デビューから1年……絆を深めたmzsrzが1stアルバム「現在地未明」リリース記念し、“生みの親”DECO*27とトーク (2/2)

DECO*27に直接質問

──2曲目の「ノイズキャンセリング」はどうですか?

大原 この曲、歌詞の中で1つだけ疑問に思っていたことがあって。DECOさんに聞いてみたいんですけど、「正義の手垢で キレイになるの」という歌詞の「正義の手垢」って、どういう意味なんですか? 対照的な言葉が合わさっているように思えて、「どういうことなんだろう?」と。

DECO*27 「正義」って1つではなくていろんな捉え方ができますよね。mzsrzのメンバーにもきっとそれぞれ正義があって、その形はみんな違うと思うんです。「正義の手垢」というのは、「自分の正義を他人にペタペタと押し付ける」という意味で使っていて、「キレイになるの」の部分は、そうやって少数派の意見をキレイに流して黙らせてしまうという意味を表しています。多数派の意見が、少数派の意見を押し殺してしまう瞬間って、SNSとかでもよく目にしますよね。そういうことを表現したのがこの歌詞です。

mzsrz ああー、なるほど!

ゆゆん 「ノイズキャンセリング」は、歌の中で主人公が変わっていくというか、いろいろな人が出てくる群像劇みたいになっていると思うので、私はパートごとにその主人公になりきって歌っていて、歌うときに自分の中で一番いい表情が出せるように意識しています。

よせい MV撮影で長い時間一緒にいましたし、「夜明け」の頃よりも緊張が解けていたので、その撮影中にメンバーの絆が深まったような気もしています。朝から撮影が続く中で、お互いのシーンを見守ったり、刺激を受けたりしたので。

──3曲目の「エコー」はどうでしょう。この曲はこれまでになかったmzsrzの音楽性ですし、イントロの部分などは90年代のオルタナロックの雰囲気も感じます。

よせい 「エコー」は「聞かせてよ」という歌詞のあとの「Woah」というコーラスをみんなで歌うのがめちゃくちゃ楽しいです。アルバムに入っているライブ映像(CD+Blu-ray盤[ライブ映像 ver.]付属のBlu-ray収録)でもバンドメンバーさんに背中を預けながら一緒に歌っていて、それも本当に楽しかったです。

作山 この曲は私たちにとって初めての地上波テレビドラマのエンディングテーマ(テレビ東京「JKからやり直すシルバープラン」)で。ドラマの世界観に寄り添って歌うことも大切にしつつ、同時にmzsrzの個性も知ってもらうために、これまでよりポップで明るい雰囲気の中で、どうやってmzsrzらしさを表現するか、聞いてくださる1人ひとりの隣で歌っているような、mzsrzがテーマにしている“ミクロミュージック”という音楽性をどう出していくかを考えました。私たちらしいけど、新たな一面も見せられた、大好きな曲です。

──次の「インベーダー」はオーディションのときに課題曲としても歌った曲ですね。

DECO*27 オーディションの際にはワンコーラスしかなかったものをアルバムのためにフルバージョンにしたんです。今回のレコーディングで本当にわかりやすくみんなの成長が見えて感慨深かったです。

よせい オーディションの頃はソロでデビューすると思っていたので、1人で「勝つぞ!」という気持ちで歌ったんですけど、今回歌っていて「1人ひとりだった私たちが、1つになって歌っている」と実感できましたね。私もあの頃のことを思い出して感激しました。

作山 個人的には、オーディションの期間はDECOさんが褒めてくださっても、自分では納得がいかなくて素直に受け取ることができなかったんですけど、アルバムのレコーディングで「インベーダー」を歌ったときに、この活動をしていて初めて褒めてくださった言葉に対して喜ぶことができて、前向きになれたような気がしました。そういう意味では、私にとって「インベーダー」の曲自体も、このレコーディング期間も、人生を左右する重要なものでした。

大原 あと、この曲ではオーディションのときにDECOさんが「この子はこのパートがいいな」と思ったところを歌割りに反映してくださったそうで。私はオーディションに応募したとき、音楽投稿アプリ「nana」を使って自分でハモリをいろいろと考えていて、今回そのパートと同じコーラスを任せてもらえてうれしかったです。

大原きらり

大原きらり

DECO*27 この曲はオーディションで歌ってもらっていて、当時からみんなのことを見てきたので、その中で「ここが得意だろう」と感じた部分を歌ってもらいました。どんなに難しいパートだとしても、みんなならmzsrzの曲としてまとめてくれるだろうという信頼感が芽生えていて、ある意味、mzsrzに曲の魅力を引き出してもらっている感覚です。

mzsrzの歌声だけでなく身の回りの音も

──アルバムに際して新しく加わった新曲などについても教えてください。中でも皆さんが特に印象的だった曲はありますか?

実果 私は「パンデモニウム」がめちゃくちゃ好きです。この曲ではDECOさんが作詞をしてくれて、椎乃味醂さんが作曲と編曲をしてくださっています。DECOさんがインタビューで「最近気になっているボカロP」として椎乃味醂さんの名前を挙げていて、それを椎乃味醂さんが見て「ボカロをやってきてよかった」と反応しているのをTwitterで見たんです。お二人とも大好きなアーティストさんなので、「これは愛で返すしかない!」と思ってめちゃくちゃがんばりました。

実果

実果

ゆゆん 私は「フェーダー」ですね。この曲は最初にデモ音源を聴いたとき、涙が止まらなかったんですよ。「DECOさん……!!」って、ずっと叫びながら泣いてました。

DECO*27 おお、うれしい。みんなmzsrzで活動をして、楽しいこともあれば、つらいこともあるだろうと思うんですけど、「フェーダー」は「こんなこと思ってない?」とみんなをイメージしながら歌詞を書きました。合っているかどうかはわからないですけどね。

よせい この曲ってサビが掛け合いになっていたり、ラストのサビで、きらりがすごいロングトーンを披露していて。それぞれのよさが改めて出ている楽曲だな、とも思います。

──アルバムのラストを飾る「Repeat」はどうでしょう?

よせい この曲は、2番のパートの譜割りが早くて難しく、私ときらりがかなり苦労しました。

──この曲は終盤に誰かの声をコラージュしたような音が入っていると思うんですが、これはメンバーのどなたかの声ですか?

よせい そうですね。「Repeat」のテーマに合わせて「身の回りの音や、日常の中でよく耳にする音を録ってきて」と言われて録音したものをDECOさんに渡したんですけど、実はそこで「イェーイ」とふざけたりしている私の声を提出した子がいて、それが採用されているんです(笑)。

DECO*27 ほかにも作ちゃん(作山由衣)が何かを書いているときの音を提出してくれたりと、みんないろんな音を送ってくれていて、3~40種類の中から曲に合うものを選んで使わせてもらいました。初めて「彼女たちの歌声以外の音」を入れている感じですね。

mzsrz

mzsrz

ファンの前でライブしたい

──このアルバムは、皆さんにとってどんな作品になったと思いますか? また、これからのmzsrzの活動での目標や、楽しみしていることについても教えてください。

よせい どの曲に対しても全力で歌ってきたので、その曲たちを1枚のアルバムとして残せることがすごくうれしいです。今まで応援してくださったファンの方々や、楽曲に携わってくださった皆さんがいないと実現しなかったことなので、感謝の気持ちでいっぱいですし、アルバムが出たら大量に買い占めて近所のいろいろな人に布教したいくらいです……(笑)。それから、実際にアルバムが出たら、応援してくださっている方々に会いに行きたいな、というのがグループの目標です。

──さまざまな場所でライブをしたい、ということですね。

よせい はい、そうです。あと個人的には、20歳になったこともあり、機会があれば、DECOさんや関わってくださった皆さんと、ごはんを食べに行って、お酒を一緒に飲んでみたいです。

DECO*27 そうだね。

大原 「現在地未明」には、グループの始まりから今までの思い出がぎゅっと詰まっていて、初めて思い入れのあるアルバムができたので、本当にうれしいです。まだファンの皆さんには全然会えていないので、聴いてくださっている人の顔を見てライブするのがこれからの目標ですね。あと、私が4月で20歳になるまで、メンバーと一緒にお酒を飲むのは待ってください……!

──「DECO*27さんとお酒を飲む会」、実現できるといいですね。

ゆゆん (笑)。私は今まで自己肯定感がすごく低かったんですけど、こうやってデビューして、今回自分たちの曲がアルバムとして形になったことが、私にとっての存在証明のように感じています。オーディションを受けた頃って、私にとっては生きる意味というのが、オーディションしかないくらいで。でも、「そんな私でも今こうやって立ってますよ」という思いが、たくさんの人に伝わればいいな、と思います。mzsrzはまだまだ始まったばかりなので、表現力や歌い方などたくさん共有して、メンバーがお互いに尊敬できるようなグループになっていきたいです。

ゆゆん

ゆゆん

実果 私は小学生ぐらいの頃から「ニンテンドー3DS」をプレーヤーにして兄と一緒にDECOさんの曲を聴いていたので、今こうやって楽曲をプロデュースしてもらえることが夢のようですし、いまだに夢だと思っている節もあります(笑)。このアルバムが出たら、やっと現実だと受け止められるというか、「今後も歌い続けたい」と言えるような気がしています。このアルバムは、そんなふうに自分の背中を押してくれるアルバムでもあるので、聴いてくれる皆さんのことも後押しできたらいいな、と思います。これからもメンバーや関わってくれる方々と、愛のあるコミュニティを作っていけたら幸せです。

作山 DECO*27さん含め、Rockwellさん、TeddyLoidさんなど豪華なアーティストが携わってくださっていることは当たり前じゃないですし、こうやってたくさんの方が協力してくれるのは、新人としての私たちの可能性を信じてくださっているからだと思うので、そのことに本当に感謝しています。いろんな方に作品を手に取ってもらいたいですね。今後の目標は、私も実際にお客さんの前で歌を届けることと、自分たちも作詞作曲やプロデュースの部分でもより深く関わっていけるように、私たちの愛をもっと込められる楽曲を作れるようになることです。

──オーディションの頃から見守ってきたDECO*27さんはいかがでしょう?

DECO*27 今回みんなのおかげでこの曲たちが生まれてアルバムができましたし、このアルバムを聴いてくれたら、mzsrzの魅力が伝わるのかな、と思っています。これからも1曲ごとにワクワクできるような、何かに挑戦してみようと思えるような曲を作っていきたいですし、彼女たちが持っているポテンシャルはまだまだあると思うので、これからの活動の中で、それが見られることを楽しみにしています。

mzsrz

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プロフィール

mzsrz(ミズシラズ)

エイベックスとテレビ東京による次世代オーディション「ヨルヤン」を勝ち抜いたボーカリスト5人組。コンセプトは「見ず知らずだった私たちから、まだ見ず知らずのアナタへ」。音楽プロデューサーにDECO*27を迎えた配信シングル「夜明け」で2021年4月にデビューを果たし、2022年3月に1stアルバム「現在地未明」をリリースした。

DECO*27(デコニーナ)

アーティストでありながら他ミュージシャンのさまざまな楽曲の作詞、作曲を手がけるプロデューサー。ロックやエレクロニックをベースにジャンルレスなミクスチャーサウンドとポップでキャッチーなメロディ、さらに“愛”や“恋”といった万人が持つ感情を表現した独特な言葉遊びが10~20代の支持を得ている。2008年10月よりVOCALOIDを使用した作品を動画共有サイトに投稿開始。これまで公開されたDECO*27の楽曲の関連動画を含む総再生回数は10億を超える。また、Hey! Say! JUMP、まふまふ、Ado、浦島坂田船、すとぷり、湊あくあ、江口拓也、柴咲コウといったアーティスト、「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」やMILGRAM -ミルグラム-の楽曲プロデュースと並行して、活動の原点であるVOCALOID楽曲を発表し続けている。2019年に始動したエイベックスとテレビ東京によるオーディション番組「ヨルヤン」で審査員を担当し、番組発の5人組ユニット・mzsrzの音楽プロデューサーも務める。