音楽ナタリー Power Push - MTV VMAJ 2015
「MTV VMAJ 2015」ノミネート作品発表!ホストが語るMVの魅力
「MTV VMAJ 2015 -THE PARTY!!-」ホスト VERBAL(m-flo、PKCZ)
VERBAL(m-flo、PKCZ)インタビュー
マドンナに口付けされた子供に嫉妬した
──今回「MTV VMAJ 2015 -THE PARTY!!-」のホストをVERBALさんが務められるということで、MVに関するエピソードをお聞きできたらと思っております。ご自身が初めて観たMVを覚えていますか?
初めて観たものではないと思うんですけど、ヒップホップにハマる前、小学生のときにマイケル・ジャクソンやマドンナのMVをよく観ていました。確かマドンナが「Open Your Heart」のMVで、当時の僕と歳が近い子供に口付けするシーンにすごく嫉妬したのを覚えていて。子供ながらに「なんだよ! コイツ!」って(笑)。
──おませな小学生だったんですね(笑)。
僕10代の頃ダンスもかじってたんですけど「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の「ダンス甲子園」や、EXILEのHIROさんがいらっしゃったZOOが出ていた「DADA L.M.D」とかをVHSに録って、ダンスをマネしてモテようとしてましたね。いかに女性と接点を持てるかっていうのが自分の中のテーマだったので、陸上部入ったのも、バスケ部入ったのも完全にそのためで(笑)。
──音楽を始めたのもそのためだったんですか?
いや、音楽を始めたのは周りの友達のダンスのうまさについていけなくて、「お前はラップしててよ」みたいな感じに言われたのがきっかけで(笑)。最初は僕がラップして友達がダンスするっていうユニットを組んでいたんですけど、小学5年生から友達だったm-floの☆Taku(Takahashi)に「ラップ書いてるんでしょ? ちょっと一緒にやろうよ」って言われてバンドを組みました。
──そのバンドは今のm-floに通ずるような音楽性だったのですか?
そのときは☆Takuがドラムで、ギタリストの友達とベーシストの後輩に入ってもらって4人でやっていたんですけど、ギタリストとベーシストの2人がMetallicaとかMegadethしか聴いてなくて、彼らの弾きたいフレーズがバリバリのメタルだったんです。☆TakuはそのときFishboneとかハウスとか聴いてて、僕はGangstarrとかN.W.A.しか聴いてなかったんで、もうごっちゃんごっちゃんだったんですよ(笑)。しかもカバーするほどうまくなかった。そこでオリジナル曲を作ったらそれが逆に話題になって、バンド大会とかで間違って勝ち始めちゃって。
──いいミクスチャーバンドがいるぞっていう(笑)。
しかもレイジ(Rage Against the Machine)とかが流行る前にそういうことをやってましたからね(笑)。
空輸で掘ったヒップホップ
──その頃観ていたMVで印象に残っているものはありますか?
ヒップホップにどんどんハマっていった時期なので、やっぱりRun-D.M.C.やN.W.A.とか……そうそう、N.W.A.のMVがなかなか観られなかったんですよ! 当時は「Fuck」とか「Shit」みたいな言葉を言っちゃいけないとか、奇抜なコンテンツには特に規制がかかっていたんですよね。でも僕はそういったものに魅力を感じていたので、アメリカの友達に「日本から何か送るから代わりに送ってよ」ってお願いしてVHSを送ってもらってました。「ベストヒットUSA」とかももちろん観てたんですけど、僕偏ったB面寄りの曲が好きだったんで(笑)。
──実際にどんなものを送ってもらっていたのですか?
当時「Def Jam」シリーズみたいな感じで、ニッキー・ディーとかPublic EnemyとかのMV集とインタビュー映像が入った企画モノのVHSが出てて、それをいっぱい送ってもらってましたね。そこにたまたま付いてきたデフ・ジェフの映像を観て「こんなアーティストいるんだ」って発見したり。
──なるほど。空輸で音楽を掘っていたというのはすごいですね。
そうですね。MTVでは主に「Yo! MTV Raps」(ヒップホップの専門番組)を観ていて、確かそれで初めてメソッド・マンの「Bring The Pain」のMVを観てアガった記憶があります。いつ好きな曲が流れるかわからないので、とりあえずブラウン管の前で張ってて。流れたらかなり興奮して「このディレクターさん、ありがとう!!」みたいな(笑)。友達と一緒に観てるときはみんなでダンスをマネしたり、マライア・キャリーの「Dreamlover」のMVに好きなダンサーが映って「あ! あのダンサー映ってる!」って盛り上がったり。昔は今ほど情報が多くなかったんで、逆にそれを知ってる人たち同士が共鳴しやすい感じだったんですよね。知ってたらもう一気に友達になって「観た観た!」みたいな。それが楽しかったですね。
メソッド・マン - Bring The Pain
マライア・キャリー - Dreamlover
──そもそも、物々交換をするような海外の友達はどこで作ったんですか?
10代の頃アメリカに1カ月ぐらいサマーキャンプに行ったときに、Public Enemyを部屋で爆音で流してたら、そのキャンプ中の黒人たちがみんな集まってきたことがあったんです。あとキャンプに床屋がなかったので自分で髪を切ってたんですけど、その黒人たちに「俺の髪も切ってくれないか?」って頼まれるうちに、だんだん“髪切ってくれてPublic Enemy聴く東洋人”みたいな立ち位置になってきて。
──あはははは(笑)。
それでいろんなパーティに誘われるようになって。ダンスパーティに行ったときに「DADA L.M.D」で観たダンスをただ丸パクりして踊ってたら「お前、うめえな」って、また一目置かれる東洋人になって(笑)。それでみんなが「お前いいヤツだからPublic EnemyのTシャツあげるよ」とか「カセット送るよ」って言ってくれて物々交換が始まったんです。僕も☆Takuと録ったデモテープを手紙と一緒に「どう思う?」ってアメリカに送ったり。そしたら3週間後ぐらいに「みんなと聴いてドープだと思ったよ」みたいな手紙が戻ってきて、☆Takuと「本場に認められてるぞ!」って喜んでましたね(笑)。
海外アーティストとのコラボって夢がある
──「MTV VMAJ 2015」のノミネート作品は観ましたか?
けっこう観ましたね。特に「最優秀コラボレーション賞」にノミネートされた、FlowerとイギリスのLittle Mixとのコラボ曲「Dreamin' Together feat. Little Mix」のMVがよかったです。昔って海外アーティストと一緒にMVに出るっていう発想がなかったので、今ってすごく夢がありますよね。しかも今の若い子たちって海外アーティストとのギャップを感じないぐらいダンスがうまいから、そのMVが貼り合わせにしろ、一緒に撮っているにしろワザとらしい感じがしないですし。この賞で誰が勝つのかなっていうのは気になりますね。
──VERBALさんもそれこそ2009年の「MTV VMAJ」でTERIYAKI BOYZとファレル・ウィリアムス、バスタ・ライムスとのコラボ曲「ZOCK ON! feat. Pharrell and Busta Rhymes」のMVで「最優秀ヒップホップビデオ賞」を獲られてますよね。
ありがとうございます。NIGOさんのお陰で世界が広がり、超大物とのコラボを交友関係だけで形にする可能性を感じられて刺激的でした! あのMVがあったからこそみんな「ほら! できるじゃん!」ってなって、今海外アーティストとのコラボレーションがどんどん生まれているっていうところもあると思いますね。
──2010年リリースのMINMIさんとのコラボナンバー「パッと花咲く feat.VERBAL」のMVでは監督を担当されていますよね。MVに作り手として携わってみていかがでしたか?
みんちゃん(MINMI)に「面白いの作ってよ」って頼まれたのがきっかけで考案させてもらったんですけど、MV制作は難しいなと感じました。周りの人が「初めてやるんだから協力するよ」っていろいろ手伝ってくれて完成させることができましたね。
──MVでは花魁のような女性がポールダンスを踊っているなど、インパクトがありますよね。
タイトルの通り「パッと花咲く」は男女関係をテーマに、ジャパニーズエロスを感じる歌詞がつづられた楽曲なので、外国人から見た日本のイメージを出したかったんですよね。障子に穴を空けて覗いてるシーンを入れたりとか。そこにマリー・アントワネットがデカダンスな秘密のパーティをしてるみたいなイメージを落とし込んで、ゴージャスな映像に仕上げました。
──「MTV VMAJ 2015」をホストとしてどのようなイベントにしたいですか?
僕はあんまり司会進行に自信がないので(笑)。DJするときのMCじゃないですけど、そんな感覚で皆さんと一緒にヒートアップしていけたらいいなって思います。受賞者が出てきて堅くパチパチ拍手するんじゃなくて、「うおー!」ってお祝いして、打ち上げみたいな雰囲気にしたいですね。
──「MTV VMAJ」は一般の方が投票できるというのが魅力の1つだと思うのですが、リスナーにこのアワードをどのように楽しんでもらいたいですか?
とりあえず参加者の数が多いほうが楽しいと思うので、ただ純粋に自分がいいなって思った作品やアーティストにどんどん投票して、サポートしていってほしいですね。あとパーティ当日はびっくりするようなサプライズゲストも呼んでいるので、そこにも注目して楽しんでもらえればと思います。
- MTV VMAJ 2015-THE PARTY!!-
-
2015年11月26日(木)東京都内
<出演者>
ホスト:VERBAL(m-flo、PKCZ)
ゲスト:Crystal Kay
DJ:DJ DARUMA & JOMMY
and more
VERBAL(バーバル)
MC、DJ、プロデューサー、デザイナー。1998年に☆Taku Takahashiとm-floを結成。ヒップホップユニット・TERIYAKI BOYZ、新たに結成されたクリエイティブユニット・PKCZの一員としても活動しており、ジャネット・ジャクソンなど海外アーティストとのコラボレーション作品も手がける。またアクセサリーブランド「AMBUSH」のデザイナーや映画監督としても活躍。近年では自身が立ち上げた会社「WHATIF」の代表として、3Dプロジェクションマッピングやモーションキャプチャースーツなど最新技術の提供も行っている。
2015年12月11日更新