ナタリー PowerPush - モテキ
恋が攻めてきたッ!! 映画公開記念スペシャル
ライブやフェスに行かない人の文化も描きたい
──今回劇中で使用されている曲で、久保さんがセレクトしたのはどの曲ですか?
私が推したのは、N'夙川BOYSと前野健太とTMネットワークと星野源……そのくらいですね。Perfumeは最初「セラミックガール」を推してたのに、結局「Baby cruising Love」になったりしましたけど。っていうのを、こないだPerfumeに初めて会って伝えました。「『リニアモーターガール』のイベントのサンシャイン噴水広場の握手会以来です!」って、すごいファン全開な淀みないトークをしたんですけど(笑)。
──あはは(笑)。
そのほかは大根さんが選んだ曲が多いんです。でもみんな「久保さんだったらこれだろう」みたいなイメージが強いみたいで、幸世というものを通して私の感覚がひとり歩きしてるんだなって。
──選曲で心がけたことはあります?
映画で出てくる曲については「オシャレでカッコいいでしょ」って推してるように勘違いされなければいいなっていうのは思いますね。そういうつもりは全然ないので。
──確かに。音楽を使って自分を良く見せよう、みたいなことではないですもんね。
うん。あと例えばレーベルや会社から「この曲使ってください」とか言われることもなかったです。私たちが使いたいって思う曲を勝手に入れてるし。それが全部に優先してるから。
──映画ではカラオケのシーンがあったり、歌詞がカラオケ風に表示されたりしますが、久保さんはカラオケ文化についてはどう思ってるんですか?
あー、ミュージシャンの人ってあんまりカラオケ行かないんですよね。なんだか庶民の趣味っていう風に思われてるみたいで。でも今の若い子たちはみんなカラオケうまくて、歌うことによる自己表現って確立されてるんだなって感じます。私はマネージャーとよくカラオケに行くんですけど全然音楽の趣味は違って、マネージャーはB'z、私はeastern youth。それでも全然成立するし楽しいし。ダイレクトな歌詞の良さとかは案外カラオケで知ったりしますしね。カラオケはその曲を改めて再認識するツールだと思ってます。
──この映画はカラオケ文化に対してすごく肯定的ですもんね。
そう、ライブやフェスに行かない人の文化も描かなきゃって、映画では特にそう思います。
ナタリーを舞台にしたら最初の50ページ一気に描けた
──あと劇中にナタリーがこんなに出てくるとは思いませんでした。楽しい職場に描いてくださってありがとうございます(笑)。
あれでナタリー得するのかな? あれがお金に換わるのかよくわかんないんですけど。
──特にお金にはならないと思いますけど(笑)。東宝とナタリーの間でお金は1円も動いてないですし。
あはは(笑)。でもナタリーの認知度は上がりますよね?
──だといいですよね。そもそもナタリーを舞台にっていうのは久保さんのアイデアで?
うん、幸世を就職させたいって思ったときに「あいつどこに就職できるんだろう」って考えて「ライターかな。ライターだったらナタリーだろうな」って。ナタリーの人たちって実際にいろいろ面白いエピソード持ってるし、そういうのをどんどん入れて、出だしのところ描き始めたら「あ、いける」と思って。最初の50ページ一気に描けたんで、迷いなくこれでいこうって思いました。
──でもモデルになった身としては、映画観てるとちょっとドキドキしますけど。
ていうか冒頭のシーンで「卓ちゃん!」とか「卓也!」とか……。
──言われるたびにビクッとなって(笑)。
あそこゲラゲラ笑いますよね。ウォーターサーバの業者まで出てくるの超笑った(笑)。
──しかもナタリー編集部、本当にアクアクララ使ってるんですよね。「大根さんそこ再現したの?」って思いました。
その再現度の高さ、すごく意味あると思う(笑)。
ハラカミさんの演技が最高でした
──あと「Sense of Wonder」のシーンなんですけど……。
ハラカミさん(rei harakami)ががっつり映ってたの良かったでしょ?
──すごく良かったです。
またさりげないのがハラカミさんらしくて。幸世を心配してる感じでチラチラ見てるっていう、あの演技もう最高でしたよね。
──ハラカミさんはあの場所にたまたまいたんですか?
いや、最初はU-zhaanだけが出るはずだったんです。大根さんが「髪型がアーティストっぽいから」って言って(笑)。そしたら「ハラカミさんにも出てもらおうよ」ってU-zhaanが言ってくれて、私からもお願いして、当日いきなり出てもらうことになったんですね。ちょこっとしたシーンだからすぐ終わるかと思ったんだけど、撮影に1時間以上かかっちゃって、しかも何回も何回も同じ演技しなきゃいけないし、ビールとか飲むシーンでずっとガブガブ飲んでたら、どんどん泥酔してきちゃって(笑)。
──ハラカミさんも演技してるんですね。
してるけど、あの2人らしい雰囲気が出てますよね。
──貴重な映像だと思います。
最後もエンドロールで大きく使ってくれてて、良かったなって思うんです。
小泉今日子「空洞です」がすごく気持ちいい
──ナタリー盤のコンピ(「モテキ的音楽のススメ COVERS FOR MTK LOVERS盤」)は聴きました?
はい。KYON2の「空洞です」が良かったです。本当にぴったり。聴いててすごく気持ちいいんですよね。
──コンピの選曲をするときに「幸世だったらこれ好きだよね」とか「幸世だったらこれは聴かないよね」っていう話をしてたんです。
幸世像がひとり歩きしてる(笑)。
──そういうの作者的にはどうですか?
藤本幸世っていうピンポイントの対象者を決めることによって個性が出るっていうのが面白いですよね。例えば30代の女性に向けてとか、そういう漠然としたイメージじゃなくてもっともっと狭いところを狙うことで、ちょっとひと癖出てきて、しかもバランスがいいっていう、その感じがいいなって。
──しかも並べてみたらどの曲もすごくキャッチーなんですよね。
そうそう。やっぱ歌謡曲って素晴らしいなって思いました。「大スキ!」とか、もうあの歌詞はひねくれた生き方してたら絶対書けない歌詞ですからね。
──ほかにもグッときた曲ってありますか?
全部グッときたんだけど……。N'夙川BOYSの「目を閉じておいでよ」がびっくりするほど“男が粗野”だった(笑)。KONTAのイメージと全然違う。あとカジくんの「格好悪いふられ方」は「このアレンジで来るか!」ってビックリしたし。思ってたのと違うっていうか、勝手に今までカジくんのイメージ決めててごめんなさい、みたいな。在日ファンクのバックコーラスの女の人の声をすごい低く歌ってるのとかもゲラゲラ笑っちゃったんですよね。
──さよポニ(さよならポニーテール)は最初ジュディマリをカバーしてもらったらどうかなって思ってたんですけど、本人たちがいろいろ考えた末「『SAY YES』をやりたい」って言ってくれて「それだ!」って。
いいですね。「SAY YES」をセレクトするのって、静かに狂ってる感じがして(笑)。「大スキ!」のカオスぶりもそうだけど、このカバー盤、全体的に狂ってて、そこがすごいと思います(笑)。
- 監督・脚本
- 大根仁
- 原作
- 久保ミツロウ
「モテキ」(講談社イブニングKC) - キャスト
- 森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子、新井浩文、金子ノブアキ、リリー・フランキー
- オープニングテーマ
- フジファブリック「夜明けのBEAT」
- メインテーマ
- 女王蜂「デスコ」
© 2011映画「モテキ」製作委員会
2011年9月26日更新