MUCC結成25周年企画 逹瑯×HYDE対談|表現者2人の“Timeless”な語らい (3/3)

HYDEもびっくり、YUKKEとキャンプに行く逹瑯

逹瑯 ところでHYDEさん、今、プライベートで何が一番楽しいですか? 趣味とか。

HYDE なんだろう……絵は永遠に描けるけど趣味じゃないし。趣味となるとスノーボードくらいしかない気がするな。

逹瑯 でもスノボって冬しかできないじゃないですか? それ以外の季節は何してるんですか?

HYDE ちょいちょい旅行に行ったりとか。温泉も好きだし、気の置けない仲間と酒を飲んだりとか。

逹瑯 温泉に行っても大浴場は入れないですよね?

HYDE いや入るよ。

逹瑯 入るんですか!? 確かに外国人の観光客も増えてるから、タトゥーOKな温泉も増えてますけど、そもそもHYDEさんが大浴場にいたらバレますよね。

HYDE お客さんがいっぱいいればね(笑)。でも、そもそもあんまりそういうところには行かないから。

HYDE

HYDE

逹瑯 今、タトゥーは絶賛増やし中ですよね。

HYDE 自分的にはもう入れるところないと思ってて。あと入れるとしたら首かなあ。HYDEは「やれ」って言うんだけど、寶井くん(HYDEの本名)は止めるんですよ。今はそこで戦ってる(笑)。

逹瑯 前に海外フェスをツアーで回ってるときに、同行してくれた若いシェフのあんちゃんが全身にびっちりタトゥーを入れてて。首にも入ってたんですが、文字が逆さまなんですよ。理由を聞いたら、「これは自分にとって大切な言葉で、毎朝鏡を観たときに読めるように入れてる。忘れたくない言葉なんだ」って。カッコいいなあと思ったんですよね。

HYDE そのアイデアいただこうかな。逹瑯は最近プライベートで何してるの?

逹瑯 キャンプですね。YUKKE先輩と一緒に。

HYDE メンバーと行くの? すごい仲いいね。どこに行くの?

逹瑯 静岡とか山梨あたり、富士山の湖付近ですね。

HYDE へえ! 僕も学生の頃はキャンパーだったんだよ。でも20歳超えて、ラルクをやりだしたくらいから潔癖症まではいかないけどきれい好きになって、それからは行けなくなっちゃった。

逹瑯 どんなところでキャンプしてたんですか?

HYDE キャンプ場とかじゃなくて、何もない山奥とか人のいないところに行ってたね。週末ごとにみんなで集まって火を焚いて。お金がないからテントも立てずにほとんど野宿状態。10代なりの楽しみ方だったと思う。

逹瑯 HYDEさんも1回キャンプに行ったら感覚が戻りそうですけどね。

HYDE 戻るかな?

逹瑯 雪山に行ってくださいよ。

HYDE 雪国は大好きだけど、絶対無理(笑)。

自分に残されている時間

逹瑯 HYDEさんはソロ活動を始めて何年ですか?

HYDE 22年。

逹瑯 ラルクだと?

HYDE 33年かな。“ラルクくん”ももはや中年ですよ(笑)。

逹瑯 自分に残されている時間とか考えたりしますか?

HYDE 考えるよ。だから逆算して生きてる。最近いろんな人が亡くなっているから、他人事じゃないなと思って。自分もいつまで元気でいられるかわからないし、やりたいことを今やっておかないと。例えば自分がアスリートだったとして、一番いい記録を叩き出して終わりたいんだよね。同時に自分のピークはどこだろうなと考えながら過ごしてる。

逹瑯(撮影:冨田味我)

逹瑯(撮影:冨田味我)

逹瑯 10月にBUCK-TICKの櫻井(敦司)さんが亡くなったじゃないですか。櫻井さんが亡くなったとき、すごくショックを受けたんですけど、1つ問題提起をされたような気がしていて。櫻井さんのように常に何かを追い求めて新しいものを生み出して、最後までステージの上に立ち続けるのか。全部やり切って、悔いもない状態で余生を過ごすのか、あなたはどちらを選ぶのかと。HYDEさんはどうですか?

HYDE (即答で)中間。

逹瑯 中間?

HYDE やりたいことをやって、そのあとは仕事を楽しむ。今は苦手なこともやらないといけないときがあるけど、自分の理想を実現させるためには仕方がない。でも実現させたあとはやりたいことだけやって仕事を楽しもうというスタンス。ピークを迎えたあとは好きなことだけをやりたい。もちろん今も好きなことをやっているけど(笑)、もっと削ぎ落としたいんだよね。ひょっとしたら将来は絵を描いているかもしれないし。ただ音楽にしても絵にしても、何かを作り続けることはやめないと思う。

逹瑯 そういう意味で中間なんですね。HYDEさんはいろんな選択肢がある中で常に最善を選んできて今があると思うんですけど、振り返ったときに「あのときにこの選択をしていたらどうなっていたんだろう」と考えることはありますか?

HYDE いっぱいあるよ。自分が選んできたものすべてが正解とは思ってないし、間違いもいっぱいあったと思う。今とは違う道を選んだほうが早く目標を達成できたかもしれないけど、遠回りした分面白いこともあったから、一概には何が正解かとは言えないよね。それこそ昔いじめられたときとか……。

逹瑯 え、HYDEさんがいじめられてたんですか!?

HYDE うん。中学とか暴力社会だったから(笑)。

逹瑯 関西ですか?

HYDE そう。殴られても、相手を殴り返さなかった。今でも、あのとき殴り返していたらどうなっていたんだろう?と思うこともある。僕が勝っていたら、その後の人生はどうなっていたんだろうなって。

逹瑯 今とは全然違う道があったかもしれないですね。

HYDE ただ、我慢したことで得たものはいっぱいあった。弱者の気持ちもわかるわけだし、そのときの判断は正しかったと今は思ってるけど。

HYDE

HYDE

逹瑯 HYDEさんは確固たる信念で突き進んでいるときもあれば、若干悩んでいるのかな? 迷っているのかな?みたいなところがあるのが人間らしいというか、魅力につながっていると思うんですよね。HYDEさんって天然とあざとさの黄金比がハンパないんですよ。あざといところはめちゃくちゃあざといし、天然なところは天然だし。そこは真似できない。

HYDE 自分で天然だと思ったことがないけどなあ(笑)。逹瑯もMUCCを25年やってきて、分岐点がいっぱいあったと思うけど、この道を選んでよかったなとか思ったことはある?

逹瑯 うーん、結果これでよかったんだなと思えることが続いてますからね。自分の中では折り合いをつけられてるし、強烈な後悔は残ってないから幸せなんだと思います。

HYDE もう、結成から四半世紀だもんね。

HYDE、逹瑯のフロントマンとしての意識

HYDE 逹瑯はバンドを始めたときからボーカルだったの?

逹瑯 そうですね。ただ歌が得意かと聞かれると苦手な歌い方もあるし、シンガーと言われることには違和感があるんです。ただ、フロントマンとしての自覚はあるかもしれないな。HYDEさんはどういう意識でステージに立ってますか?

HYDE 僕自身は歌に集中したい気持ちがあるんだけど、エンタテイナーとしての意識も離れなくて。プロデューサー的な自分がもう1人別にいて、「HYDEはこう動いたらカッコいいんじゃない?」「もっとこうしたほうが面白いよ」と言ってくる。それに従ってるね。だけどアコースティックライブとかでは、本当に歌だけに集中する。それはそれで面白いから、これから突き詰めていきたい表現ではあるね。逹瑯はどう?

逹瑯 俺はステージに立ってるときが、一番自由に好きなタイミングで言葉を発せられるんですよね。バンドの中で唯一手足が空いているポジションだし。だから、フロアや客席とステージのちょうどつなぎ目の部分が自分だと思ってて。お客さんとバンドの接着剤なんだと思ってます。会場をひとつにするのも、分けるのも自分の采配ひとつでできるし、そこを楽しんでいるというか。

逹瑯(撮影:冨田味我)

逹瑯(撮影:冨田味我)

HYDE ああ、そんな感じだよね。本当にいろんな世界観があるよね、MUCCは。でも今までいろんなジャンルの音楽をやってきたと思うけど、結局全部MUCCの曲になるのがすごいと思う。

逹瑯 俺らとしても、そういう方向に持っていきたいんですよね。最近は日本のアーティストらしい空気感やメロディを大事にしつつ、バンドのイメージとかステージの見せ方を、洋楽アーティストみたいな圧倒的なレベルに持っていきたいんです。

HYDE MUCCはそうなれる気がするね。それと、これまで培ってきたメンバーとの関係性は新人バンドには出せないものだし、宝物だよね。素晴らしいと思う。そうだ、さっき出た人生のリミットの話だけど、逹瑯は将来的にどうなりたいの?

逹瑯 俺は全部バチーンとやって、のんびり暮らしたいですね。最終的な目標というかゴールはまだ定まってないですけど、やり切ったらカフェを開きたい。MUCCのファンだったお客さんがたまに来て、ジジイになった俺に悪態をつくような。「昔はあんなにあんたのことを夢中になって追いかけてたのに、こんなジジイになっちゃって……」とか言われて、「うるせえババア!」って返すの(笑)。そういうお店がやりたいです。

HYDE いいねえ、その店。遊びに行くよ。

逹瑯 HYDEさんが来たら緊張してのんびりできないじゃないですか!

ライブ情報

MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to「Timeless」&「WORLD」

  • 2023年12月28日(木)東京都 東京国際フォーラム ホールA

プロフィール

MUCC(ムック)

1997年に茨城で結成された、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)からなるロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、ヘヴィロックやラウドロックの影響をミックスさせた音楽性が国内外で評価されている。2002年にデンジャークルー・レコード内に自主レーベル・朱を設立。2003年にシングル「我、在ルベキ場所」でメジャーデビューし、2005年にはドイツで初の海外公演を行うなど活動の場を広げた。結成15周年を迎えた2012年には千葉・幕張メッセにてワンマンライブを開催。2019年2月には期間限定メンバーとして吉田トオルを迎えたアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」を発表した。2021年10月をもってSATOち(Dr)が脱退し現体制に。2022年6月に現体制初のフルアルバム「新世界」を発表し、同年10月から過去のアルバムを中心とした再現ライブツアーシリーズ「Timeless」を開催中。2023年12月に東京・東京国際フォーラム ホールAで結成25周年を締めくくるワンマンライブ「MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to『Timeless』&『WORLD』」を行う。6月9日を「ムックの日」とし、毎年さまざまなイベントや企画を実施している。

HYDE(ハイド)

L'Arc-en-Ciel、VAMPS、THE LAST ROCKSTARSのボーカリスト。2001年にソロ活動をスタートさせ、日本のみならずワールドワイドに活動している。ツアーの一環でアメリカ・Madison Square Gardenや東京・国立競技場などで単独ライブを行い成功を収めている。2022年6月より対バン形式のライブハウスツアー「HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH」を開催。ソロ活動20周年の2021年に開催した「20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021」「20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU」の模様を収めた映像作品を、2022年7月にリリースした。2023年6月に「TAKING THEM DOWN」、9月に「6or9」を配信リリース。コロナによる規制を撤廃して6月より全国7都市20公演のワンマンツアーを実施。9月9、10日にツアーのファイナル公演「HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT」を千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールで行った。また2022年11月、YOSHIKI、SUGIZO、MIYAVIとTHE LAST ROCKSTARSを結成。同年12月、1stシングル「THE LAST ROCKSTARS(PARIS MIX)」を世界同時配信リリース後、2023年1月よりデビューツアーを日米で敢行する。2023年8月に2ndシングル「PSYCHO LOVE」を配信リリースし、11月より2ndツアー「THE LAST ROCKSTARS The 2nd Tour 2023 "PSYCHO LOVE"」を行った。2024年2月よりL'Arc-en-Cielとして約2年ぶりのアリーナツアー「L'Arc-en-Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND」が開催される。