音楽ナタリー PowerPush - 蟲ふるう夜に
病乗り越えた先に4人が見たもの
この歌を歌うためにやらなきゃいけない“一歩”
──今回のアルバムは、完成してみてどんな作品になったと思いますか?
郁己 最近のライブは慎ちゃんがいなかったから、ギターが入ったこの音源を聴くと「足りなかったものがあるな」って思えるんです。安心できますね。
蟻 1つひとつの曲を説明すると本当に濃いんですよね。ミニアルバムだけど、ミニって言えないくらいいろんなものが詰まってて……今までと感覚がちょっと違うんですよ。視点が広くなった気がする。もっと周りを見れるようになったからできた曲たちなのかなって。
──今までは自分のことで精一杯だった?
蟻 はい。そうですね。
──なるほど。蟻さんは本当に、取材するたびに変化が顕著だなと思っていて。例えば最近は、いろんな人とご飯に行く様子をTwitterに載せてたりもするじゃないですか(参照:蟻@蟲ふるう夜に(@arimushimushi) | Twitter)。
蟻 そうなんですよねえ。昔は絶対に行けなかった。何話したらいいかわかんないし、人の目を見れないし。
──先ほど「自分に自信がついた」とも言ってましたよね。それも、この数年の活動を経て得られたことですよね。
慎乃介 自分で自分を認められたんだよね。弱いとこもあっていいって。
蟻 うん。自分の聞きたいことを素直に聞けばいいし、話したいことを話せばいいんだって。当たり前のことなんだけど、「それでいいんだ」って思えて。会いたいと思ったら会えばいいんですよね。それがあまり話したことがない人だって気にしなくていいし。実は「スターシーカー」をレコーディングするときに、これは自分にとって大きな作品になるって確信してたから、いろんな人に会ったんです。歌うってどういうことなのか聞きたくて。
──憧れていた人とか?
蟻 それもあるけど、自分にないものを持ってる人ですね。その人になりたいわけじゃないけど、どう歌ってるのかを確認しておきたかったんです。聞いちゃいけないことだったかもしれないけど、一歩踏み出しちゃおうって。この歌を歌うために、やらなきゃいけないことだなって。
──では逆に、蟻さんが変わってないのはどんなところですか?
慎乃介 キックの強さですね(笑)。
郁己 それは一層強くなってるんじゃね? あとは、泣き虫。
春輝 感情豊かだよね。喜怒哀楽のわかりやすさ。
蟻 そう? 感情表現、乏しいほうだと思ってるんだけど。
春輝 いやいや、「今日はイヤなことがあったな」とかすぐわかるよ。
「スターシーカー」は誰かを救うパワーがある曲
──最後に、6月4日に開催するワンマンライブの意気込みをお願いします。どんなライブにしたいですか?
春輝 ……圧巻。
一同 (笑)。
慎乃介 ざっくりだな。
春輝 だって言葉いらなくない? 「コイツら、ひとつ上に行ったな」って思われるようなライブにしたいし、しないといけない。
蟻 私は「スターシーカー」を早くやりたいですね。この歌は、最初に聴いたときに心が洗われた気がしたんです。そのあと何回聴いても発見があるし。誰かを救うパワーがちゃんとある曲だと思うから、それを生で聴いてもらったらすごいことが起こるんじゃないかっていう期待があります。
──今までにたくさん作った曲たちとは違う感覚?
蟻 そうですね。ちょっと違う。
慎乃介 聴いてても違いますね。
蟻 遠くに届くような曲になったなって。
──慎乃介さんのギターは大丈夫ですか?
慎乃介 いやほんと、ヤバいんすよ。必死で練習して挽回しないと(苦笑)。体も慣らさないといけないし。でも、圧巻のライブを見せるため、なんとかします。
収録曲
- 君という光、僕の走る道
- スターシーカー
- それでも鳴らす
- 二十歳の朝
- 同じ空を見上げてた featuring GOMESS
蟲ふるう夜に(ムシフルウヨルニ)
2007年、蟻(Vo)、慎乃介(G)、郁己(Dr)の3人で前身となるバンドを結成。2008年には1stシングル「赤褐色の海」を発売し、同年のYAMAHAオーディションで準グランプリを受賞する。2008年10月9日にバンド名を「蟲ふるう夜に」に変え、新たなスタートを切る。2012年よりベーシストとして春輝(ex. THE冠)が加入。同年8月にリリースした「蟲の音」収録曲「犬」が話題に。2013年7月にニューアルバム「蟲の声」をレンタル&配信で発表し、2014年6月にはミニアルバム「わたしが愛すべきわたしへ」をリリース。2014年末に慎乃介がフィッシャー病症候群のため緊急入院するも約3カ月後に快復し、2015年4月にはミニアルバム「スターシーカー」を発表。6月4日(蟲の日)には約2年ぶりとなるワンマンライブを東京・渋谷CLUB QUATTROにて開催する。