とにかく楽しくて仕方がない
──DISC 2にはOOJAさん自らがセレクトした16曲が収録されています。
私はいろんなタイミングで楽曲の人気投票をやるんですが、その流れでコロナ禍になった2020年にライブ映像の人気投票をやったんです。その結果を参考にしながら、ライブでよくやる曲を中心にDISC 2の収録曲をセレクトしていきました。最近はおじゃファミ(ファンの呼称)の好みがかなりわかるようになってきたので、好みのギャップはあまりないような気がします。アップテンポの「I'm ALIVE」にしても、ほぼ毎回やってるんですけど、皆さん必ず喜んでくださる感じ。私のレパートリーの中では唯一盛り上がる曲です(笑)。
──唯一ってことはないでしょうけど(笑)。
あんまり盛り上がる曲がないんですよね。「I'm ALIVE」にしても、それまでの私にはなかったタイプの曲だったから、リリースするまではけっこう不安だったんですよ。でも、いざライブで披露してみたら皆さん気に入ってくださって、私自身もライブで歌えば歌うほどに大好きな楽曲になっていったんです。
──確かにOOJAさんはバラードの印象が強いですからね。アップテンポな曲で盛り上げるイメージはあまりないかも。
そうそう。いまだにバラードのイメージが強いと思います。でもね、実はデビューするまでバラードって1回も歌ったことがなかったんですよ。だから当初はバラードを歌うことに対して戸惑いがあったんです。「デビューしたら私、バラードばっかり歌ってるな」みたいな(笑)。そういう意味では「I'm ALIVE」はそんな私のイメージの殻を破ってくれた大事な1曲でもあります。
──ドキュメント番組でAK-69さんがおっしゃっていましたけど、デビュー前のOOJAさんはかなりハードなヒップホップをやっていたそうですね。
もう本当にゴリゴリでしたよ。だからその頃の私を知っているクラブシーンの人は、「別の世界に行っちゃったな」「セルアウトしたな」みたいな感想を持ってたと思う(笑)。でも私としてはせっかくつかんだデビューのチャンスだったので、やれることは全部やろうと思ってたんですよ。だから歌ったことのないバラードであっても、「はい、歌います!」「どう思われても関係あるかい!」っていう(笑)。
──あはは。でもそれだけの覚悟を持ってさまざまな曲にトライしてきたからこそ、ご自身でも気付いていなかったであろう自らの魅力に気付くことになっていくわけですよね。
そうですね。柔軟にいろいろチャレンジしたい貪欲さがあったし、それによって「こんな歌も歌えるんだな」という発見もたくさんありました。で、そういうことを続けていく中でどんどん自我が生まれていくんですよ。自分なりに表現することはずっとやってきたんですけど、2014年くらいからそれがより楽しくなってきて。いろんな試行錯誤をするようになったんです。その1つの結晶が昨年リリースした「PRESENT」というアルバム。あれを作れた瞬間、私の中で1つ抜けた感覚があったし、なかなか超えられなかった1stアルバム(2011年6月発売の「VOICE」)を超えた実感があったんですよね。そこで第1章が完結し、次に進むべき道が明確に見えてきたような気もしたし。だから今の私はちょっと肩の力が抜けて、とにかく楽しくて仕方がないんですよ。
──DISC 1のラストには今年1月に配信された「Open door」が、DISC 2のラストにはデビュー丸10年を迎えた昨年2月に配信された「はじまりの時」が収録されています。どちらの曲にも今のOOJAさんのポジティブな感情が満ちていますよね。
はい。でも「はじまりの時」にはまだ力が入っているんですよ。「やるぞー!」っていう気合いが強いというか。それに対して「Open door」はもっと力が抜けているんですよね。そういう意味ではこの1年でも気持ちがすごく大きく変わったんだと思う。「はじまりの時」から13カ月連続配信をやらせてもらったんですけど、それはある種、私にとっての“精神と時の部屋”みたいな感じだったんですよ(笑)。
──「ドラゴンボール」で孫悟空が修業した部屋ですね(笑)。
そうそう。そこでの修業が意外なくらい苦じゃなかったし、楽しかったんです。それによって自分が強くなったことも感じましたし。そういった変化が「Open door」には表れているし、だからこそここで総決算というか、ひと区切りできる気がするんですよね。
DNAに刻み込まれている音楽を発掘
──そしてDISC 3にはカバー曲とコラボ曲がまとめられています。
カバーはデビュー前からずっとやってきているんですけど、当初はオリジナル曲で評価されたい気持ちがどこかにあって。「カバー曲を聴きました」と言われたときに、素直に喜べない自分がいたんです。でも、ここ最近は素直に「ありがとうございます」と言えるようになった。どんな形であろうとMs.OOJAの歌をセレクトして聴いてくれてるのはものすごくありがたいことなので、そのきっかけの1つであるカバーには感謝の気持ちもあるんですよね。
──時代もジャンルもさまざまな楽曲をカバーされていますよね。
当初は、「この曲はOOJAの声に合うと思うよ」っていう周囲の方たちの勧めをきっかけにカバーをすることが多かったんですけど、そこにもだんだん自我が出てきたんです。2020年にリリースした「流しのOOJA~VINTAGE SONG COVERS~」は、初めて自分からプレゼンして作った作品で。「昭和歌謡のカバーアルバムを作りたいんです!」って。カバーに関してもそういう変化がこの10年でありましたね。そこで歌った昭和歌謡のカバーは、これからのMs.OOJAのオリジナルにもつながっていくような気もしているんです。幼少の頃に聴いて、DNAに刻み込まれている音楽性を改めて発掘できたという意味でもすごく大きな意味のある出来事だったと思います。オリジナルを作ることも大事ですけど、同時に世の中にある名曲を歌い継いでいくことも歌手としての仕事だと思っているので、これからもカバーは続けていきたいですね。
──コラボについてはどうですか? これまでさまざまなアーティストの楽曲に客演されてきていますが。
デビュー前はずっとラッパーの相方と一緒に活動していたし、その前はグループでやっていたので、振り返れば何かしらのコラボをしながら活動してきたとも言えるんですよ。その中で、特に男性ボーカル、男性ラッパーとの声の相性のよさは自覚していたところもあって。デビューしてからは基本ソロで活動してきましたけど、たまにやるコラボを通して、過去に自覚していた自分の声の魅力を思い出すことができるというか。そこで生まれる化学反応は毎回楽しいですね。ベストに収録されている曲で言えば、JAY'EDの「また君と」は当時、ほとんどプロモーションをしてなかったんですけど、ネットではすごくバイラルしている状況があって。それを改めて聴いてもらえるのはすごくうれしいです。あと黒沢薫(ゴスペラーズ)さんには「黒沢カレー会」に呼んでいただいたりとか(笑)、プライベートでもお世話になっているんですけど、その前にアーティストとしてものすごく尊敬している先輩なので、「愛とは…」でご一緒できたときは本当に勉強になりましたね。
──コラボしたい人は常に思い描いているんですか?
それがあんまりないんですよ。楽曲提供とかプロデュースという意味では布袋寅泰さんやコブクロの小渕健太郎さんのようにお願いしてみたい方はいるんですけど、共演という意味ではあまり考えてはいないです。私の声を求めていただいたときには、全力で歌わせていただきますけどね。そう思えば、「I remember you」でご一緒したAK-69さんは私がコラボしたかった貴重な方ですね。
──3月27日には初の日本武道館公演が決定しています。ドキュメンタリー番組では、ずっと夢であり目標だったとおっしゃっていましたが。
ずっと憧れてきました。メジャーデビューしたら武道館のステージに立つというのがワンセットで自分の頭の中にあったんです。言ってしまえば必ずやるもんだと思ってたんですけど、現実には「あれ、全然できないぞ」みたいな(笑)。で、気付いたら10年経っていたので、そこにトライできるチャンスが巡ってきたことに関してはとにかく喜びの気持ちしかないですね。
──武道館のステージに立っている自分を想像できています?
想像はできているんですけど……今はまだ不安のほうがいっぱいで。どんなパフォーマンスをすればいいのか。こういうご時世でもあるので、そもそもお客さんが集まってくれるのか。武道館をやることを決めてから1年半くらい経つんですけど、その間いろんなことを考えながら、ずーっとハラハラしてます(笑)。まあでも、ファンの方はもちろん、周りで私を支えてくださっている方々もみんな喜んでくれているので、不安要素を1つひとつ消していきながら、楽しいライブにしたいですね。ドキュメンタリーのインタビューでも言いましたけど、10年分の思いを込めて歌いきることで燃え尽きようかなって。ファンの方には「燃え尽きちゃダメでしょ」って言われましたけど(笑)、それくらいの気持ちで挑もうと思ってます。
──JAY'EDさん、黒沢さん、小渕さん、AK-69さんがゲストとして駆け付けてくれることも発表されていますしね。
ゲストがめちゃくちゃ豪華なんですよ! 頼もしいですね。このライブをやり切ることで一旦は燃え尽きますけど(笑)、でもそのあとにはきっと何かしら新たに見えてくるものが必ずあると思うんです。それが何かはまだわからないけど、とにかく楽しみ。以前、布袋さんの40周年ライブにゲスト出演させていただいたことがあるんですけど、そのときに「やっと10年までたどり着いたね」と言っていただいて。そうだよな、私なんてまだまだひよっこだよなってすごく思いました。だからここからも生まれたての新人の気持ちで歌い続けていくつもりです。
ライブ情報
Ms.OOJA 10th Anniversary Live “はじまりの時” in 日本武道館
2022年3⽉27⽇(⽇)東京都 ⽇本武道館
<出演者>
Ms.OOJA
ゲスト:JAY'ED / 黒沢薫(ゴスペラーズ) / AK-69 / 小渕健太郎(コブクロ)
プロフィール
Ms.OOJA(ミスオオジャ)
1982年生まれ、三重県出身のシンガーソングライター。2011年2月にシングル「It's OK」でUNIVERSAL SIGMAよりメジャーデビュー。2012年にリリースされた仲間由紀恵主演ドラマ「恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方~」の主題歌「Be...」はドラマとともに大きな注目を浴び、同年のレコチョク2012年上半期ランキングで4冠を獲得。配信合計100万ダウンロードを越える大ヒットを記録した。2016年3月に初のベストアルバム「THE BEST あなたの主題歌」をリリース。2022年2月にメジャーデビュー10周年を記念したオールタイムベストアルバム「10th Anniversary Best~私たちの主題歌~」を発表した。同年3月にはキャリア初となる東京・⽇本武道館でのワンマンライブを行う。
Ms.OOJA | ミス・オオジャ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN