音楽ナタリー PowerPush - 長渕剛
命懸けのメッセージ
死に向かって全力疾走していく
──そういえば年末に「NHK紅白歌合戦」に出場することも決まりましたね(参照:第65回紅白にセカオワ、HKT48、V6、May J.、薬師丸ひろ子が初出場)。長渕さんにとって4回目。
そうだね。楽しみにしています。
──そして紅白が終わると2015年。来年の8月22日には「長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」を開催することで話題を集めています(参照:長渕剛、来年夏に富士山麓夜通し10万人ライブ)。このライブについて話していただけますか。
なんかね、もう一度ゼロから人間を信じてみたいんだよね。霊峰富士にね、10万人の人間たちとともに声を出し、叫んでみたいんだよ。星降る夏の空の向こうにそびえる世界遺産・富士に向かってさ。「死にたいように生きていきてえー!!」って。軽々しくトボトボと死に向かいたくないだろう? みんな!!
──今回のライブは規模感もすごいですよね。
あと富士でのライブの開催は、2011年の震災を我々が経験したことも大きく影響しています。もっと生きていたいのに津波に飲まれ亡くなった方々、原発事故で生きる術を失くし、抗議の声を上げながら命を絶った方々、あるいは被災してもがんばって生きておられる方々……俺は日本人として彼らに恥ずかしくないような生き方をしたい。死ぬ気で生きていきたいっていう死生観は昔からありましたが、さらにその思いが強くなりました。俺は表現者だから極端な言葉を使うけど、この最後の第4コーナーは死という方向に向かって全力疾走しようと思っています。
富士ライブは単なるお祭りじゃない
──改めて伺いますが、なぜ富士で?
富士には西側と東側とがあるんですけど、西の顔は、“母の顔”だと思います。そこには俺がライブを開催するふもとっぱらがあるのですが、過去30年の気象を見ても非常に温暖な土地で。雨風がないうえにカミナリも落ちない本当に素晴らしい場所なんですよ。行っただけで癒されるような。ところが裏側の東側は、明治時代から自衛隊の演習基地として砲弾がバンバン打ち込まれてるんです。戦争が起きた場合の実弾射撃の練習場ですね。若い兵士たちの練習の場所です。戦争を想定して本番さながらの練習をしています。西の顔を“母の顔”とすれば、東は“父の顔”。
──なるほど。
お父さんは背中に砲弾をぶち込まれて「痛い! 痛い!」って言っているけど、その裏でお母さんは「いらっしゃい」と平和に優しく迎えてくれます。そしてそんな2つの顔を持つ富士こそが日本の象徴でもあるわけです。戦中、戦後、震災後も日本は矛盾を抱えたままです。あれだけの原発事故が起きたのに、俺の地元である鹿児島では原発再稼働の動きがある。そんな日本の矛盾を富士はずっと見てきたし、富士自身にも矛盾がある。その霊峰富士にもしも10万人の声の束で「俺たちはこれでいいのかー!?」って叫んだならば、富士の山はなんと答えるだろう。それは俺だけではなく、俺たち民衆の力を合わせて叫ぶんです。俺も命懸けでライブをやるから、みんなで一緒に叫ぼう! そうじゃないと意味がない。これは単なるお祭りとは、少し意味が違うかもしれないね。けど、強烈なエンタテインメントをやるよ!
──すごいものになりそうですよね、本当に。
これで最後。もうやりません。命懸けの大規模なライブは過去にも1度やっていますけど、それも3回もやったら嘘って言われる(笑)。最初の命懸けのライブだった2004年の「ALL NIGHT LIVE IN 桜島」からはなんとか生還することができました……こういう表現をするとみんな笑うでしょう? 「またそんな大げさなこと言って」って。でも、本当に生還という感じだったんです。9時間歌い続けることがどれだけキツかったか……プレッシャーもあったしね。国や県にも協力いただいたし。だからもう3度はできません。本当に命を捧げるつもりでステージに立たないとできません。
──そうなんですね。
筋肉でプロテクトして、跳躍力も落ちてないように見えるんだけど、次の日は関節がガタガタ痛いの、やっぱ。「キテるな俺も」って思ったのは、53歳くらいからだね。富士でやるときは59歳だよ。桜島から10年。40代とはわけが違う。でもそんなことは別にいいんだよ。ヒジがどうなろうが、ヒザがどうなろうが、手足をもぎ取られようがかまわない。それは覚悟ができてる。ただ、もう命懸けはこれが最後、そういう気持ちですね。だからお前ら集まれよって(笑)。
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- ライブDVD / Blu-ray「TSUYOSHI NAGABUCHI "ARENA TOUR 2014 ALL TIME BEST" Live! one love, one heart」 / 2014年12月20日発売 / ユニバーサルミュージック
- Blu-ray / 9980円 / UPXH-20033
- DVD2枚組 / 8980円 / UPBH-20129~30
収録内容
- Opening
- 泣いてチンピラ
- 勇次
- 明日をくだせえ
- カラス
- シェリー
- 西新宿の親父の唄
- 逆流
- HOLD YOUR LAST CHANCE
- 夏祭り
- 俺らの家まで
- パークハウス701 in 1985
- 順子
- 青春
- Success
- 情熱
- 明日へ向かって
- しゃぼん玉
- RUN
- 俺の太陽
- 桜島 SAKURAJIMA
- Myself ~ Ending
特典映像
- ライブの舞台裏の“ショートムービー集”
- 配信シングル「明日へ続く道」 / 2014年12月17日配信開始
- 「明日へ続く道」
- レコチョク
長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓
2015年8月22日(土)静岡県 ふもとっぱら
START 21:00 / END 6:00
※オールナイト公演
※公演中に数回の休憩あり
長渕剛(ナガブチツヨシ)
1956年生まれ、鹿児島出身の男性シンガーソングライター。1978年にシングル「巡恋歌」でデビューを果たし、立て続けに作品を発表していく。1980年にシングル「順子」が初のチャート1位を獲得し、その名を全国に浸透させる。以後、85年「勇次」、87年「ろくなもんじゃねぇ」、88年「乾杯」「とんぼ」など、80年代を通じてヒットを連発。2003年シングル「しあわせになろうよ」でシングルの総売り上げは1000万枚を突破した。さらに12枚のオリジナルアルバムでオリコンチャート1位獲得するなど、現在までで数々の金字塔を打ち立てている。またテレビドラマや映画にも出演し、俳優としても高評価を獲得。2004年8月には桜島の荒地を開拓して作った野外会場でオールナイトライブを敢行し、日本全国から約7万5000人のファンを集めるという驚異の集客力を見せつけた。2009年3月にユニバーサルミュージックへ移籍。2011年の東日本大震災後は復興支援ラジオ番組を立ち上げたり、航空自衛隊松島基地で自衛隊員激励ライブを実施したりと復興を目的とした活動も精力的に行っている。2014年には37年のキャリアで初のオールタイムベスト「TSUYOSHI NAGABUCHI ALL TIME BEST 2014 傷つき打ちのめされても、長渕剛。」を発売。同作を携えたアリーナツアーでは、アメリカ人メンバー3人を加えた日米混成のバンドを従え、各地で公演を成功させた。また同年10月よりスタートしたラジオ番組「SCHOOL OF LOCK! Saturday 長渕LOCKS!」では「炎の生活指導担当」として、10代の悩みと全力で向かい合う姿が反響を呼んでいる。2015年8月には静岡・ふもとっぱらにて10万人を動員する野外オールナイトライブ「長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」を実施することを発表している。