2021年2月にメジャーデビュー10周年を迎えたMs.OOJAが、アニバーサリーイヤーの締めくくりとしてオールタイムベストアルバム「10th Anniversary Best ~私たちの主題歌~」をリリースした。
これまでリリースされたシングル曲を網羅したDISC 1、ファンの人気を踏まえてMs.OOJA自ら収録曲をセレクトしたDISC 2、そしてカバー曲とコラボ曲をまとめたDISC 3の3枚組で全49曲が収められた本作。そこには歌い続けることだけに向き合い、歌とともに生きてきたMs.OOJAの輝かしい軌跡が凝縮されている。3月27日にはキャリア初となる東京・日本武道館でのライブも決定し、「ここでMs.OOJAの第一章が完結する気持ち」と語る彼女に、10年分の歩みと未来への展望についてたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / もりひでゆき撮影 / 斎藤大嗣
ファンと一緒に年齢を重ねていけるのがすごくうれしい
──昨年2月にデビュー10周年を迎えたお気持ちを改めて聞かせてください。
本当に早かったですね。「10年ってこんなにあっという間に過ぎていくんだ」と素直に思います。同時に、ここまでの期間の中で自分は本当にいろんなことをやってきたんだなって、今回のベストアルバムを作る過程で感じることもできました。
──10年間の歩みは、デビュー当初に思い描いていたものと比べてどうでした?
デビューした当初は、自分が夢見ていたアーティスト像というものがあって。バーンと一気にスターダムを駆け上がっていくと思っていたんですよ(笑)。でも実際はコツコツと1つひとつのことを積み上げながら進んでいくのが大切で。その現実を感じながらの10年でした。そういう意味ではデビュー前に持っていたイメージとは違っていたかもしれません。
──とは言え、デビュー翌年にリリースされた5thシングル「Be...」が大ヒットし、一気に注目されましたよね。
そうですね。「Be...」でヒットを経験できたのはすごくラッキーだったと思います。あそこでいろんな景色が変わりましたからね。「これがメジャーってやつか」みたいな(笑)。のちのち、その経験によって苦しんだ部分もあったんですけど、それがあるのとないのでは今の自分の考え方に違いが生まれていたかもしれないです。
──先日、BSフジおよびフジテレビ系列で放送されたドキュメンタリー番組「Ms.OOJA はじまりの時 -Listen to Voice-」では、「Be...」以降の苦悩が語られていました。
「Be...」がヒットしたあと、それまでと同じように活動していたはずなのに翌年のライブでは客席が半分しか埋まらない状況だったんですよ。もちろんそれはその当時の自分の不甲斐なさに要因があったとは思うんですけど、自分としてはかなりショックで悔しい出来事で。ただ、私は比較的デビューが遅かったので、それ以前に社会経験をそれなりにしていたんです。だから、そういったつらい状況も乗り越えられたんじゃないかなと思いますね。もっと若い頃にメジャーデビューしていたら、私はそこでダメになってしまっていたかも。
──10年間の中で築き上げてきた“Ms.OOJAらしさ”はどんなものだと思いますか?
私の歌を聴いてくれる方に寄り添いながら一緒に生きて行くことがMs.OOJAらしさじゃないかなと思っていて。生きていればいいことも悪いこともありますけど、皆さんと一緒に歩き、成長していきたい気持ちがこの10年で特に強くなった感情かもしれません。ファンの方と一緒に年齢を重ねていけるのが私はすごくうれしいんですよ。高校生の頃に私の曲を聴いてくれていた子が今20代後半になって、結婚して家族を作ったりしている。そういう人たちの人生の中に入り込む歌を、私はこれからもずっと歌い続けていきたいんです。
──歌に対する思いに変化はありますか?
デビューの頃から「歌唱力が高い」と言っていただくことは多かったんですけど、自分ではまったくそうは思っていなかったんです。いろんな面で悩みながら歌ってきた時期がけっこう長かったというか。そこに多少の変化が生まれたのは、ここ2、3年のことじゃないかな。「少しうまくなってきたかな」「この歌いいじゃん!」と自分で思えるようになったのは本当に最近のことで。もちろんまだまだ悩みは尽きないので、どうやったらもっといい歌を歌えるようになるかを常に探索している感じではありますね。
──ボーカリストとしてのスキルを磨き続けてきた10年でもあったと。
そうですね。日頃からのトレーニングはもちろん大事なんですけど、私の場合は本番に勝るトレーニングはないと昔から思っていて。私の歌をちゃんと受け止めてくださるファンの方が目の前にいるところで歌うことを、とにかく修業のように続けてきた結果、最近はより楽しみながら歌えるようになりました。
──1つのジャンルにとらわれず、さまざまなタイプの曲を歌ってきたこともスキルアップに影響がありそうですよね。
それもありますね。どんな曲が自分に合うのかを、実践を通して試していたというか。今こうやってベストアルバムで振り返ってみると、「ちゃんとやってこられたな」とすごく思います。当時は迷いながら歌っていた曲でも、やっと今「いいじゃん」と思えるようになったものがけっこう多かったりもしますし。「こういう曲を歌ってみたらどう?」っていう周囲の人たちからの提案に対して、柔軟に応えていくスタンスでやってきてよかったなと思いますね。
なかなかいい曲がそろっているじゃないか
──今回リリースされたベストアルバムは全49曲収録の3枚組という大ボリュームになっていますね。まさに10周年にふさわしい内容だと思います。
私はデビューの頃から特にリリースを多くさせてもらってきたアーティストだと思うので、カバーも合わせると200曲くらいのレパートリーになるんです。だから3枚組とは言え、選曲はなかなか大変ではあったんですけど(笑)。
──DISC 1はシングルとしてリリースされた楽曲が時系列に並んでいます。時間を経ても色褪せない普遍的な魅力を感じる楽曲ばかりですね。
なかなかいい曲がそろっているじゃないかって、自分でも感じました(笑)。おっしゃっていただいたように、特にシングル曲に関しては普遍性を大事にして作った曲ばかりなので、こうやって1枚にまとめてみても違和感はあまりないですよね。時代に関係なく聴けるものばかり。曲ごとにビジュアルはけっこう変わってきましたけど(笑)。
──そのあたりはミュージックビデオをまとめたDVD(UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤に収録)で確認してもらうと楽しいかもしれないですね。
そうですね。メイクとか衣装なんかはね、「そうだよね、10年も経てば変わるよね」っていう(笑)。
──2016年3月に5周年記念でリリースされたベスト盤は「LOVE」「LIFE」「COVERS」という3本柱をテーマに選曲されていました(参照:Ms.OOJA「Ms.OOJA THE BEST あなたの主題歌」特集)。その中の「LOVE」「LIFE」に関して言うと、活動を重ねる中でその捉え方に変化が生まれていたりしますか?
年齢を重ねていくことで、LOVEとLIFEが限りなくイコールになってきている気はします。LOVEの中にLIFEがあるし、その逆もそう。その2つを切り離さず、すべてが今の自分を形作っているなと考えるようになったので、ここ最近はラブソングも応援ソングもすべてがつながってる、境界がなくなってきてるんじゃないかなと思うんです。例えば終わってしまった恋でも、あのときにあの人がいてくれたから今の自分がいるんだと思えば、それはLIFEを歌うことにもなるわけで。そうやってすべての物事に対して感謝の気持ちを持って向き合えるようになったところもあるかな。そう考えると、人間としてちょっと成長したのかなって思ったりもしますね。
──DISC 1には「30」という曲が収録されていますが、これは30歳になったときに書かれた曲ですよね?
はい。「大人になったなー」と思ってあの曲を書いたときからさらに10年経ってるという(笑)。物事はなんでもそうですけど、振り返らないとわからないことってあるじゃないですか。時が経つことで過去は変わっていくので、すべてのことに対して今この瞬間に答えを出す必要はないと私は思うんです。振り返ることで、今の自分につながる過去の意味がわかってくるわけだから。「30」はそういったことに気付かせてくれた曲でもありますね。
──曲としてその時々の思いを刻んでいくことは大事なことですよね。
そうですね。「こんなこと考えて、こんな言葉を選んでたんだ!」という発見がどの曲にもありますから。自分としても面白く振り返りながら聴けましたね。
──DISC 1で特に印象深い曲は?
なんだろうなあ。「30」とか「ANSWER」はそれこそ魔の2013年……「Be...」の翌年に出した曲なんですよ。どちらもすごく好きな曲なんだけど、当時は思うように広がっていかなかったんですよね。だからこういうタイミングで改めてお届けできるのはすごくうれしい。そこでも感じますよね。たとえうまくいかないことがあったとしても腐らず、コツコツと積み重ねていけば、絶対にあとからチャンスは巡ってくるっていうことが。無駄なことは何ひとつとしてないんだなって、すごく思います。
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とにかく楽しくて仕方がない