出演番組が放送されたらネットをチェック
──先ほど「バンドが外の世界を意識し始めた時期」と発言されてましたが、「球体」をリリースした頃は特にいろんなメディアにMUCCが出ていた印象があります。いわゆる一般層に向けたアピールというか。
もっとたくさんの人に知ってもらいたい気持ちはあったし、特にこの頃はレコード会社もそういう動き方をしてたんですよ。だから音楽番組に出てパフォーマンスをしたり。で、番組が放送されたらネットをチェックするという(笑)。
──エゴサーチですね(笑)。
ファン以外の人がMUCCを観てどう思うのか、やっぱり気になるじゃないですか。一般の人にはどんなふうに映るんだろう?みたいな。ファンが言わないようなことを絶対言うだろうし。もちろん批判的な意見とかも目にするんだけど、反応がもらえること自体がうれしかった。
──無反応よりは全然いいと。
それぐらい意識が外に向いてたんだと思う。だからライブの見せ方とかアクションとかも、この頃からたくさんの人に見られることを意識するようになったし、武道館とか大きな会場でライブをやる回数も増えた。でも、それに比べて自分のプレイがまだ追いついてなくて。思ったように動けないし、弾けない。全然殻を破れていなかったんですよ。だから……あの頃の自分がやり残したことを、今回の再現ツアーでちゃんとやり遂げたいですね。
──ここまで再現ツアーを観てきて思うのは、当時は曲のポテンシャルにバンドの力量が追いついてなかったんだろうなと。
そうですね。曲に負けていたと思います。
──演奏力とか表現力が劣ってる分、気合いとか熱量とかバンドの一体感みたいなものでライブを凌いでいたというか。不器用だし空回りしてるんだけど、そこがこのバンドのいいところだよね、というか。
でもそれで許されるのって20代までだと思うんですよ。若さゆえ、みたいな。あの頃から15年ぐらい経って、俺らも40代になり、ようやく曲本来のよさを引き出せるだけの大人になったんじゃないかな。再現ツアーにはそういう昔とは違う味わいがありますね。
──歳をとったことよりも成長できたことに喜びを感じられるツアーだと。
しかも、ここからまた自分が大きく成長できるチャンスをもらってる気がするんですよ。当時演奏していた曲が、「実はこういう楽しみ方があるんだよ」と今の自分に教えてくれることで、また新しい扉を開けられそうな感覚があって。面白い現象ですね。
ちゃんと今のMUCCだからこそできるものを見せたい
──今回のツアー会場では新曲「99」がCDで販売されますが、この曲、先ほどから話に出ている海外ツアーの影響を強く感じるバンドサウンドだと思いました。
あの頃を振り返りつつ、今のMUCCだから表現できるフレーズとかプレイが詰まっている曲だと思います。たぶん……この曲ができたからもう1回海外ツアーに行きたいと思ったんですよ。
──なるほど。
イントロの激しい感じとか、海外のお客さんがウォー!って手を挙げてる光景が目に浮かぶんです。あの景色を前に今の自分たちがライブをやったら、きっと楽しいだろうな。当時も楽しかったけど、さっきも言ったように演奏でいっぱいいっぱいだったから(笑)。
──今の自分だったらもっと楽しめるはずだと。
想像するだけで気持ちいいだろうなって。そういう気持ちでツアーに臨めるいい曲だと思います。あと、当時の自分だとこの曲は難しくて弾けてないです(笑)。
──弾けるようになってよかったです(笑)。
本当にそう(笑)。知らず知らずのうちにちゃんと成長できてるんだなと。あと、前回のツアーからバンドマンの後輩がたくさん観に来るようになったんですけど、どうも「鵬翼」とか「極彩」からMUCCにハマった人が多いらしく。後輩たちがバンドを始めるきっかけとかになっていたみたい。
──これだけ長くやってれば、そういう存在になって当然です。
25年ってそういう時間の重みがあるんだなって、最近は特に思います。だからその分、後輩たちの前で昔の曲をただ再現するだけのライブにはしたくなくて。ちゃんと今のMUCCだからこそできるものを見せたいし、バンドの未来が見えるようなライブにしたい。
──そもそも20年以上4人でやってきたバンドからメンバーが1人脱退して、それでも続けていくことを決めた時点で、前に進むしかないわけで。
本当にそうですよ。だから……逹瑯がよく言うんですけど、再現ツアーとは言うものの、なんのために過去を振り返ってるか?という話なんですよ。3人になったMUCCが、これからもバンドを続ける……だけじゃなくて、もっと大きくなっていくために必要なこと。それは自分たちの過去の作品と向き合うことで、もっと自分たちの足元を固めるというか。前に進むためにやってることなんです。
──そうですよね。
ていうか昔と同じことはもうできないんですよ。演奏のスキルも違うし、曲との向き合い方もお客さんとの向き合い方も違う。そもそもメンバーだって違うわけじゃないですか。あの頃と違うってことを、過去の曲をやることで思い知る。
──あの頃のMUCCはここにはいないと。
当時はもっとヒリヒリしてたし、俺も余裕がないから緊張感が半端なかったし、それがある意味バンドのガソリンみたいになってはいたけど、今はもうそうじゃないから。だったら今の自分たちが向かう先を見据えたうえでツアーをやらないと、俺たち何をやってたんだろう?ってなっちゃう。だから「99」を聴いて自分なりにバンドの先が見えたことがすごくよかったし、この曲に次のツアーは引っ張ってもらえると思います。
ツアー情報
MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」~志恩・球体~
- 2023年6月9日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2023年6月24日(土)埼玉県 三郷市文化会館
- 2023年6月30日(金)大阪府 ホテルメルパルク大阪 メルパルクホール
- 2023年7月21日(金)群馬県 高崎芸術劇場 スタジオシアター
- 2023年7月26日(水)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
- 2023年8月1日(火)東京都 浅草花劇場
- 2023年8月2日(水)東京都 浅草花劇場
- 2023年8月21日(月)茨城県 水戸市民会館
プロフィール
MUCC(ムック)
1997年に茨城で結成された、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)からなるロックバンド。日本語にこだわった文学性の強い歌詞と、ヘヴィロックやラウドロックの影響をミックスさせた音楽性が国内外で評価されている。2002年にデンジャークルー・レコード内に自主レーベル・朱を設立。結成15周年を迎えた2012年には千葉・幕張メッセにてワンマンライブを開催した。2019年2月には期間限定メンバーとして吉田トオルを迎えたアルバム「壊れたピアノとリビングデッド」を発表。2020年6月に15枚目となるオリジナルアルバム「惡」をリリースした。6月9日を「ムックの日」とし、毎年さまざまなイベントや企画を行っている。2021年10月をもってSATOち(Dr)が脱退し現体制に。2022年6月に現体制初のフルアルバム「新世界」を発表。同年10月から過去のアルバムを中心とした再現ライブツアーシリーズ「Timeless」を開催している。
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