「MUSIC NFT DAY 2023」特集|武田信幸(LITE)×DÉ DÉ MOUSEが語る、音楽NFTの可能性と未来 (3/3)

NFTに感じる、新しい表現の届け方

──ちなみに武田さんが同業のアーティストにNFTの魅力を伝えるとしたら?

武田 まずアーティスト視点で、サブスクの時代に「所有してもらう」という体験を提供できるのは大きいと思います。楽曲をリリースしてサブスクで再生される、ということのプラスアルファが生まれるというか。やっぱりNFTで作品が売れるとすごくうれしいし、ちゃんと聴いてくれてるんだなというのが伝わってくる。そのダイレクトな体験は今までなかったものだと思いますね。

武田信幸(LITE)

武田信幸(LITE)

──DÉ DÉ MOUSEさんは現時点でNFTのどういった部分に魅力を感じていますか?

DÉ DÉ MOUSE 結局、ゲームと一緒だと思うんですよ。自分が推しているアーティストの作品の評価が上がったらうれしいですよね。自分がその作品を購入して、誰かに売ったりすることでさらに価値が上がっていく。NFTはその流れが可視化できるので、新しいアートのやり方として面白いと思います。

──なるほど。

DÉ DÉ MOUSE 現代アートに対して「よくわからない」「こんなの誰でもできる」と言う人がいるけど、当たり前だと思っている価値観へのカウンターだったり、「モノの見方や考え方を別の角度から見てみようよ」というクリエイターが作品に込めた美意識や、アイデアがどう落とし込まれているかを考えるのが大切だと思うんです。それは音楽も一緒で、音楽はただ聴くものだと思っている人が多いけど、その作品がどういう過程を経て完成したのかを理解すると聴こえ方は変わる。例えばThe Beatlesの「Strawberry Fields Forever」は、まったく別の音源が曲の途中でばっさり切り替わりますよね。それを知らずにぼんやり聴くより、ある程度知識を入れて聴いたら「すげえ! こんなこともできるんだ!」という感動があると思うんです。知識や教養が1つでも増えたほうが人生は楽しくなるから、そういう意味でも音楽やアートは必要。NFTはそういったことを少しでも意識するきっかけになるんじゃないかと思っています。

──NFTを使うことで音楽という表現にアーティストが持っているビジョンや、作品のコンテキストを付加しやすくなるということですよね。アーティストは伝えたいことがより鮮明になるし、ファンも作品の楽しみ方が増えるという。

DÉ DÉ MOUSE そうですね。だからこそ「こういう応援の仕方があるよ」とか「こうすれば所有欲を満たすことができるよ」「二次流通することによって作品の価値を上げることもできるよ」という情報がリスナーにもっとわかりやすく届けられたらいいなと思いますね。

次は能天気なことやりたいよね

──Fake Creatorsは今年の「MUSIC NFT DAY」で新曲「Star Racer」をリリースするそうですね。

DÉ DÉ MOUSE Fake Creatorsはこの1年くらいドリームポップやサイケをやってきたんですね。だからファンもFake Creators=ドリームポップというイメージがあると思うんだけど、僕らは「次はこういうのが来るんでしょ?」と思われるのが腹立つから違うことをやりたくなる(笑)。それで、みんなでインドカレー屋に行ったときに「次は能天気なことやりたいよね」「トランスとかいいんじゃない?」みたいな話をして、帰ってすぐにデモを作り始めました。僕の20歳くらいの頃はトランスのブームがすごくて、少しダサいイメージもあったけど、今の20代くらいの若い子たちはリバイバルでカッコいいものとして受け入れてるし、いろんなDJの新曲を聴いてもトランスを取り入れていることが多いんです。そのあたりも意識して2ndアルバムを作っていて、「Star Racer」はそのうちの1曲です。

DÉ DÉ MOUSE

DÉ DÉ MOUSE

──もう2ndアルバムの制作に取りかかっているとは……。DÉ DÉさんの中で「Star Racer」を制作するうえで何かイメージはあったのでしょうか?

DÉ DÉ MOUSE 「Star Racer」はリスナーの音楽的なIQをどんどん下げていこうと思って作った1曲です。延々キックだけ鳴っていて、みんなの演奏がよく聴こえなくてもいいんじゃないかってくらい。前作がドリームポップを軸にした幻想的な音楽だったので、その反動もあったのかもしれないですね。

──コロナ禍も落ち着いてきましたけど、メンバーで集まったりはしたんですか?

武田 いえ、制作はこれまで通りリモートですね。

DÉ DÉ MOUSE 今回はこれまで以上にラフなやりとりで「デモができました!」「みんな演奏して!」「ミックスしました!」「終わり!」みたいな(笑)。本当に勢いだけで進めた感じです。

Fake Creatorsの2ndアルバムは……

武田 Fake Creatorsはコロナ禍に結成して、基本的には制作もリモートで進めていたので、あのインドカレー屋で食卓を囲んでみんな話せたのはよかったですよね。

DÉ DÉ MOUSE そうですね。僕が「能天気なトランスがやりたい!」と提案したときにLITEのみんなが賛同してくれるとは思わなかった(笑)。ただ当時のリバイバル的なことをやるのではなく、今っぽい要素を取り入れながら制作できたのはよかったです。

──そのインドカレー屋で話されていたアイデアは、2ndアルバムにも反映されているんですか?

DÉ DÉ MOUSE めちゃくちゃ反映されていて、今回は90年代のレイヴ的なニュアンスを打ち出したいと思っています。90'sからY2Kのダンスのサウンドを打ち出しつつ、ちゃんと後ろではロックのテクスチャーが支えているという。

──武田さんは2ndアルバムの制作はいかがですか?

武田 LITEではやらないことばかりでめっちゃ楽しいですよ。それにLITEではここまでBPMが高い曲もやらないので。

DÉ DÉ MOUSE 一番速い曲だとBPM225ですから(笑)。フェスで演奏しても盛り上がるんじゃないかな。

武田 Fake Creatorsの音楽が刺さる層も拡張できた思うので、どう展開していくのか楽しみです。

NFTを全方位から学べる1日に

──武田さんは昨年の「MUSIC NFT DAY」にトークセッションで出演されていますし、イベント全体の企画にも参加されています。今年はどんなイベントになりそうでしょうか?

武田 アーティスト側がNFTに触れる機会ってあまりないと思うんです。「気になるけど実際にどうやって取り入れたらいいんだろう?」「どういうところからリリースしているんだろう?」と思う人もいるだろうから、NFTをリリースしているアーティストの実例が見られたり、プラットフォームの人たちとコンタクトできたりするいい機会になると思います。ファンの方だけじゃなくて、アーティスト本人やその周りのスタッフにとっても有益なイベントなんじゃないかな。全方位からNFTを学ぶことができる1日になると思います。

──当日は武田さんも会場にいるんですよね。見かけたらNFTについての質問をしても?

武田 もちろん、気軽に声をかけてください(笑)。

──では最後に読者へメッセージをお願いします。

武田 Fake CreatorsではLITEやDÉ DÉ MOUSE単体のプロジェクトではできないことをやっていきたいと考えていて、その判断基準としてはエッジィことをやっていきたい。NFTはその手段だと捉えていて、結果的に「こういうことになった」という実例を作っていきたいと考えています。それによって若い世代のアーティストたちの活動に少しでもいい影響を与えられたらいいなと。

DÉ DÉ MOUSE やっぱりバンドだと全部1人でまとめなくていいからいいですね(笑)。Fake Creatorsの楽曲制作担当としては、聴けば聴くほどIQが下がる新曲「Star Racer」をチェックしてほしいので、ぜひ「MUSIC NFT DAY 2023」に来てください!

左から鈴木貴歩、武田信幸(LITE)、DÉ DÉ MOUSE。

左から鈴木貴歩、武田信幸(LITE)、DÉ DÉ MOUSE。

プロフィール

Fake Creators(フェイククリエイターズ)

LITEとDÉ DÉ MOUSEによる、個性と独創性を追求するクリエイター集団。エッジィなバンドサウンドに、ヒップホップ、ダブ、グライム、フットワーク、チル、ジャングルなどの要素を取り入れた柔軟な音楽スタイルに定評がある。2022年7月に1stシングル「Look At Me Not」をリリースし、同年11月には1stアルバム「Figure」を発表。「Fake Creators NFT PROJECT」と題したプロジェクト立ち上げ、NFTを用いた作品もリリースしている。11月5日に東京・渋谷ストリームホールで行われるイベント「MUSIC NFT DAY 2023」では、新曲「Star Racer」をリリースする。