2020年に結成10周年を迎えたMAN WITH A MISSIONが、7月15日にベストアルバム「MAN WITH A "BEST" MISSION」をリリースした。
ベストアルバムにはヒットシングル曲を中心に、ライブでもおなじみの楽曲や新曲「Change the World」「Rock Kingdom feat. 布袋寅泰」など、メンバーが選曲した全17曲が収録される。音楽ナタリーではバンドの結成10周年、そしてベストアルバム発売を記念して特別企画「Jean-Ken Johnnyが選ぶベストニュース10」を実施。2010年から現在まで音楽ナタリーに掲載されたMAN WITH A MISSIONに関する膨大なニュースの中から、特に印象深い記事をJean-Ken Johnny(G, Vo, Raps)に10本選んでもらい、時系列順に当時の心境を振り返ってもらった。なおJean-Ken Johnnyの発言は編集部で日本語に翻訳している。
取材・文 / 田山雄士
2013年
2ndフルアルバム「MASH UP THE WORLD」で
「CDショップ大賞」受賞
──まずは2013年に2ndフルアルバム「MASH UP THE WORLD」で「CDショップ大賞」を受賞したときのニュースですね。
いやー、これは素直にうれしかったです。作品を売ってくださっている現場であるCDショップの方々が選んでくれたというのは、自分たちにとってものすごく大きなことで。バンドとしてこういった賞をいただくのも初めてでしたし、記憶に濃く残っていますね。
──マンウィズはデビュー当初、まずはそのビジュアルの異色さが大きく目立っていたかと思いますが、ここで1つ確かな評価を得られたのは大きかったですか?
そうですね。どうしても我々はまず見た目が注目されますので。だけど、そこに異論はないですよ。「お前ら自身がそれを否定してどうすんだ」という感じですから(笑)。“謎のオオカミ人間バンド”というところから始まって、徐々に実のある音楽として評価されて、ここで「CDショップ大賞」に輝けたのは自信にもなったし、本当にありがたかったです。このとき、準大賞はきゃりーぱみゅぱみゅさんだったんですよね! オオカミたちが彼女のようなスターを抑えて大賞とは、改めて快挙だなと思いました。
──ちなみに、ニュースのタイトルに「夢はグラミー!?」とあるのは、当日の囲み取材でグラミー賞への意欲を語ったからだそうで。
ネタみたいに取られてしまったかもしれないですけど、これは本気で言っていますよ!(笑) グラミーで話題になってきたロックミュージックに僕らは強く影響を受けていますから。例えば、自分が大好きなThe Smashing Pumpkinsも半端じゃないくらい何度もノミネートされていますしね。そう考えると、やっぱり「ゆくゆくは我々も……」と憧れてしまいます。11年目以降に果たしたい夢ですね。
2013年
ソニー・ミュージックレコーズに移籍、
本格的に海外進出へ
──「CDショップ大賞」の受賞から約半年後、MAN WITH A MISSIONはソニー・ミュージックレコーズに移籍しました。その第1弾作品としてリリースされたのが、10-FEETのTAKUMAさんをゲストに迎えたシングル「database feat. TAKUMA(10-FEET)」ですね。
レコード会社の移籍は、大きな分岐点の1つでしたね。ソニーへ移ることによって、海外での展開を色濃くやっていく方針になったので。ほかのアーティストとのコラボもTAKUMAさんとの「database」が初めてで、ここから意欲的に取り組むようになりました。コラボではマンウィズのことを考えるというよりは、大きな枠組みでの音楽シーン、バンドシーンのことを意識していて、その中でどれだけ面白いクロスオーバーができるかが大切だと思っています。
──ニュースが出た際には「海外デノ活動ヲ念頭二大キナ野望ト共二下シタ決断デース」「私奴モ私生活デハソニー製品ニオ世話ニナリッパナシ、プレステ最高」と、ユーモアのあるコメントをされています(笑)。
このコメント、だいぶふざけてますね(笑)。実際は本当に大きなチャレンジでしたよ。ソニー・ミュージックレコーズのレーベルとしての力だけではなく、電化製品を通して世界に知れ渡っているソニーのブランド力を意識していたのもあって、「ジャパンのソニーは世界で信頼の置ける企業だし、間違いない!」と思いながら決断したのは覚えています。バンドってこういう節目のたびに、内なる熱量を再確認しますよね。インディーズからメジャーに上がるときだったら、「メジャーをやっつけるんだ!」みたいな。ソニーでお世話になる際はそういう気概を確かめつつ、「パッと見は得体の知れない自分たちのようなバンドでも音楽的に認められて、こういった大きなレーベルで勝負できるところまできたんだな」と手応えを反芻していました。
──海外に進出して、ぶち当たった壁はありましたか?
自分たちは最初から海外でやりたいという気持ちを持っていたし、世界で当たり前のように響く音楽を作りたいと純粋に思っていたんですよ。でも、実際に海外のアーティストやプロデューサーとコラボさせてもらう中で、アメリカの音楽業界が抱える現実を突きつけられて凹むことも多かったです。はっきり言ってしまうと、ロックバンドというものがコンテンツとして売れなくなっているんだろうなって。向こうで一緒に仕事をしたのはほとんどがロック畑の人たちでしたけど、みんなそこを覚悟して、ジャンルをシフトしようとしていたり、せざるを得なかったり……そういった状況を踏まえたことが向こうの人たちの楽曲作りに表れていて、言葉にせずともひしひしと伝わるんです。現場に飛び込んでみて「あっ、やっぱりそうなんだ……」と、時代性に直面した感じはありましたね。とはいえ、アメリカの流れにならって安易にシフトするのは薄っぺらいじゃないですか。
──そうですね。
だから、サウンドはものすごく悩みました。あえて何も変わらずにいるのか、それとも新しい要素を取り入れるべきなのか。変わるとすれば、その中でどういうふうに自分たちの表現をするのか考える必要があったし、もう行ったり来たりで。葛藤が激しかった時期だったと思います、この頃は。
2016年 大阪・道頓堀リバーウォークでフリーライブ開催
──続いては2016年2月に4thフルアルバム「The World's On Fire」の発売を記念して行われた大阪・道頓堀リバーウォークでのフリーライブですね。
これは単純に面白かったです。自分たちのようなだいぶ激しいサウンドを鳴らしているロックバンドが道頓堀の船の上でライブをするのはかなりレアなことですし、写真のインパクトからもわかる通り、バカさ加減がたまらないですよね。当日のとんでもない光景を見て、あのへんを何気なく歩いていた、僕らのことをよく知らないであろう大阪のおじさんが「えらい人おるけど、阪神もう優勝したんか?」と言っていたのもおかしかったです(笑)。
──川に飛び込む人がいそうな状況ですもんね。
「飛び込まないでください」とお願いしていたので、それは幸い大丈夫でした。なのに、我々はまるで煽るかのように当日「Dive」を激しく演奏したという(笑)。直前の告知にも関わらず、たくさんの人が集まってくれたのはうれしかったです(※開催の1時間前までライブを行う場所はシークレットだったが、約1万人が集結。生配信サービス「AmebaFRESH!」では約45万人が視聴した)。
──船の上でのライブはどうでした?
船の上だとけっこうグラつくのかなと思いきや、日本の技術はすごいもので、意外と安定しているんですよね。なんだかんだジャンプもできちゃうという。なので、5匹ともやりたい放題やらせてもらいました。こうやって周りをずらーっと人に囲まれた眺めも素晴らしかったな。この2年半後に行った大阪・阪神甲子園球場でのライブもそうなんですけど、ただ単純にエンタテインメントとして面白いことをやるのが好きなんですよ。それこそ、ナタリーさんにニュースで拾っていただけるようなね。やっている本人たちと観てくれる人たちが「バカだねえ」と笑えたらもう最高です!
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2016年 スキー場でライブパフォーマンス