ナタリー PowerPush × WOWOW ミュージックスタイルJAPAN ORIGINAL LOVE
20周年記念ライブをオンエア WOWOW連動インタビュー
自分のグルーヴをいかにこのアルバムに込めるか
──1人でのレコーディングで特に苦労した点はどこでしたか?
マイクなど、機材を自分でセッティングして、自分で録音ボタンを押して、ってことをひとつひとつ全部やってると、セッティングに半日かかったり。自分でやってみるとわかるんだけど、技術的な問題、セッティングとか機材の対処にレコーディングの50%くらいの労力をとられるんです。「コンピュータ今日立ち上がんねえ」とか「この配線だと音が出ない」とか、そういうことにすごくたくさん時間をとられて。
──楽器もすべて自分で演奏したわけですよね。
ドラムはソフト音源を使いましたが、ほかは全部僕が自分で弾きました。ベースとギターとウーリッツァーとシンセと、あとテナーサックス。
──すごい(笑)。
心がけたことはね、全部手弾きでやったってことです。そしてなるべくエディットはしない。録音にはコンピュータを使うけど、楽器は昔のレコーディングみたいに頭から最後まで練習して、間違えたら弾き直すっていう、そういうやり方をしましたね。だから今日はこの楽器録るぞってなったら8時間くらい練習ですよ。弾けるまでずーっと練習して。
──でも田島さんは基本ギタリストですよね。
だから自分が思ってるキーボードを弾けるようになるまで練習して、「さあ、やるぞ!」って録るんです。
──打ち込みでやればもっと楽だったと思うんですが。
今はコンピュータのソフトで1小節ずつうまく演奏できた部分を貼り付けていけば曲ができあがって、そういうやり方が一般的になってることも多々ありますけれど、僕がやってるのは歌モノの音楽で、やっぱりね、歌モノの音楽には1曲通しての流れというか、つながっているうねりのようなものがあるんですよ。70年代までの音楽はほとんどそうやって作られていました。つまり聴く人と同じ時間の流れ方でミュージシャンも演奏し録音されていたんです。現在の便利すぎるレコーディング技術には、あえてあまり頼らないようにしました。そういう音楽が自分も好きだしね。
──あえて手間をかけて、そのやり方を選んだわけですね。
1人でやるときに手間かけるところってそこしかないんですよ。エンジニアリングの技術もそんなにあるわけじゃないし、機材も高価なスタジオにあるようなめちゃくちゃいい機材なわけじゃないから、じゃあ何が自分にできるかって言ったらミュージシャンとしての勘っていうか、自分のタイミング、グルーヴをいかにこのアルバムに込めるか。そこに賭けるしかない。だから、とにかく自分のノリを録音したかったんです。
ライブの前はとにかく練習をした
──「ORIGINAL LOVE 20th anniversary 『フリーライド・ツアー!』」が7月に終了しましたね。今回はどんなツアーになりましたか?
今回はアルバムを出す直前にツアーをやるっていう変則的な形での、新曲をメインにしたライブなので、お客さんは結構ポカーンとするだろうなと思ってたんです(笑)。でも結果的に、すごくうまくいきました。お客さんがまだ聴いたことがない知らない曲で盛り上がってもらえたっていうのは、本当にうれしかった!
──盛り上がった理由はなんだと思います?
皆さんが知らない曲でも盛り上がれるような仕掛けとかパフォーマンスをそれなりにこしらえたりしまして、それがうまくいったんですかね。
──いつもとはまた違う感じでした?
新曲が多いんで、メンバーも僕自身もライブでの演奏に慣れてないんですよ。だからとにかく練習しました。今回オルガンを弾きながら歌うのも最初は全然できなくて。練習してなんとかできるようになってね(笑)。
──田島さんにとってライブの魅力とは何ですか?
音楽やってて何が楽しいって、やっぱりバンドで音を出すのが楽しいんですよね。大きい音を出して、歌って、メンバーが応えて、アンサンブルになって、ジャムセッションして、僕はそれが一番好きです。曲作りより好き。そこには何ものにも代えがたい喜びがありますね。音楽やってる楽しさがそこに集約されてる。
──田島さんが思う、ORIGINAL LOVEのライブのすごいところってどこですか?
うーん、自分で言うのは難しいんですけど、やっぱり肉感的な歌とグルーヴですかね。いいときのライブはすごくいいです(笑)。「これはキてる!」っていう状態になりますね。
──ライブでのジンクスみたいなものもあったりします?
ゲン担ぎみたいのでしょ? なんにもないです(笑)。ゲン担ぎしてようとしてまいと、いいときはいいし、悪いときは悪い。自分の歌と演奏、メンバーとのコミュニケーションがうまくできてるかのほうが大事ですね。だからライブ前は歌詞をチェックして、リズムに合わせてギターを練習して、アンサンブルを整えて。それがちゃんとしてれば大丈夫じゃないかな。自分がちゃんとしてればメンバーもついてきてくれるし。
──いいライブをするために心がけてることはありますか? 前の日は飲まないとか。
ボーカリストだから、まあ酒は飲めないですよね。バンドメンバーは飲んでて、ずるいなあって思いますけどね(笑)。あと今回のツアーの前からジョギングを始めました。ツアーが終わってからも欠かさず走ってて。今は走るのが楽しくなってきてね。歌は声が出ないと始まらないし、ボーカリストが走るのはいいことだと思って。
CD収録曲
- フリーライド
- バイク
- セックスと自由
- カミングスーン featuring スチャダラパー
- 春のラブバラッド
- ハイビスカス
- ふたりのギター
- 海が見える丘
- あたらしいふつう
- 好運なツアー
ボーナストラック
- フリーライド(ひとりソウル・ヴァージョン)
※2011年2月8日渋谷CLUB QUATTRO「ひとりソウルショウ 東芝DAYS」 - なごり雪
※養命酒製造「ハーブの恵み」CMソング
DVD(Special Editionのみ)
- フリーライド
※2011年2月9日「ひとりソウルショウ ポニーキャニオンDAYS」
ORIGINAL LOVE(おりじなるらぶ)
1985年冬、田島貴男を中心に前身バンド「レッドカーテン」を結成。1987年にバンド名を現在のORIGINAL LOVEに改名。1991年6月にシングル「DEEP FRENCH KISS」でメジャーデビューし、1993年の5thシングル「接吻 kiss」がドラマ主題歌に起用され大ヒットを記録する。翌1994年発表の4thアルバム「風の歌を聴け」はチャート初登場1位を獲得し、一躍人気バンドの仲間入りを果たした。数度のメンバーチェンジを経て、現在は田島のソロユニットとして活動中。2011年7月に自身のレーベルよりアルバム「白熱」をリリースしている。