歌の代わりに何で衝撃を与えるか
──Georgeくんはバンド外のサポート仕事が多いですよね。もともとは大学でジャズを勉強していたそうですが、昔からセッションが好きだったんですか?
George 僕、セッションはまったく……興味がないと言うよりは、作ることのほうが好きなんです。ほかのアーティストのライブのサポートをするときも、僕は単純にプレイヤーとして参加してるとはあんまり思ってなくて、どっちかって言うと、ライブを作るスタンスでいろいろやらせてもらってることのほうが多いです。僕ジャンルが決まらな過ぎて、最近はそれがすごいことになってるなって自分でも思うんですけど、基本的に必要とされてるのは「鍵盤プレイヤー+何か」なのかなって。
──具体的に「このアーティストのサポートは演奏だけでなく、こんなこともしてる」みたいな例を挙げてもらうことはできますか?
George 向井太一くんは、TOY'S FACTORYに入る段階で僕も一緒にライブをするようになったので、今の形態をゼロから作っていった感じはあります。ライブの見え方として、普通のバンドセットよりは、鍵盤とPC回り……マシンがいっぱいある中で、ドラムだけいるっていうのが絵的にカッコいいと思って、それを向井くんで実践したっていう。Disclosureみたいなイメージがずっとあって、当時日本ではああいうセットでライブをやるのってあんまりなかったと思うんですけど、それを1つ形にできて、そのライブを観たほかのアーティストからまたサポートに誘ってもらったこともありました。
──一方で、「楽曲を作る」という意味では当然モップが主戦場だと。
George それがゆえに、自分のバンドが一番悩むんですよね。「こういう曲があるんですけど、どういうふうにライブやったらいいですかね?」っていうのは、作曲で言うとアレンジの部分なので、一がある状態で取りかかれるけど、モップはホントにゼロからなんで、好き勝手できる分、できることが多すぎちゃって。
──新作に関しては、方向性はどのように決まっていったのでしょうか?
George 歌モノが入った作品を2枚出して、またインストに戻って来れたのは、単純に僕らにまたインストをやる体力が付いたからだと思うんですよね。それこそ、それぞれが外で経験を積んだからこそ、帰って来れたと言うか。歌のある音楽は歌がトップにいないといけないと思うんですけど、それをカットすることで、何で衝撃を与えるかってところに戻ってきて……「じゃあ、でかい音出そう」みたいな感じでした(笑)。
ガバの波、来んじゃね?
──「Health」は非常にアグレッシブな作品で「やっぱりモップはロックバンドだな」と思う一方、ハードコアテクノやレイヴの狂騒感もありますよね。
Kikuchi 「Gabber Juice」と「mental」は今年の早い段階で録り終わってたので、その時点で「バコーン! ドバーン!でよくね?」って雰囲気はあったと思います。
George 1曲目の「super yeah」は最後に1日で作った曲で、作った翌日に録った。
──タイトルからして、衝動的ですもんね(笑)。
George 元気な言葉を2つ並べようと思って、仮タイトルからこれでした(笑)。
──リードトラックの「Gabber Juice」は、文字通りハードコアテクノのいちジャンルであるガバがモチーフになっているわけですよね。
Kikuchi 去年くらいから当時のガバファッションみたいなのが日本で流行りはじめて、「ガバの波、来んじゃね?」って。たぶん、来ないんですけど(笑)。
George ロシアの「Gosha Rubchinskiy」ってブランドがあるんですけど、旧ソ連のパンクな感じと、ハードレイヴの感じがミックスされてて、それがけっこう衝撃だったんです。で、「この洋服が似合うジャンルはなんだろう?」「ガバじゃね?」って、そこからですね。「こういうファッションの人たちが街中を歩いてるときに、映像として、どういう音楽が当てはまるか」を考えて曲の作り方をすることが多くて。映画のサントラ的なニュアンスなんですけど、この曲もそうやって作りました。
X JAPANとレイヴは同じ
──実際に、MVもストリート感がありますもんね。ちなみに、前作ミニアルバム「Aspiration」ではあえてひと時代前のフレンチエレクトロやディスコパンクをモチーフにしてましたけど、今回は時代で言うとさらにさかのぼりましたよね。
George 俺、これ作った頃ジュリアナ(東京)のミックスとか聴いてた。
Kikuchi ユーロビートとかね。
George 時期ごとに自分のモードがあるんです。ちなみに、今はまたMetallicaにハマり直してるんですけど(笑)。
──今回ゴリゴリのギターが前に出てるのも、Metallicaの影響?
Kikuchi これはX JAPANだよね(笑)。「Gabber Juice」を作ってるときに、Georgeが「X JAPAN今まで全然聴いてこなかったけど、すげえな」って言い始めて、「じゃあ、速いフレーズ入れようぜ」って。「Gabber Juice」と「mental」は、レコーディングのとき全員爆笑してました。
──X JAPANのどの曲が印象的だったんですか?
George なんだっけ……「BLUE BLOOD」? あれ、フレーズだけ歌ってみるとレイヴなんですよ。そういうのずっと聴いてたんで「これは同じジャンルだ!」って、頭の中でできあがっちゃって(笑)。めちゃくちゃなものを組み合わせて曲を作るのは、モップっぽさでもあるし。まあ、やっぱり激しいほうが楽しいよね。
Hitomi プレイ的には「これ難しい」とかはなかったんですけど、とにかくスピードが今までより速いので、それはつらかったです。「まだこんな単純なことできないんだ」って、思い知らされた感じ。「Gabber Juice」とか全部ダウンピッキングなので、やれる速さの最大を出した感じでした(笑)。
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今の音楽シーンって“あるようでない”
- MOP of HEAD「Health」
- 2018年11月7日発売 / コドモメンタルINC.
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[CD] 1500円
CMI-0044
- 収録曲
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- super yeah
- Gabber Juice
- mental
- Hooligan
- Aurora246
- MOP of HEAD(モップオブヘッド)
- 2006年に結成された、George(Machine)、Kikuchi(G)、Satoshi(Dr)、Hitomi(B)からなる4人組インストバンド。2011年7月に1stアルバム「RETRONIX」、2013年5月に2ndアルバム「BREAKING OUT BASIS」、2015年7月に3rdアルバム「Vitalize」を発表した。2016年7月にはUCARY & THE VALENTINE、小林要司(Large House Satisfaction)、LEO今井、YOCO ORGAN、渋谷龍太(SUPER BEAVER)とタッグを組んだ「and Touch You」、2017年7月にはUCARY、向井太一をゲストに迎えた「Aspiration」と、ボーカルトラックを収録したミニアルバムを発売。2018年にコドモメンタルINC.に移籍し、インストに立ち返った3rdミニアルバム「Health」をリリースした。