最高のウンコ出そうよ
──村本さんは普段からMy Hair is Badの曲を聴かれているそうですね。
村本 そうですね。僕はMy Hair is Badの「熱狂を終え」(2017年11月発売のアルバム「mothers」収録)がすごく好きなんです。自分のテンションを上げたいときに聴いてます。音楽とはそうやって自然に付き合っていきたいんですよね。今回の作品でハマったのは「微熱」だな。今「かわいいな」って思ってる女の子がいるんで、その気持ちとダブりました。
──普段ほかにはどんな音楽を聴かれるんですか?
村本 自分を鼓舞するときにはエミネム、ロマンチックな気分のときはノラ・ジョーンズ。あとはそのとき見てる風景にハマりそうな映画のサントラとか。そんな感じです。
椎木 村本さんはすごく音楽が好きな人。初めて飲みに連れて行ってもらったのも、ジャズバーでしたし。ジャズの生演奏の魅力とか、制作論とか、話してくれました。
村本 そんな大したことは話してないですよ。だって自分の場合、表現するっていうのはウンコみたいなもの。毎回ウンコ出してる。
椎木 ジャズのきれいなピアノが鳴ってる中で「最高のウンコ出そうよ」って、おっしゃってましたね。
村本 俺のやってることなんて、所詮は排泄。それを居酒屋でやるのか、Twitterでやるのか。ハロウィンの若者も、ただ意味もなく撒き散らしてるだけの排泄だよね。でもそういう排泄が素敵な音楽や面白い何かだったら、人はそれを芸術と呼ぶ。俺はもうウンコを出さざるを得ない、と言うか出てしまった感覚。椎木くんもそうなんじゃない? 椎木くんを殺すには、排泄させないように口をガムテープでふさぐしかない。
椎木 「自分の出したウンコが大好き。それが俺らなんだ」って熱弁されてましたよね。確かに、自分の歌詞を改めて読むのって、自分で勝手に出したウンコを見て喜んでるようなものだなって納得しました。
──椎木さんはご自身のライブを見直したり、過去の作品を聴いたりはするんですか?
椎木 ライブ映像はほとんど観ないです。まさに自分がウンコしているところを観るようなもので、恥ずかしい。
村本 わかる。そんなのあとで振り返りたくはない。
風船がパンって割れる
──昨年リリースされたアルバム「mothers」は、「いつか結婚しても」のような新しいタイプのバラードが大きな転機になったり、全体的に歌詞もポジティブなエネルギーが増したり、My Hair is Badのネクストレベルを示す作品だったと思います。今はどのようなモードですか?
椎木 ライブのキャパが大きくなって、書きたい曲も変わってきたんです。My Hair is Badの大きな特徴だった赤裸々なラブソングみたいなものを、無理やり書き続けても仕方ないなって。僕も今大きな恋愛をしてるわけではないですし。昔だったら5曲とも等身大のラブソングになっていたと思うけど、今回はそうじゃない曲が中心です。ラブソングも、フォーカスがちょっと遠目になってますね。また新しいMy Hair is Badの入り口になっている作品だと思います。
──今作はこれまでより腰が据わっている印象で、すさまじいエネルギーを感じました。
椎木 スタジオもマスタリングのパターンも変えて作ったんです。今までは自分の頭の中にあった“もっと挑戦してみたいこと”の答えがわからなかったし、明らかにそれを形にする力がなかった。そのことに気付かされたのが「mothers」で、そこから勉強して、ようやく少しだけできるようになったと思います。
村本 「白黒つけるのは 何色の紙に書けばいい?」っていう「裸」の歌詞、いいよね。これ、どういうタイミングで思い付くの? 「絶対この人クスリやってんな」みたいな歌詞(笑)。
椎木 ははは(笑)。
村本 それくらいハイなときに出た言葉なんじゃないかなって。方向性としてはお笑いで言うと、スタンダップコメディみたいな。パっと笑わすんじゃなくて、文字を見ながらずっと酒飲めるみたいな言葉の妙。
椎木 村本さんが「THE SECRET COMEDY SHOW」(村本が週1回配信している音声メールマガジン)で話されていた、お寿司屋さんの風船がパンって割れる感覚に近いかもしれません。1日かかって4行も書けないくらい苦しいときもあれば、30分で20行書く日もある。
村本 ああ、なるほどね。「THE SECRET COMEDY SHOW」を毎回聞いてくれてる知り合いは、椎木くんとヒロシさんだけ。けっこう2人は似てる(笑)。
椎木 自己啓発っぽい感じでいつも聴いてます。
──お寿司屋さんの風船が割れた話ってなんですか?
村本 富山の寿司屋に変わったおっさんがいて、その人は寿司が好きすぎるんですよ。海外に行って、日本より劣る現地のスーパーの魚でどこまでおいしい寿司が握れるか勝負しに旅に出るような人で。で、その人がアメリカのバーかどこかで、やんちゃなやつらに絡まれたらしいんです。普通はそういうときって、しばかれるんじゃないかとか、金を奪われるんじゃないかって思うじゃないですか。でもおっさんはその瞬間に、新しい寿司のアイデアが一気に出てきたらしいんです。それを俺は風船に例えて話したんですけど。年中寿司のことを考えてるから、どこかで謎のピースがはまった瞬間、一気にアイデアがあふれ出てくる。おっさんには寿司しかないんですよ。ほかに趣味もなくて、海外に行ってるのに観光したいわけでもない。椎木くんもそんな感じがあるよね。
椎木 音楽のほかに趣味とかないですね。さすがにそういう人たちに絡まれたときにアイデアが出てくるかはわからないですけど、世間でよく言われる「アイデアが降りてくる」みたいなことじゃなくて、風船が割れてジワッと何かが出てきて、どんどんあふれ出てくるような感覚です。
村本 アイデアの我慢汁は常に出てるんだね。で、意図的に彼女と射精するんじゃなくて、夢精しちゃうみたいな。常にそのことは頭にあるから、ある瞬間にあふれ出てくる。椎木くんはお客さんが増えるとオーディエンスと喧嘩しそうだね。自分の思いを伝えたいけど、その通りには受け取ってもらえないことも、誤解されることも多くて。
椎木 いえ、喧嘩はしないですね。だったら自分が受け取ってもらえるように書かなきゃいけないのかなって、迷走します。
村本 そういう謙虚さも大切だけどね。
椎木 でもやっぱり、そこをいつも村本さんにチューニングしてもらってる感じです。もっとわがままであれって。
モテてるはずなのにモテない感じ
──椎木さんにとって、風船が割れるのは具体的にどういうときなんですか?
椎木 女の子にヤキモチを焼いてるときとか、自分で自分をコントロールできないときは割れまくってるような気がします。まずTwitterで発散して、そこから曲にしますね。
村本 椎木くんはモテてるはずなのにモテない感じがするよね。かわいいファンもいっぱいいるし、ヤリチンにもなれるのに。この田舎者の童貞感はなんだろう?(笑)
椎木 なかなか弾けられなくて、その風船はなかなか割れないんです。
村本 そこは俺、嗅覚でわかるんだよね。椎木くんは遊んでない。
椎木 村本さんはそんなに遊んでるんですか?
村本 最初は食い付かれるけど、「なんだこのややこしい男」って、最終的にはフラれるね。
椎木 ははは(笑)。
──今日は新作「hadaka e.p.」について話していただきましたが、その新作を携えて、12月にアリーナ公演を含むマイヘア史上最大規模のツアーが始まりますね。
椎木 不安ですね。でも日本武道館も同じ気持ちだったし、絶対に自分たちのためになると思うので、全身全霊でやります。
村本 僕は後ろでこっそり、1人で観てます。椎木くんには言わずに(笑)。
- ツアー情報
My Hair is Bad presents ファンタスティックホームランツアー -
- 2018年12月7日(金) 北海道 Zepp Sapporo
- 2018年12月16日(日) 沖縄県 桜坂セントラル
- 2019年2月28日(木) 福岡県 Zepp Fukuoka
- 2019年3月12日(火) 島根県 松江 AZTiC canova
- 2019年3月14日(木) 鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2019年3月23日(土) 大阪府 大阪城ホール
- 2019年3月24日(日) 大阪府 大阪城ホール
- 2019年4月3日(水) 和歌山県 和歌山CLUB GATE
- 2019年4月9日(火) 富山県 Soul Power
- 2019年4月16日(火) 神奈川県 横浜アリーナ
- 2019年4月17日(水) 神奈川県 横浜アリーナ
- 2019年4月21日(日) 新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター