今の音楽シーンって“あるようでない”
──Satoshiくんのドラムはどんなことを意識しましたか?
Satoshi あんまり考えずに「こういう感じ」って言われたのをニュアンスでまずはやってみるって感じ。でも、空気感でだいたいわかるんで、あんまり直しもせず、わりとツルって録れました。それは前からそうなんですけど。
──改めてですけど、モップの曲作りって、まずはかっちりデモを作るんですよね?
George DAWトラックでできあがってて、それを生に差し替える作業をします。ギターとベースは家で録っちゃうんで、最後にドラムなんですよ。土台となるドラムが最後っていうのは珍しいと思うんですけど、ドラムでアクセントを付けられるんで、それで面白くなるのかなって。なので、ドラマーにドラマーすぎる考え方は持ってもらいたくなくて、「この曲をよくするためにある楽器」みたいな立ち位置でドラムを使いたいんですよね。
──ちなみに、トレンド的なことで言うと最近エレドラを使うバンドが増えていて、モップも音楽性的には使ってもよさそうだけど、生にこだわりがある?
George 今回はこじんまりしたものは作りたくなくて、ダイナミクスを出したかったし、Satoshiは生のほうが得意なんで、エレドラは考えなかったですね。ただ「Hooligan」は完全に打ち込みなんです。前作に家で作ったアシッド的なテクノ(「Acid Pilot」)を入れて、自分たちのルール的にそれもOKになったんです。バンドサウンドのことを考えずに作れるようになったから、すごい楽になって、でもライブはそれを生で再現する楽しさもあって。
Kikuchi あと今回ミックスも今までとはやり方を変えました。これまではマスタリングに投げる段階で、けっこう音圧を突っ込んだ状態でお願いしてたんですけど、そうじゃなくてスッカスカの状態で投げたら、それがめちゃめちゃハマって。海外は今けっこうスカスカなの多いんで、音に関しては世界の流行りをちょっと汲んでやった部分もあります。マスタリング自体も今回初めて実機を使ってて、それでめっちゃ変わりましたね。
George 結果的に、カウンター的なものができあがったよね。今の音楽シーンって“あるようでない”じゃないですか?「なんのジャンルがカッコいい」とかよりも「あのアーティストがカッコいい」の方が大きくて、「このジャンルが絶対流行る」みたいなのは見えづらくなってるなって。そこは無視した作品ができたと思うので、それに関しては納得いってますね。
ライブがいいってことは、ミュージシャンとしてもいい状態
──アルバムタイトルは「Health」で、3曲目の「mental」含め、レーベル・コドモメンタルとの関連を想像しました。
George 僕らとして、健康的な作品ができたなって(笑)。「間違いが正解」みたいな話なんですけど、こんな作品を出せるバンドってそんなにいないと思うし、自分で言うのも変ですけど、僕らだから許されてるところもあると思う。そういう意味で健康的になれたし、これからまたやっていけるなって。「mental」に関しては、最初「HARD」ってタイトルだったんですけど、「super yeah」と「HARD」って小学生レベルだなって思って、タフな曲だし、「mental」でいいかって。アルバムタイトルと合わせると「メンタルヘルス」になるっていうのはあとから気付いて「やっちゃったな」って思ったけど、後日談としてアリかなって(笑)。
──レーベル名とのリンクも偶然だと。ちなみに、「Gabber Juice」のMVはレーベルの代表によるプロデュースだそうですが、どんなやりとりがあったんですか?
George 事務所で「こういうのどう?」って提案してもらって、「いいんじゃないですか」って。スケボーを使うアイデアも出してくれて、楽曲の認識は近いなって思ったし、この曲のMVはとにかくパンチを出せればいいなって思ったので、基本お任せしました。
──MVでは2組のモップが向かい合って演奏しています。今日話をしても思ったんですけど、やっぱりモップはトレンドだったり、外の動きと戦ってるわけじゃなくて、自分自身の尺度で戦ってる。それがあのMVにも表れていた気がして。
George 「こういうことやったらカッコいいって思われるだろうな」みたいなことはやりたくなくて、僕はやっぱりライブがすべてだと思ってるんです。ライブがカッコよくなかったら、トレンドを追う意味も何もない。「ライブでやるとカッコいいから、こういう曲を作る」っていう、そういうミュージシャンのほうが僕は好きだし、自分もライブで完成する曲を作りたい思いが強いんですよね。僕は今年110回くらいステージに上がってるんですけど、ライブがいいってことは、ミュージシャンとしてもいい状態なんですよ。だから今回、ライブでやれるような曲しか作りたくないっていうのもあって。
──ライブがいい状態っていうのが、ミュージシャンにとっての健康的な状態だと。
Kikuchi 最近はライブの次の日、絶対首が筋肉痛ですけどね。曲が速くなって、「mental」とかやるとピックの減りがめっちゃ速いし。
Hitomi でも、速いと単純にテンション上がります。疲れるけど。
Satoshi そういうほうが、終わったあとのビールがうまい(笑)。
──健康的じゃないとやれないって話かもしれませんが(笑)、今バンドの状態はすごくいいと言えそうですね。
George 今はもう次の作品に取りかかってるんですけど、どんどん自分で自分のリミッターを外せてるのがいいなって。昔は変な制限をかけてたけど、今はなんでもやれそうな気がする。もちろん、自分たちらしいものを作ることは変わらずに、とにかく飛び抜けたものを作りたいと思ってて。その意味でも、今回は満足いくものができました。
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モップを愛する音楽仲間から「Health」リリースに寄せて
- MOP of HEAD「Health」
- 2018年11月7日発売 / コドモメンタルINC.
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[CD] 1500円
CMI-0044
- 収録曲
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- super yeah
- Gabber Juice
- mental
- Hooligan
- Aurora246
- MOP of HEAD(モップオブヘッド)
- 2006年に結成された、George(Machine)、Kikuchi(G)、Satoshi(Dr)、Hitomi(B)からなる4人組インストバンド。2011年7月に1stアルバム「RETRONIX」、2013年5月に2ndアルバム「BREAKING OUT BASIS」、2015年7月に3rdアルバム「Vitalize」を発表した。2016年7月にはUCARY & THE VALENTINE、小林要司(Large House Satisfaction)、LEO今井、YOCO ORGAN、渋谷龍太(SUPER BEAVER)とタッグを組んだ「and Touch You」、2017年7月にはUCARY、向井太一をゲストに迎えた「Aspiration」と、ボーカルトラックを収録したミニアルバムを発売。2018年にコドモメンタルINC.に移籍し、インストに立ち返った3rdミニアルバム「Health」をリリースした。