11月5日に東京・渋谷ストリームホールでイベント「MUSIC NFT DAY 2023」が開催される。
昨年スタートした「MUSIC NFT DAY」は、Web3.0時代の音楽コミュニティの拡張と発展を目的としたイベント。一般社団法人 日本記念日協会では昨年より11月5日を「音楽NFTの日」に認定しており、「MUSIC NFT DAY」では「Music+Web3.0=Music3」をテーマに、ブロックチェーン上の1点物デジタルオーディオデータ、音楽NFTを通じたファンダムエコノミー、クリエイターエコノミーといったさまざまな音楽の新しい表現方法の認知と普及を目指した催しが多数用意されている。
音楽ナタリーでは「MUSIC NFT DAY 2023」の開催を記念し、同イベントで新曲をリリース予定のFake Creatorsから武田信幸(LITE)とDÉ DÉ MOUSEのインタビュー記事を掲載。エンタテインメントとテクノロジーを組み合わせてカルチャーの創造を目指しているParadeAll Inc.の代表で、デジタルコンテンツに明るい鈴木貴歩氏を聞き手に迎え、Fake Creators結成の経緯や、彼らが考えるNFTの魅力と可能性について語ってもらった。
取材 / 鈴木貴歩(ParadeAll Inc.)文 / 下原研二撮影 / 曽我美芽取材協力 / FS.
イベント情報
MUSIC NFT DAY 2023
2023年11月5日(日)東京都 渋谷ストリームホール
出演者
LIVE:RINNEEE(吉田凜音) / ID:Earth / Kafka
SOUND DESERT SHOWCASE:女子独身倶楽部 / 4年2組 / -SETSUNA-
TALK SESSION 1
「Web3時代の音楽エコシステムを共に作り上げていくコラボレーションツール“FRIENDSHIP. DAO”について」
登壇者:山崎和人(HIP LAND MUSIC / FRIEDNSHIP.) / 武田信幸(LITE、Fake Creators)
モデレーター:赤澤直樹(Fracton Ventures)
TALK SESSION 2
「音楽NFTプラットフォームanotherblockが描く未来」
登壇者:ジョナス・サイード(anotherblock、Head of Music)
モデレーター:鈴木貴歩(ParadeAll株式会社)
TALK SESSION 3
「日本の音楽NFTの現在地と未来」
登壇者:小南勇介(株式会社レコチョク) / Sound Desert(株式会社ゐきかた)
モデレーター:鈴木貴歩(ParadeAll株式会社)
本気で巻き込んでやろうと思ってた
──LITEとDÉ DÉ MOUSEさんはかねてから親交があったかと思いますが、2組が初めて楽曲でコラボしたのは2021年のことですよね。
武田 LITEはコロナ禍で思うようにライブができなくなったタイミングで、メンバーそれぞれの自宅から演奏を届ける「Stay Home Session」という生配信企画を始めたんです。いろんなアーティストとコラボをしたんですけど、長い付き合いのDÉ DÉさんにも声をかけさせてもらって。ライブが終わったあとの雑談の中で「面白かった」「何か一緒にやろう」という話になり、その場のノリで終わっちゃうかなと思ったんですけど、その1週間後にDÉ DÉさんからフレーズが届いたんですよ。それも気合いの入ったフレーズで、「これに楽器を乗せてもらえませんか?」と。
──DÉ DÉさんの言葉は社交辞令じゃなかったんですね。
DÉ DÉ MOUSE 僕も作品をリリースしてライブをやる、というのが活動のメインだったので、コロナ禍でそれができなくなってどうしよう?と考えていたんです。そんなときにLITEが「リモートでセッションをしよう」と声をかけてくれて。あの時期は本当に誰にも会えなかったから、みんなとつながっていたいという気持ちが強かった。LITEが社交辞令でも「一緒に何かやりましょう」と言ってくれたら、本気で巻き込んでやろうと思っていたんです(笑)。
武田 アーティスト同士で「一緒に何かやろう」と話すことはよくあるけど、実現することって少ないんですよ。でも、DÉ DÉさんと曲を作れたら絶対面白いだろうとは思っていて、そこにDÉ DÉさんから本気のパスが来たので、我々も本気で打ち返そうと(笑)。
──なるほど。「開かれている」とか「イノベイティブである」というスタンスの部分は2組に共通しているところだけれど、音楽のスタイルは全然違うじゃないですか。一緒に楽曲制作を進める中で刺激を受けた部分はありますか?
DÉ DÉ MOUSE まず僕はギターが弾けないから、弾きやすいフレーズ、弾きにくいフレーズというものがわからないんですよ。LITEとDÉ DÉ MOUSEのコラボシングルという形で2曲作ったんですけど、ミックスの仕方も僕がそれまでやってきたことと違うからとても勉強になりましたね。
──武田さんはいかがですか?
武田 まず単純に弾きにくいなとは思いました(笑)。「これ完全にタブ譜5本押さえてるじゃないですか!」みたいな。でも、同時に「DÉ DÉさんが考えるLITEはこういうフレーズを弾くんだ」という発見もあったんですよ。「確かにこういう聴こえ方をするとLITEっぽいと思ってもらえるかも」と、僕ら自身もLITEの音楽を再定義できたというか。
──DÉ DÉさんはデモを作るうえで、LITEっぽさは意識していましたか?
DÉ DÉ MOUSE 最初は僕が作ったフレーズをLITEに送って、武田くんに弾いてもらったりアレンジしてもらったりして試行錯誤していたんです。でも、自分の中で着地点がフワフワしていたからうまくいかなくて。それで「LITEにDÉ DÉ MOUSEというプロデューサー、DJ、キーボーディストがいたらどんな音になるんだろう?」というテーマを設定したんです。それは僕に寄せたテーマに言い換えると「ダンスミュージック的な要素を、いかにLITEというバンドで消化するか?」ということですね。そうすればLITEの音楽性を残しつつ、これまでにない音も出せるんじゃないかって。それが形になったのがコラボシングルとしてリリース「Samidare」と「Minatsuki Sunset」です。
LITE×DÉ DÉ MOUSE、それぞれの持ち味を融合させたユニット
──コラボシングルが2曲発表されたのち、Fake Creatorsは結成されました。それまで通りそれぞれの名義で作品をリリースするのではなく、ユニットを組もうと思われたのはなぜですか?
DÉ DÉ MOUSE 僕は「Samidare」と「Minatsuki Sunset」がすごくいい曲になったから、これはただのコラボで終わらせたくないと思ってデモをガンガン作っていたんです。
武田 DÉ DÉさんは本当に作業が早いんですよ(笑)。
DÉ DÉ MOUSE 「この2組でアルバムを1枚作れたら理想だね」と話していて。最初はみんな生演奏をする感覚でいたから、僕もバンドとして演奏してダンスミュージック的なサウンドを体現するイメージが強かった。ドラムは山本(晃紀 / Dr)くんにパッドで叩いてもらった音源を送ってもらったんだけど、打ち込みの音というかイメージの範囲を超えない音になってあまりうまくいかなかったんです。それで今日の取材場所でもあるFS.に集まって楠本(構造 / G)くんにエンジニアをやってもらってレコーディングをすることになって。10曲くらい録音してミックスも進めていた中で、LITEのマネージャーさんから「エレクトリックとバンドの要素をもっと融合させたほうがいいと思う」という意見が出てきたんです。
武田 それまではDÉ DÉさんがLITEの音楽性に寄せてくれていたんだけど、「もっとDÉ DÉさんの要素を出しましょう」という話になったんですよね。
DÉ DÉ MOUSE そうそう。僕も打ち込みを強くすると山本くんの要素が少なくなるから、どこかでそれは悪いなと思っていたんです。でも、LITEのマネージャーさんが「2組のコラボではなくて、ユニットとして作品を出すのも面白いかも」と言ってくれたから、僕としては「え、それもありなの?」という感じで(笑)。それまで作っていた曲をすべてリエディットすることになりました。それがFake Creators結成の経緯ですね。
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Fake CreatorsがNFTを選んだ理由