ナタリー PowerPush - 蟲ふるう夜に
バンドの“100点”とは? 松隈ケンタとの1年間
一番伝えたいのは詞や物語
──ということは、演奏に関しては初めから問題なかったんですね。
松隈 ただ、音楽は上手なだけではダメだし、むしろうまい人はいっぱいいる。だから「うまいよね」って言うのは「それだけじゃマズイよ」って意味でもあるんです。必要なのはそこじゃない。もうね、彼らは間があればすぐにギャーンって弾くんですよ。みんな目立ちたがりだなっていうイメージで、若いなあって。どんどん音を詰め込みたくなるのがミュージシャンの特徴なんで、そこを我慢することを覚えてほしいと思いましたね。さっき慎乃介も言ってたけど、お客さんとして客観的に聴いたサウンドで考えるようになってほしいなと。
慎乃介 自分が目立たなくてもいいんだっていうのは教わりましたね。俺らが一番伝えたいのは詞や物語だから、そこを立たせることが一番なんだなと。
郁己 ボーカルをどうお客さんに届けるか意識するようになって。それはスタジオで練習するときもそうで、ちゃんと音量を絞るようになりました。
──音量?
春輝 自分の音が聞こえないと、みんなどんどんボリューム上げるんですよ。結果、さらにうるさくなってやっぱり何も聞こえないっていう。
慎乃介 蟻に「歌も聴いて」ってぶちキレられたことあったもん。
──そうして完成した「蟲の声」はリリースから5カ月ほど経ちましたが、今でも100点ですか?
蟻 今のほうがもっと上手に歌える気もしますね。あれはまだ100点には到達してなくて、まだこれから、って感じ。
松隈 点数で言うと難しいけど、作ったそのときの感情でいいと思うんだよ。「蟲の音」だって完成したときは100点だったわけで、あとから聴いてイマイチに感じるのはちゃんと進歩してるってことだと思う。
春輝 じゃあ毎回100点だったらいいんですかね?
松隈 うん、ちゃんと成長してるもん。俺から見ると、ライブの盛り上がり方も変わったでしょ。お客さんがノリながらも、ちゃんと世界観に引き込まれるっていうか。
蟻 そうそう、「一緒に逃げよう」のギターから始まるところで、お客さんが沸くのがわかるんです。今までは静かな曲が多かったから、初めての感覚です。
──では松隈さんから見ても、4人はかなり成長していると。
松隈 ただまあ、細かいことを言えば、みんなまだ粗いね。
慎乃介 うわー。
松隈 俺のプロデュースも含めてだけど、まだ100点とは言えない。やっぱりもっと先を見ちゃうし、まだ全然ダメだなって思うこともある。自信を持って出せる音にはなってるけど、まだ行けるでしょって。
春輝 それはライブですか?
松隈 全部かな。だから逆に言えば、先が楽しみでしょうがない。この1年でこれだけ成長したんだから、もっとまだ行けるよねって。
ヒット曲はどれだけ緻密に作られているか
──これからの伸びしろは、具体的にはどういった部分ですか?
松隈 それを聞かれると、正直わからないんですよ。僕は目線の先にてっぺんを見つけることはできなくて、化学変化を集めるタイプなんです。だからみんなから新しい何かが出てくるのを待っているし、僕なりの実験もどんどん持ち込みたい。ミラクルからできたものを拾いたいし、そうすることで4人の限界を超えられる気がするんです。
蟻 これからも変わっていくだろうから、ファンもついてくるの大変かもね。
郁己 でも伝えたい根源は一緒でしょ、アレンジが変わっているだけで。
松隈 そこがブレてないから、俺もいろいろ遊べるんだよね。ちょうど今も、次のリリースに向けて新しい試みを取り入れてるんです。みんな柔軟性があってちゃんと対応できるから、またハネると思いますよ。もう50曲くらい作ったよね?
慎乃介 作りましたねえ。
蟻 まだ詳細を詰めているところなのですが、リリースに向けて動いています。
──どんな作品になりそうですか?
蟲P 松隈さんが「実験」と言ったのを補足すると、「蟲の声」では、世の中に通用するポピュラリティが足りなかったと僕は思ってるんです。そんな要素はいらないと思う人もいるだろうし、ヒットソングをバカにする風潮もありますよね。でも、「売れている曲をパクるつもりで、ポップなものを一度作ってみなよ」と慎乃介に言ったんです。そうすると、意外とできないんですよ。つまり、ヒット曲はどれだけ緻密に作られているかがわかる。そこが出発点ですね。
松隈 それで毎週10曲作れと命令しまして。
慎乃介 1日1曲でも間に合わないんですよ!
松隈 毎週その10曲を聴かせてもらうんだけど、まあダメですよ。
慎乃介 使えそうなものが1曲あればいいほうですね。落ち込む作業ですよ、これもダメ、それもダメ。
──でも体力付きそうですね。
松隈 いいトレーニングですよね。ここで残ったものが次にリリースされる予定なので、それはぜひ期待していてほしいですね。
蟲ふるう夜に結成6周年記念イベント MUSHIFEST 2013
2013年12月14日(土)
東京都 shibuya CYCLONE(闇STAGE) / GARRET udagawa(光STAGE)
OPEN 17:30 / START 18:00
<出演者>(50音順)
蟲ふるう夜に / 死んだ僕の彼女 / 水曜日のカンパネラ / つばさFly / ふぇのたす / 蜜矢 / DROPKICK STRAWBERRY / Hello Sleepwalkers / THE INTEGRAL POULTRY / LIFESHOP
DJ:工藤マサヤ / 西村ひよこちゃん
チケット一般発売中!
料金:2500円
※別途入場時ドリンク代600円が必要となります
※会場内禁煙 / 再入場可
- レンタル&配信限定アルバム「蟲の声」 / 2013年7月17日発売 / 1800円 / PROJECT SHIROFUNE / SFCD-10004
- レンタル&配信限定アルバム「蟲の声」
蟲ふるう夜に(むしふるうよるに)
2007年、蟻(Vo)、慎乃介(G)、郁己(Dr)の3人で前身となるバンドを結成。2008年には1stシングル「赤褐色の海」を発売し、同年のYAMAHAオーディションで準グランプリを受賞する。2008年10月9日にはバンド名を「蟲ふるう夜に」に変え、新たなスタートを切る。2012年よりベーシストとして春輝(ex. THE冠)が加入。同年8月にリリースした「蟲の音」収録曲「犬」が話題に。2013年7月にニューアルバム「蟲の声」をレンタル&配信で発表。iTunes Storeロックアルバムチャートにてトップ20にランクインするなど期待の高まる中、12月には渋谷のライブハウス2会場にて結成6周年を記念したライブイベント「MUSHIFEST 2013」を主催する。
松隈ケンタ(まつくまけんた)
福岡県出身の音楽プロデューサー。ロックバンドBuzz72+を率いて上京し、2005年にavex traxよりメジャーデビュー。編曲家CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表する。バンド休止後に作詞家、作曲家としてアーティストへの楽曲提供を始め、BiSや中川翔子、柴咲コウの楽曲を手がける。同時にギタリスト、アレンジャーとしても活動。J-POPの中にエモーショナルなロックサウンドを取り入れることに定評がある。