向井太一|交友関係から紐解く“青い炎”の素顔

向井太一インタビュー

静かに燃える青い炎

ルーツはブラックミュージック

──ご両親の影響でブラックミュージックを聴き始めたんですよね?

はい。音楽好きの両親だったので、ルーツレゲエやヒップホップ、R&Bは小さい頃から聴いていました。

──日本の音楽はあまり聴かなかったんですか?

高校生くらいに日本の1960年代の歌謡曲にハマりました。その頃ちょうどモータウンとかもすごく聴いてたんですよ。だからサウンド的にもしっくりきました。ブラックミュージックのテイストをそのまま日本語にしちゃう感じや、パワフルな歌唱法も僕は大好きでしたね。

──早熟ですね。リアルタイムな流行歌は聴かなかったんですか?

高校の頃に聴いてましたね。音楽の専門教科がある高校に通っていたので、ボーカルの勉強として当時流行っていた浜崎あゆみさんや初期のEXILEを聴いたり。実は中学まではすごく尖っていて、ブラックミュージック以外は聴いてなかったんですよ(笑)。だからその頃にたくさん音楽を聴いていろいろな発見をしました。僕自身の音楽性もグッと広がったと感じています。

向井太一

──実際、アルバム「BLUE」にはブラックミュージックの要素は感じつつも、さまざまな音楽からの影響を感じます。

そうですね、ブラックミュージックやカルチャーは自分のルーツにあると思いますが、僕が発信しているのは、日本の環境で育ったそのままの自分です。僕は黒人じゃないし、貧困の中で育ってきたわけでもないので、海外のブラックミュージックをリアルに表現することは絶対にできない。それに僕が作るのも違うかなって思いもあって。音楽的には自由に作っています。大事なのはバランスだと思っているんですよ。だから「BLUE」みたいな作品ができたんだと思います。

──日本の音楽を作っているけど、ブラックミュージックのエッセンスがにじみ出ちゃってるという感じがしました。

それはうれしいですね。僕、音楽はリアルさが大事だと思っているんです。自分の内側にあるものを、自分の意思で表現しないといけないと言うか。表面的な部分でトレンドの音を作っても、やっぱり本当に音楽が好きな人にはバレちゃう。「この人は今っぽい音をやってるけど、本当はこういう曲聴いてないだろうな」みたいな。

──ちなみに向井さんはどうやって作曲してるんですか?

もらったビートの中から好きなものを選んで、そこにメロディと歌詞を付けています。トラックメーカーの方たちに力を借りてる状態ですね。

──僕はてっきり最初に向井さんがラフを作って、それをトラックメーカーに渡しているのかと思っていました。

その作曲方法も行なっていますが、いかんせん音楽の幅が狭くて同じようなものばかりになってしまうんですよ。今後はもっと勉強して自分から発信していきたいですね。

向井太一 向井太一

赤い炎より熱を持った、簡単な風では消えない青い炎

──アルバムタイトルの「BLUE」はどういう意味なんですか?

青い炎を表現したかったんです。今ってインターネットが普及したから、昔と比べてトレンドがすぐに移り変わるし、アーティストもどんどん消費されていくと思ってるんです。チャンスはいっぱいあるけど、続けていくことが難しい環境になっている。赤い炎は派手に燃え上がる感じだけど、青い炎は見た目は静かだけど赤い炎より熱を持っていて、芯もあるから簡単な風では消えない。アーティストとして、僕は青い炎になりたい。

──静かに滾る感じですね。

向井太一

あと「BLUE」という言葉にはもう1つ意味を込めていて。僕は悔しさや嫉妬心のような生々しい感情が、生きるうえでは必要だと思っているんです。そういうマイナスな感情をプラスに変えることで前に進む人のほうが、いろんなことに寛容で、ただただハッピーな人より力強いと言うか。そんなネガティブなものをポジティブに変えるイメージを「BLUE」という言葉で表現したかったんです。

──大人ですね。

いやいや全然普通ですよ(笑)。表面的にネガティブになるんじゃなくて、そこを乗り越えて何をするかっていう。僕自身、人当たりは普通ですが、悔しさや反骨心みたいなものが生きるための原動力になっている。と言うか、痛みや悲しさ、悔しさみたいなものを理解できない人は、説得力のある歌なんて歌えないと思うんですよね。11曲目の「ONE」はまさにそういうことを歌っています。

──向井さんにとって歌詞とはどんなものですか?

一番重要なものです。僕は洋楽も邦楽も歌詞を聴くのが好きなんです。だから自分が歌う理由も、歌詞を聴いてもらいたいからというのがあって。歌詞も別にすべてが実体験じゃなくてもいいけど、ちゃんと自分の内側から出た言葉や感情じゃないとなって思っていますね。特に日本人の比喩的表現や、独特な言葉選びで聴き手の置かれてる環境や感情で捉え方が変わるという世界観はすごくいいなと思っています。

向井太一「BLUE」
2017年11月29日発売 / TOY'S FACTORY
向井太一「BLUE」

[CD] 2500円
TFCC-86626

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 楽園
    [Co-Produced by Julian-Quan Viet Le、LeJkeys]
  2. FLY
    [Co-Produced by Kai Takahashi]
  3. Can't Wait Anymore
    [Co-Produced by MONJOE、MIRU、荘子it]
  4. Lost & Found
    [Co-Produced by CELSIOR COUPE]
  5. Great Yard
    [Co-Produced by starRo]
  6. BLUE
    [Co-Produced by CELSIOR COUPE]
  7. 空 feat. SALU
    [Co-Produced by mabanua]
  8. 眠らない街
    [Co-Produced by mabanua]
  9. Conditional
    [Co-Produced by grooveman Spot]
  10. Teenage
    [Co-Produced by BACHLOGIC]
  11. ONE
    [Co-Produced by CELSIOR COUPE]
  • Bonus Track1. 君にキスして
    [Co-Produced by Kan Sano]
  • Bonus Track2. FREER
    [Co-Produced by Masahiro Tobinai]
向井太一「"BLUE" TOUR 2018」
  • 2018年1月13日(土)大阪府 心斎橋VARON
  • 2018年1月19日(金)東京都 WWW
向井太一(ムカイタイチ)
向井太一
1992年3月生まれ、福岡出身のシンガーソングライター。幼少期よりブラックミュージックを聴きながら育ち、2010年に上京しジャズとファンクをベースとしたバンドにボーカルとして加入する。2013年にソロ活動をスタートし、2016年3月に初の音源となるミニアルバム「POOL」をインディーズでリリース。その後TOY'S FACTORYの新レーベル・MIYA TERRACEと契約し、同年11月にミニアルバム「24」を発表した。11月に1stアルバム「BLUE」をリリース。