ナタリー PowerPush - MO'SOME TONEBENDER

やりたい放題!自由からもはみ出た爆発炎上アルバム完成

MO'SOME TONEBENDER、1年7カ月ぶりの新作「Strange Utopia Crazy Kitchen」がリリースされる。百々和宏(Vo, G)のソロアルバム発表、藤田勇(G, Dr)のART-SCHOOLへのサポート参加など、バンド外の活動も目立っていただけに、予想以上に早く完成したというのが正直な感想だが、中身もまた予想をはるかに上回る痛快そのものの快作に仕上がった。渦巻くエネルギーのカオス状態を突き抜けたような爽快感に、これぞモーサムと快哉を叫ぶしかない。モーサムしかできない、やろうとも思わない大傑作の誕生である。

百々のソロと制作進行が一部重なっていたこともあり、藤田が全13曲中8曲を手がけ制作の主導権を握ってはいるが、アナーキーでカオスなのに不思議な統一感もある本作は、メンバー全員の意識変化とバンドの成長がなくては完成し得なかったはずだ。百々に話を訊いた。

取材・文 / 小野島大 インタビュー撮影 / 佐藤類

アルバムの構想は練ってない

百々和宏

──素晴らしく痛快なアルバムができました。

ありがとうございます。なんか(Twitterで)つぶやいてましたね。「売れないだろうなあ」とか(笑)。

──(笑)そんなこと言ってないよ! でも意外に早く完成しましたね。

夏ぐらいまでには出したいねって話は去年からしてました。

──ソロ出したばかりだし。

ソロがずいぶん遅れたからね。

──ああ、予定より遅れたから結果的に発売日が近接したってこと?

そうそう。でもそのおかげで、モーサムは停滞しないで動いてる印象になったでしょ。

──制作はいつ頃なんですか。

去年からずっとコンスタントにやってましたね。曲作り、レコーディング、ライブ、またレコーディング……という具合に。

──アルバムの構想はかなり前から?

いや、だから構想って練ってないんですよ全然。こんなアルバムを作りたいとか、そんな話は一切してない。

──一定のコンセプトの元に作るのではなく、思いつくままに曲を作ってレコーディングして。

うん、だいたいハナから決めて作り始めるってことはなくて。メンバー全員が曲を持ち寄って、なんとなくそこで気分みたいなものがわかるんですよ、出てくる曲で。んで「ああ、こんな感じかなあ」と全員認識しつつ、「じゃあこういう曲を出そうかな」とまたデモを作ってきて……という感じで作っていくんですけど。今回は曲作りを始めたのが結構さかのぼるんで、「よっしゃアルバム作るぞ」ってつもりで作ってないんですよ。それで「いろんな曲が出てくるなあ」と思ってた。でもまあ曲が溜まってくればアルバムの形も見えてくるだろうと思ってやっとったら、いつのまにかアルバム完成してました(笑)。

ソロとバンドの切り替えは簡単だった

──百々くんのソロと時期が近いから百々くんの曲が少なくなって勇くんの曲が多くなったと解釈してたんですが、それはたまたま、ということですか。

いや、それもありますよ。結構並行してやってたんで、大変だったし。ウフフフ(笑)。

──以前、勇くんが主導権取って作った「C.O.W.」(2007年リリース)みたいに「今度はオレがやる」「じゃあお前がやれ」みたいな話があったわけではなく?

百々和宏

いや、あのときとは全然違いますね。同じスタジオのビルの上と下で、ソロとモーサムのレコーディングを並行してやってたときもあって。ちょうど(原田)郁子ちゃんが歌いに来てくれたときかな。郁子ちゃんの歌入れが終わって戻ったら、曲が完成してたりとかね。

──やりにくくなかったですか?

うーん……まあモーサムはモーサムなんで……。

──あまりにも音楽性が違いすぎるから、切り替えるしかないだろうし、切り替えられるんだろうけど。

(笑)。それは切り替えられましたよ、わりと簡単に。レコーディングはまだいいんですよ。ライブは時期が近いと大変ですね。

──ああ、ライブは今、完全に並行してやってますしね。

そう。結構オレ……多重人格者やと思う(笑)。

──じゃあ、ちゃんと時期を離す予定だったのが、ソロ制作の遅れで一緒になっちゃって。

まあ、オレの計画性のなさが原因で……。

──んー、結論から言えばそういうことになるんだろうけど(笑)。

ぐふふふふ(笑)。

──でもそうなってしまったおかげで、かえってモーサムでやるべきことが明確になったというのはあるんじゃないですか?

うーん、そうですね。今回はそう思ってやったところはあります。ただモーサムの場合、明確になったと思ったら数カ月後に「あれは間違ってた」というのが、よくあるので(笑)。

──「あのときはそう思ってたけど今は違う」みたいな?

そうそう。

──でもそれって普通にあることじゃないのかなー。

そう?

──まあモーサムは少し極端かもしれないけど(笑)。

そうそう(笑)。

ニューアルバム「Strange Utopia Crazy Kitchen」 / 2012年7月18日発売 / 日本コロムビア

CD収録曲
  1. Door
  2. Shining
  3. Cat park
  4. Punks is already dead
  5. communication
  6. happy new year
  7. farewell party
  8. 24 hour fighting people
  9. bone head dandy
  10. ElectBoys
  11. Beach Side Moon
  12. Metaluca
  13. Anywhere (But Here)
初回限定盤 DVD収録内容

※2012年4月に都内某所にて行われた50名限定シークレットライブから下記楽曲の映像を収録。

  1. introduction(OUTDOOR~Young Lust)
  2. カム
  3. Metaluca
  4. NO WAY CITY
  5. L.O.V.E.
  6. Shining
  7. TIGER
  8. 凡人のロックンロール
  9. BIG-S
  10. ハレルヤ(THE DEADS)
  11. DRUM SONG
  12. ラジカルポエジスト
  13. HigH
  14. DUM DUM PARTY
Strange Utopia Crazy Kitchen Tour
  • 2012年9月16日(日)千葉県 千葉LOOK
  • 2012年9月22日(土・祝)宮城県 仙台MACANA
  • 2012年9月23日(日)新潟県 新潟CLUB RIVERST
  • 2012年9月25日(火)北海道 札幌BESSIE HALL
  • 2012年9月29日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2012年10月1日(月)香川県 高松DIME
  • 2012年10月3日(水)鹿児島県 鹿児島SR HALL
  • 2012年10月4日(木)福岡県 DRUM Be-1
  • 2012年10月6日(土)岡山県 岡山PEPPERLAND
  • 2012年10月7日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2012年10月8日(月・祝)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2012年10月13日(土)東京都 LIQUIDROOM ebisu
MO'SOME TONEBENDER(もーさむとーんべんだー)

1997年に福岡で結成されたロックバンド。メンバーは百々和宏(Vo, G)、武井靖典(B)、藤田勇(G, Dr)の3名。年間100本に達するほどのライブ活動を行い、2001年にはアルバム「HELLO」でメジャーデビュー。迫力あるロックサウンドで高い評価を獲得している。ダイナミズムあふれるライブパフォーマンスには定評があり、各地のフェスにも精力的に出演。2007年4月には初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブも成功させた。その後2年間にわたって試行錯誤を重ね、2010年からはドラマーだった藤田がギタリストにパートチェンジ。現在はサポートドラマーを加えた4人編成でライブやレコーディングを行っている。