ナタリー PowerPush - 流田Project

自信に満ちた3rdアルバムの魅力を解明

今回は全般的に「チャレンジしようぜ」的なノリが強かった

──これまでのカバー曲は、いわゆるエモいアレンジのものが多かっただけに、流田Projectらしくもファンキーな「もってけ!セーラーふく」にはホントにビックリしました。「黒いぞ、流田!」って(笑)。

流田 そう思ってもらえたならホントうれしいです。自分たちでアレンジしておきながら、演奏の難易度が相当高くなっちゃった曲でもあるので(笑)。例えばギターふたり(流田と穴澤)は、これまでクリーントーンでチャキチャキチャキって細かくカッティングすることがなかったんで。この曲をやることで、普段自分たちがいかにルーズにギターを弾いていたのか思い知らされました。

穴澤 レコーディングが、いいギターの練習になったよな(笑)。

桃山 ベースも原曲ってすごくスラップしやすいキーで作られてるんですけど、僕らの場合、ボーカルに合わせて結構キーを下げるんで、かなり弾きにくいポジションになるという。

流田 申し訳ない! あと、ボーカルのレコーディングもおかしかったんですよ。原曲のにぎやかな感じを残したかったから「トラックなんぼ使ってんねん」ってくらいに声を重ねてみましたし。しかも、歌詞が歌詞なんで、エンジニアさんとのやりとりは「『不利ってこたない ぷ。』の『ぷ。』の部分は前のテイクと今のテイクのどっちが良かったですかね?」「『はれってほれって』のところからもう1回歌わせてください」「『うんだかだーうんだかだーうにゃうにゃ』をもう1回ください」って感じで。なんだその会話は、という(笑)。

──リズム隊のおふたりはアルバム制作中、何か新しいチャレンジってありました?

栗川 「もってけ!~」に限らず、今回は全般的に「チャレンジしようぜ」的なノリが強かったんですよ。

インタビュー写真

桃山 うん。ベースで言うなら、初めて5弦ベースを投入してみたりしてますから。弦が1本増えると音の選択肢がオクターブレベルで広がるんで、どの曲で5弦を使うと効果的になるのか、スゲー悩みましたし。最終的には「Light My Fire」と「空想メソロギヰ」で使うことに落ち着いたんですけど、特に「Light My Fire」はあのラウドな感じにハマった気がしますね。

栗川 「空想メソロギヰ」なんかも、あそこまでメタルチックなアレンジにしたのはひとつのチャレンジですし。あんなにたくさんツーバス踏んだの、生まれて初めてちゃうかな。

流田 しかも、その「空想メソロギヰ」と「もってけ!セーラーふく」という2つのチャレンジ曲が3曲目と4曲目に並んでいるという(笑)。

栗川 個人的にあの2曲の流れは好きですね。「俺、よく叩いてるなぁ」って(笑)。

彩音とのコラボは忘年会の余興がきっかけ

──オリジナル曲でも新機軸を打ち出してますよね。書き下ろしの「departure」に加えて、彩音さんに提供した楽曲「cry out」のセルフカバーも収録している。そもそも彩音さんとコラボレートすることになったいきさつは?

流田 これが忘年会ノリという(笑)。去年の事務所の忘年会で彩音さんが余興でアニソンカバーをすることになって、そのバックバンドを僕らが担当することになったんですよ。で、そのコラボがすごく楽しくて意気投合したのもあって、オファーをいただきました。

──ちなみにその忘年会でカバーした曲って?

栗川 「ペガサス幻想」。

──余興なのに皆さんのレパートリーじゃなくて、初めてカバーする曲だったんですか?

穴澤 彩音さんが「やりたい」とおっしゃるので……。

栗川 「了解いたしました」と(笑)。

流田 しかも、彩音さんとは忘年会がほぼ初対面。その場で初めて音を合わせました(笑)。

「カッコよさ」のせいでセルフカバーに苦戦した「cry out」

──「cry out」って、今作収録のオリジナル曲「departure」や前作に収録されていたオリジナル曲とはちょっと肌合いが違いますよね。彩音さんからはどんなオファーがあったんですか?

流田 彩音さんからは「お客さんとコール&レスポンスできるフレーズが欲しい」っていうオーダーしかありませんでした。なので、サビの最初に「cry out」っていう掛け合いができるフレーズをもってきました。

栗川 曲の雰囲気が違うのは、僕らが抱いてる彩音さんに対するイメージに勝手に引っ張られたからですね。事務所の入り口に彩音さんのポスターが貼ってあるんですけど、そのポスター=彩音さんのイメージになっちゃってるから、熱いロックっていうよりは、ちょっとカッコよくしてみた、って感じですね。

流田 カッコいいもんな、あの写真。演奏も僕らが担当させてもらってるんですけど、やっぱりその写真のイメージから、フレーズ1つひとつをカッコよくしてみましたし。まあ僕ら自身ビックリしたんですけどね、「こんなカッコいい感じの曲を書いたり、カッコいいプレイをしたりすることができるのか!」って。

穴澤 「カッコいい」しか言ってないやん!

──ですね(笑)。その「カッコよさ」って具体的にはどんなものなんですか?

流田 流田用のオリジナルよりも詞やメロディはシリアスでクールな感じにしてますし、演奏にしてもいつもの流田みたいな、ロックっぽいラフさはできるだけ抑えるようにはしてます。

栗川 ドラムに関して言えば「流田のときよりちょっとキレイに叩こう」みたいな(笑)。すごく意識したわけではないものの、あとで聴いてみたら、無意識のうちにパワフルにガシャーンとは叩かずに、キレイに太鼓やシンバルの音を響かせようとしてましたね。

穴澤 確かに。楽曲自体をシリアスめに作ったので、意図的に合わせたわけではないんだけど、自然とギタープレイも曲のノリに応じたものに変わった感じはあります。

桃山 ベースもそうかな。「流田でやるときはここには音を入れないな」っていうフレーズも弾いてみたり、ちょっと手数を多くしてカッコよくするというか。

栗川 結局「カッコいい」しか言ってない(笑)。

流田 そして、その「カッコよさ」のせいでセルフカバーするのに苦戦するという(笑)。彩音さんバージョンだからこそカッコよくしたものの、それを流田がやってもちょっと恥ずかしい感じになるから、アレンジには結構悩んだんですよ。

栗川 それでなくても僕ら、彩音さんの「cry out」を完璧に弾けちゃうんで。

──世界で唯一、彩音さんバージョンのバックトラックの全てを知るバンドですもんね。それだけに、うっかりすると完コピしかねない(笑)。

流田 ただ、それをやっても面白くないから「いかに彩音さんバージョンから離れるか」「流田らしさを出すか」っていうところには力を入れました。

穴澤 実際、Aメロやギターソロの構成が全然違う、別バージョンになったよな。

流田 ソロのシンガーさんが歌うのとは違う、バンドらしい泥臭さや一体感のあるアレンジにはなりましたね。

ニューアルバム「流田PPP」/ 2012年8月8日発売 / 2625円 / ジェネオン・ユニバーサル / GNCA-1334

CD収録曲
  1. Light My Fire[「灼眼のシャナIII -Final-」オープニングテーマ]
  2. oath sign[「Fate/Zero」オープニングテーマ]
  3. 空想メソロギヰ[「未来日記」オープニングテーマ]
  4. もってけ!セーラーふく[「らき☆すた」オープニングテーマ]
  5. 純潔パラドックス[「BLOOD-C」エンディングテーマ]
  6. Borderland[「ヨルムンガンド」オープニングテーマ]
  7. Hacking to the Gate[「STEINS;GATE」オープニングテーマ]
  8. departure[オリジナル新曲]
  9. ハレ晴レユカイ[「涼宮ハルヒの憂鬱」エンディングテーマ]
  10. cry out[彩音提供曲セルフカバー]
  11. Butter-Fly[「デジモンアドベンチャー」オープニングテーマ]
  12. secret base ~君がくれたもの~[「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」エンディングテーマ]
流田Project(ながれだぷろじぇくと)

メンバー4人がお面を付けた、アニソンカバー覆面ロックバンド。卓越したアレンジ力でアニソンのヒットソングをバンドアレンジでカバーし、ニコニコ動画などに公開している。2011年8月現在の累計再生回数は累計1200万回以上を記録。2010年12月にfripSideの八木沼悟志がサウンドプロデュースを手掛ける1stアルバム「流田P」でメジャーデビューを果たす。翌2011年9月には2ndアルバム「流田PP」を発売。チープでコミカルな覆面姿からは想像のつかないパワフルなギターロックサウンドで、ライブツアーやイベント出演など精力的な活動を展開している。2012年8月に3rdアルバム「流田PPP」をリリース。