ご機嫌いかが」という軽いタッチの曲が収録されていますね。
最初は「endless」で終わろうかなとも思ったんですけれど、そういうやり方ってバンド時代に結構やってきたし、やっと1枚目なのにここでフィナーレ感を出してもなあ、って(笑)。最後は楽観的に楽しく終わって、すぐ次に行こうと。俺もすぐ次のアルバムを作ろうと思ってるんで、お客さんにも、まだまだここからスタートだということも伝えたいと思いまして。
──「endless」はすごく壮大な曲ですけれど、次の曲で「変な柄のラグ敷いてるぜ」っていう歌詞があって、日常に帰ってくるという。そこはアルバムのポイントだなって思いました。
やっぱり、完全に日常から切り離して物事を語ってもダメだなって思いますし、でかいこと言って地に足の着いてない感じじゃダメだと思うんです。両方を大事にしながらやっていきたいですね。
日本橋って、なんか俺っぽいかなって(笑)
──わかりました。ちなみに次の動きももう見えているんですか?
そうですね。今はライブをやるにしても曲が足りないので、曲を作って歌っていくというのを、どんどんやっていきたいと思ってます。
──12月から来年3月まで全国ツアーも決まっていますが、それをやりながら曲も作っていく?
はい。全国を回りながら曲も増えてくと思います(笑)。
──ライブはどんな感じになりそうですか?
いや、まだ全然わからないです。弾き語りはやりましたけど、ソロでツアーするのも初めてだし、バンド編成でやるとしても初めてだし。逆に実際にやってみて、どんなマジックが生まれるのかを楽しみにしてます。でも、不安というよりはめちゃめちゃ楽しみなんですよ。
──東京での会場は日本橋三井ホールですね。ここでやろうと思ったのは?
これ、最近にできたところなんですよ。俺、下町が好きなんですけど、ある日散歩してて見つけたんです。「こんなところにホールがあるんだ! やりてえ!」って言って、押さえてもらいました。中も見ずに決めましたね。日本橋って、なんか俺っぽいかなって思って(笑)。
中田裕二 - ベール
中田裕二(なかだゆうじ)
1981年生まれ。熊本県出身。2000年に宮城県仙台にて椿屋四重奏を結成する。2003年のインディーズデビュー以降、2007年にはメジャーシーンへ進出。自身はボーカル&ギターを務め、歌謡曲をベースにした新たなロックサウンドで多くの音楽ファンを獲得した。2011年1月の突然の解散発表は大きな反響を呼んだ。同年、東日本大震災直後の3月に、被災地や被災者に向けた新曲「ひかりのまち」を中田裕二名義で配信リリース。その後6月から8月にかけてカバー曲を中心に「歌」に特化したプロジェクト「SONG COMPOSITE」の全国ツアーを行い、これを機に本格的なソロ活動に入る。