ナタリー PowerPush - ハナレグミ
「TOUR オアシス」オンエア記念 WOWOW連動インタビュー
「本物の音楽との出会い」をコンセプトに、毎月厳選したアーティストを紹介するWOWOWのライブプログラム「ミュージックスタイルJAPAN」。今月は、ハナレグミが2月10日、東京・NHKホールで行った「TOUR オアシス」のライブの模様が3月18日(日)24:00からオンエアされる。
このライブのオンエアを受けて、ナタリーでは「ミュージックスタイルJAPAN」と完全連動の特集コンテンツで、ハナレグミこと永積崇のインタビューを掲載する。なおWOWOWの番組オフィシャルページでは、インタビューの別バージョンが読めるので、そちらもあわせてチェックしてもらいたい。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 福岡諒祠
弾き語りにもファンキーな曲にも爆発を感じる
──アルバム「オアシス」も今回WOWOWで放送されるライブも、これまで以上にファンキーな内容になりましたね。
そうですね。確かに以前は静かな作品が多かったと思うんですけど、前作の「あいのわ」くらいから”熱”が出てきて、今回のツアーをやってるとやっぱり自分の中になんかこう動き出す筋肉があるっていうか。それはすごく感じますね。
──そういう熱のあるものをやろうというのは、当初から考えていたことなんですか?
いや、「こういうものを作ろう」って筋書きがあってこのツアーを始めたというよりは、今の自分が一番熱くなれる楽曲とメンバーを揃えて、結果どういうものができるかなっていう、そういう感じです。「行き着くところはどこだろう」って考えながらステージに立ってるというか。
──ライブを観て、すごく突き抜けた印象を受けました。
確かに弾き語りからすごくファンキーな楽曲まで、今回のツアーは今までで一番振れ幅が大きい気がしますね。
──今そういうものをやろうと思ったのは、なぜなんですか?
なんですかねえ。でも実際、弾き語りで自分の中に入っていく瞬間と、ハンドマイク持って外に向かってドーンといく瞬間っていうのは、ある意味すごくイコールというか。どっちに対しても爆発を感じるんです。とにかく思いっきり振り切ってみたい、っていうのがこのアルバム制作からツアーに続くテーマで。ゾッとするくらいの静けさと、ワーっていう高揚感。その両方をやり続けて、両方の先の先を感じてみたいっていうのは思ってます。
ライブはお客さんとの会話
──今回のツアーも、オーディエンスの反応がすごくいいですよね。皆さん思い思いに盛り上がっていて。
でもねえ、きょとんとしてる人もいますよ(笑)。でも僕はそれでも全然良くて。ライブっていろんなふうに感じてもらうものだと思うし、自分がやってるものなんだけど、なんかある意味自分にも裏切られたいっていうか、自分でも驚きたいっていうか。気付かなかった自分の感覚をステージ上で感じたいんですよね。一緒にやってるメンバーのその日の感覚を少しでも多く感じながらライブを進めていきたいっていうのも思うし。だから「ライブはこういうものじゃなきゃいけない」って決めたくない。聴き手にとっても、同じ曲がいつも違うものに感じられたらいいなと思ってますね。
──お客さんとライブを作っていくような感覚ですか?
そうですね。それはすごく感じます。「はい、次はこれを食べてね」って、できたものをフルコースで出すっていう感じじゃなくて、そこにその日ならではの要素が絶対入るから。そういう意味ではお客さんと会話しながらライブをやってるみたいな気持ちはありますね。
──バンドメンバーも皆さん、個性が強い人たちばかりですしね。
ハナレグミは毎回ツアーごとにメンバーが変わってたりするんですけど、今回はみどりん(Dr / SOIL & "PIMP" SESSIONS)と真船(勝博 / B)くんっていう強力なリズム隊がいるっていうのがまずすごく大きいですね。あと、おおはた(雄一 / G)くんは途中で弾き語りのコーナーがあったりして、ハナレグミのファンキーな部分とアコースティックな部分の両端を担ってくれてる。
──ホーンセクションもサウンドに華やかな彩りを加えてますね。
うん、今回はホーン隊を入れてやってみたいなって思って。2人と会話しながら、今までホーンが入ってない曲も一緒にライブ用のアレンジを作っていきました。
──あとエマーソン北村(Key)さんのオルガンが鳴ると、ソウル色がぐっと濃くなりますね。
そうなんですよね。エマーソンさんはエレガントさの中にどっか悪さが入ってる(笑)。ドスが効いてる感じっていうか、ちょっときな臭さがあるっていうか。ソウルの体臭がどっかにある。そういう音をイメージしてメンバーを呼んだんです。「この人の音がツンと匂ってくるといいなあ」みたいに想像しながら。
ハナレグミ
1974年東京生まれの永積崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年10月に1stシングル「家族の風景」、11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、その穏やかな歌声が好評を得る。2005年9月には東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催。台風に伴う大雨にもかかわらず約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるニューアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの日本武道館公演では約1万人の観客を圧倒するステージを披露。2011年9月には5thアルバム「オアシス」を発表している。