ナタリー PowerPush - MO'SOME TONEBENDER

やりたい放題!自由からもはみ出た爆発炎上アルバム完成

まとまらないほうがいいんじゃないか

──話を聞いてみても、強固なコンセプトがあったわけでもなく、言ってみれば成り行きまかせで作っていって。最終的にまとめ上げるときには何を考えたんですか?

うーん、それもねえ、メンバーそれぞれで意見が分かれるところじゃないかと思うんですけど、オレはもう、まとまらないほうがいいんじゃないかと思って。まとめ上げるというよりも録って出し、ぐらいの。なんでもいいよ、前から食ってけ、みたいな。

──居酒屋のメニューみたいな、なんでも出てくるという。

そうそう。

──そこで意見が分かれた?

オレはそんな感じだったので(自分の意見を他のメンバーに)ごり押しすることもなく。曲順とかも勇にまかせたし……。

──そこで武井(靖典)くんも含め、3人でどういうコンセンサスがあったのか。

ああ……どうなんでしょうねえ。これまでだったら、同じようにバラバラとはいえ、そういうすりあわせ作業を何度もやって落としどころを探す感じだったんですけど、今回はそれすらしてない感じがありますねえ。

──「できなかった」んじゃなく「しなかった」。

あのね、オレはもう、気分的になんでもOKと思ってた。何が来てもOKと。勇と武井が作る曲は。

──3人のやりたいことやセンスみたいなものがぐちゃぐちゃになって爆発炎上してるみたいな、そういうものが今のモーサムらしいと。

百々和宏

そうですね。なんやろ……なんかね、好き勝手やらせたほうがイキイキしてるんですよ連中は(笑)。それをここ1年ぐらい……ステージ上とかでね、楽しそうにやってるのを見て痛感したんですよ。……なんかこう、バカなことを思いっきり本気でやるっていう。ステージで土管叩いてたり、ベーシストがステージで演奏してなかったりとか……。

──それどころかステージにいなかったり(笑)。

(笑)。それをねえ、「ロックバンドたるものステージにいなさい」とか言っても仕方ない。

──だいたいドラマーがドラムやめて前に出てきてギターを弾き始めた時点で、もうなんでもアリになってるじゃない?

わははは!(笑)

──何があっても誰も驚かないっていう。

そうね。そういうのがここ2年ぐらいであったんで、アルバムもそういう空気感をビンビンに感じさせるようなものになりましたね。最近のライブの空気感とか、そういうものをアルバムに入れたいなと思ってやってました。

──武井くんも今回はがんばって何曲か書いてますね(※作詞2曲・作曲2曲)。

それもね、面白がって「やれやれ」とけしかけたら、どんどん出てくるんですよヤツは。こういうふうにやれ、ああいうふうにやれっていうとダメなんですけど。とにかく「ネタお願いします」って頼むとすごいいっぱい考えてきて。だからもう、こっちは「どうぞご自由に、どんどんやってください」って言うだけ。

昔はもっと自分を追い込んでた

──でも今までのバンドの歴史の中で、いろいろぶつかってきたこともあったわけでしょう。それが最近になって、放任したほうがいいと思うようになった。

うんうん、そうですね。

──そこらへんで、百々くんのバンドに対するスタンスや距離感が変わってきたところはあるんですか。

うーん……まあその……だいぶ変わってはいますよ。やっぱりねえ、昔はもっとガチガチに、こうしなきゃああしなきゃって思ってやってたところもあります。例えば……モーサムでライブやるときにはピリピリしなきゃいかん、みたいな……全身全霊込めなきゃいかんと思ってた。レコーディングとか歌詞を書くときも、追い込んで追い込んで、みたいなところはありました。

──今はだいぶ肩の力が抜けた?

百々和宏

……て言われるとちょっと違うなと思うんですよね。モーサムで完全にリラックスするなんて、多分一生ないと思うんで(笑)。なんでしょうね……オレ以上に、ほかのメンバーが素になってる気がしますね。なんか、役作りしてない感じというか。

──前はもっとヨロイカブトを着て……。

初期はほんとそうでしたね。

──ヨロイカブトでぶつかって、危なっかしいってみんなわかってたよね。だから全然関係ないオレが、見ず知らずの一般のファンの人に「モーサム大丈夫なんでしょうか?」って訊かれちゃうっていう(笑)。

あははは! ほんと?(笑)

──そんなこと訊かれてもオレ知らないし!(笑)

ああ、なんか近いバンドが解散したりすると、だいたい次はモーサムだって言われるんだよね(笑)。「モーサムは大丈夫ですか」って訊かれたことあるなそういえば(笑)。

本気でモーサムをやると笑いが起きる

──まあ、そうしてガチガチやってた感じはスリリングな反面、危なっかしさにもつながるわけで。それとは違うモードが出てきたってことですかね。

うーん……そう……なのかな。やっぱり変わってきてますね。今にして思えば、アメリカツアーに行ったのがデカかった気がしますね。昔は、なんかしでかそうと思ったら、客に恐怖を感じさせるような音量出したりとか、勇が突然シンバルを投げ出したりとか、わりと殺気立つ方向に行ってた気がするんですけど……今はそうはならないですね。なんかしでかしてやろうと思っても。多分それは、さっきも言ったとおり、オレなんかより勇と武井のキャラがどんどん出てきたからだと思うんですけど。

──彼らがヨロイカブトを捨てて素になることで、バンド内の雰囲気も変わってきた。

そうですね、うん。

──こないだロフトプラスワンでトークショーやったときも、勇くんや武井くんの話題が出ると客席から笑いが起こってましたね。そういうバンド内の雰囲気の変化が伝わってるんじゃないですか、お客さんに。

そうだね! 九州人のメンタリティで、本心じゃないけど「ケンカばかりする」とか「あいつ大嫌い」とか、半分ギャグで言うんですよ。以前はそれがギャグと受け取ってもらえなかったんだけど、最近はそこで笑いが起きるようになってきた。それはいいことかもしれないですね。

──前から言ってますが、モーサムのいいところって、カッコよくてすごいんだけど、どこか笑えるところだと思うんですよ。このアルバムなんてまさにそうで。

うんうん。なるほど。

──その突き抜け方というか、コントロールされてない感じ。

百々和宏

そうですね。モーサムで音楽作って演奏して、というのを本気でやれば笑いが起きるんだなっていうのは最近気付いたかもしれないですね。アメリカでやったときも、こっちはアウェイのつもりでささくれだった気持ちでやっていたんですよ。昔東京に出てきてガーッとやっとったら、客がもうシーンとして。張り詰めた空気が漂ってて、そのときぐらいの気分でアメリカに乗り込んでいったんですけど、全然客席の空気がそうはならないんですよ。なんじゃこいつらオモシレー、みたいな反応。ギャアギャア言ってて。そういえば最近は日本でもどの地方に行ってもそういう雰囲気になってきてる。これはオモロイなあ、と。そういう、この1、2年ぐらいのライブの空気感が、アルバムとバンド内部の雰囲気やメンバー間の関係に影響を与えてるかもしれないですね。

ニューアルバム「Strange Utopia Crazy Kitchen」 / 2012年7月18日発売 / 日本コロムビア

CD収録曲
  1. Door
  2. Shining
  3. Cat park
  4. Punks is already dead
  5. communication
  6. happy new year
  7. farewell party
  8. 24 hour fighting people
  9. bone head dandy
  10. ElectBoys
  11. Beach Side Moon
  12. Metaluca
  13. Anywhere (But Here)
初回限定盤 DVD収録内容

※2012年4月に都内某所にて行われた50名限定シークレットライブから下記楽曲の映像を収録。

  1. introduction(OUTDOOR~Young Lust)
  2. カム
  3. Metaluca
  4. NO WAY CITY
  5. L.O.V.E.
  6. Shining
  7. TIGER
  8. 凡人のロックンロール
  9. BIG-S
  10. ハレルヤ(THE DEADS)
  11. DRUM SONG
  12. ラジカルポエジスト
  13. HigH
  14. DUM DUM PARTY
Strange Utopia Crazy Kitchen Tour
  • 2012年9月16日(日)千葉県 千葉LOOK
  • 2012年9月22日(土・祝)宮城県 仙台MACANA
  • 2012年9月23日(日)新潟県 新潟CLUB RIVERST
  • 2012年9月25日(火)北海道 札幌BESSIE HALL
  • 2012年9月29日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2012年10月1日(月)香川県 高松DIME
  • 2012年10月3日(水)鹿児島県 鹿児島SR HALL
  • 2012年10月4日(木)福岡県 DRUM Be-1
  • 2012年10月6日(土)岡山県 岡山PEPPERLAND
  • 2012年10月7日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2012年10月8日(月・祝)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2012年10月13日(土)東京都 LIQUIDROOM ebisu
MO'SOME TONEBENDER(もーさむとーんべんだー)

1997年に福岡で結成されたロックバンド。メンバーは百々和宏(Vo, G)、武井靖典(B)、藤田勇(G, Dr)の3名。年間100本に達するほどのライブ活動を行い、2001年にはアルバム「HELLO」でメジャーデビュー。迫力あるロックサウンドで高い評価を獲得している。ダイナミズムあふれるライブパフォーマンスには定評があり、各地のフェスにも精力的に出演。2007年4月には初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブも成功させた。その後2年間にわたって試行錯誤を重ね、2010年からはドラマーだった藤田がギタリストにパートチェンジ。現在はサポートドラマーを加えた4人編成でライブやレコーディングを行っている。