ナタリー PowerPush - MO'SOME TONEBENDER

MO'SOME TONEBENDERついに帰還!2年の“葛藤”を経て得た答え

同じことをもう一度やればバンドが終わりに向かう

──曲作りは順調にいったんですか?

じゃあ曲作りましょうってなったけど、まだ引きずるものがあって。去年は俺、曲を作ってもモーサムの制作現場には持っていってないんですよ。モーサムのアルバムが出ないなら、ソロを作ろうと思って。言っちゃいますけど、11曲くらい作ったんですよ。

──へえ! 明確にモーサムのためじゃなくて、ひとりで?

デモ状態のままで、完全には作ってないけどね。だからモーサムは、勇が自分のモードをはっきり提示してくるまでは様子見というか。そこまで言うんなら出してみろと。

──「お前は何がしたいんだ?」と。

インタビュー風景

そうそうそう。で、ハードな曲を作ってくるけど、まだまだテンション低いなとか。リハで合わせても、勇もしっくりこなくてまだまだ吹っ切れてないなっていうのが続いて。それで、4人編成でライブすることになったんですよ。

──ポップな路線をもっと突き詰めようと思ったけど、なんとなくそういう気にもなれず。といってガンガンハードな方向に行く踏ん切りもつかずってところですか。

うん。それでね、ハードにやるといっても、3人でライブでドカンと盛り上がる、リフをガンガン弾くような曲を作ろうとすると、これまでのモーサムにあったような曲になったり。それが一番吹っ切れなかった理由かな。

──前にやったことがあるような感じだなって?

モーサムで同じことをもう一度やるのは、バンドが終わりに向かうというか。

──過去2枚続けて同じようなアルバム作ったことないもんね。

それがイヤだったんですよね。ずっと「初期衝動とか糞くらえ!」ぐらいの30代だったので……見えたんですよ、雑誌の誌面が。この状態のままでアルバムを作ると「原点回帰」「初期衝動」って書かれるなって。そういうのがモーサムは嫌いなバンドなので。それで、最終的にサポートメンバーを入れたいって話は、実は今に始まった話ではなかったんですよ。勇がそれをやりたがって、そのたびに封印してきたんですけど。

──自分でステージの前に出てきて、ガンガンとギター弾いてやりたいと。

「SING!」のときもそうだったんですけど、結局シーケンスに頼らざるを得ない。ビートはいいにしても、上モノのサンプラーだシンセだっていうのが全部入ると、音だけ聴くと厚みがあるんですけど、ライブの必要ないっていうか、自分らで乗りこなしてる感やライブならではの手応えがないんですよ。で、今回ばかりは俺もヤバイなって思ってたんで、じゃあサポートドラマーを入れようと。

今のモーサムはパーンと弾けて四方八方に飛んでいく感じ

──でも、相当大きな変化でしょ。

まあね。ドラマーが前に出てくるっていうのは面白いですから。モーサムじゃないとありえんなあと。

──1人メンバー増えるだけでも相当な変化だけど。

キーボードやサイドギターが入るとかじゃないもんね。

──彼は前からそれをやりたがってたわけだ?

インタビュー風景

うん。もともとモーサム結成時、勇はギターでしたからね。

──ああ、そうだったね。

だけどこれは賭けでしたね。誰にも言ってないけど、これでしょぼいライブ10本続いたらもう辞めようと思ってたし(笑)。それが去年の年末から今年の頭くらいかな。

──俺は5月22日(原爆オナニーズのレコ発ライブのサポート)に渋谷La.mamaで初めて4人編成のモーサムを観て、「何じゃこりゃ!?」ってびっくりして。こういうモーサムを聴きたかったって思ったもん。

あれはスイッチが入ったライブでしたね。実際、あの後に曲がバーッとできたし。

──4人でのライブは、手応えが大きかった?

うん。4人から出る……まだグルーヴとまでは呼べないけど、なんやわからんエネルギーがカオスな感じで。でも、正直に言うとデカい箱でライブするとボロが出るんやけど(笑)、あとは経験かなって。そのへんは言い出しっぺの勇も、フロントに出る男としてもっと自覚を持ってほしいね。

──前にも話したと思うけど、ポップなモーサムは人によっては好き嫌いがあっても、こういうモーサムを嫌いな人はいないよね。

もとから知っとる人はね。

──4人になって手応えを得たその勢いのままに、曲がガンガンできるようになって。そうすると、当然ソフトな方向やポップな方向にはいかないよね。

うん。このまま出しゃいいんだと思って。

──それは昔持っていて忘れていたものを思い出したって感じ? それとも新しい感覚なの?

新しい。初期衝動とか原点回帰とか嫌いだから。あのね、初期の頃のモーサムって、強くなるために3人で塊になって突破しようとしてたんですね。でも、今は逆にパーンと弾けて四方八方に飛んでいく感じ。

──エネルギーが四方八方に飛び散って、熱い飛沫が飛んでくるような感じって、すごくスリリングだしカッコいい。

だからね、クオリティは以前よりも下がってるんですよ(笑)。そりゃドラムが替わったし、すぐにまとまるわけない。でも、この状態をそのまま見せるのは一番わかりやすいというか、今のモーサムの見せたいモードだなって。トラブったらトラブったでそのままやりきったり、ステージ上でこけてもギターを弾き続けるとかね。

ニューアルバム「STRUGGLE」 / 2010年12月8日発売 / 2940円(税込) / 日本コロムビア / COCP-36552

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Hammmmer
  2. youth
  3. Junk
  4. けだるいDays
  5. Drum Song
  6. 教祖様はスレンダー
  7. PURR
  8. アイデンティティ
  9. Black In,Black Out
  10. 七月二十日
  11. Kingdom Come
MO'SOME TONEBENDER(もーさむとーんべんだー)

1997年に福岡で結成されたロックバンド。メンバーは百々和宏(Vo,G)、武井靖典(B)、藤田勇(Dr/現在はG)の3名。年間100本に達するほどのライブ活動を行い、2001年にはアルバム「HELLO」でメジャーデビュー。迫力あるロックサウンドで高い評価を獲得している。ダイナミズムあふれるライブパフォーマンスには定評があり、各地のフェスにも精力的に出演。2007年4月には初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブも成功させた。その後2年間にわたって何度も試行錯誤を重ね、2010年に精力的な活動の再開を宣言。ドラマーだった藤田がギタリストにパートチェンジし、現在はサポートドラマーを迎えた4人編成でライブやレコーディングを行っている。