音楽ナタリー PowerPush - MONSTER大陸×勝田文
ブルースに魅了された2組が語る“marry”
ジャングルにキャデラック
──ではMONSTER大陸の皆さん、ベスト盤のタイトルはなぜ「marry」に?
藤倉 シンプルに「MONSTER大陸」とか、ほかの案もあったんですけど、タイトルを考えているときがちょうど勝田さんと出会ったタイミングで。ジャケットのイラストも描いてもらおうっていうことになっていたので「これ『marry』でいいんじゃないの?」となったんですね。
──最初は勝田先生がMONSTER大陸に影響を受けてマンガの設定を決めたのが、今度は勝田さんのマンガがMONSTER大陸のアルバムタイトルの決め手になったと。
勝田 本当にね。もうアルバムも発売しましたけど、いまだにちょっと信じられない感はあるんです、私の中で。
──ジャケットを勝田先生に描いてもらうことも、自然の流れで決まったんですか?
藤倉 そうですね。もしジャケットを……僕らのジャケットを描くとしたらどんなイメージですかって聞いたら「ジャングルにキャデラックなんですよね」って言われて。この人面白いなあと思いました。
勝田 (笑)。でもなんかね、ブルースにはキャデラックっていうイメージありますもんね。
千賀 そうですね。ブルースマンたちが成功して、お金が手に入るとみんな車を買いたがる。その車はだいたいキャデラックなんですよね。
区切りをつけて次に行こうぜ
──MONSTER大陸の皆さんはなぜこのタイミングでベストを出すことになったんでしょう? それとベスト盤のキャッチフレーズを「第1期MONSTER大陸の集大成」とされてますよね。なぜここまでを「第1期」としたのかっていうところもお聞きしたいなと思うんですが。
藤倉 また次のステージに行くための……勢いづけのために「ここで区切りを付けて次に行こうぜ」っていう思いで、ベスト盤という形で作品を出そうと。ただベスト盤っていっても今までのアルバムから曲を集めたってだけじゃ面白くないから、新曲2曲を入れた形で発表しました。
──勝田先生はアルバムは聴かれました?
勝田 はい、もちろん。ビデオクリップもあるような曲がベスト盤に入ってないというのが面白かったです。
千賀 1枚目から4枚目のアルバムを持ってくださってる方には「あ、あの曲入ってないんだ」「あ、ライブでやってるあの曲はこれには入ってないんだ」といったような面白い発見があると思う。逆にベストアルバムから手に取ってくれた人たちには「こういうPVも撮ってるんだ、ライブではベストに入ってないこんな曲もやってるんだ」って発見してもらえたらいいなと思ってますね。
──新曲の「cold city」は今までにないアプローチというか、過去の楽曲に比べてブルース色が薄いですよね。
藤倉 「cold city」に関しては、人から言わせればブルースじゃないとなるかもしれない。でも単純にいい音楽ができてるなと思った曲なんで、作品に入れたいなと思って。
勝田 確かに「cold city」は今までとすごく違うなって感じがしましたね。でも1stアルバムから4枚目までの流れをみても曲調はけっこう変わってきてる気がするので、これからも変わっていくのかなって感じがします。若いから先が楽しみですね。MONSTER大陸はブルースって言うけど古臭い感じに凝り固まってるところが全然なくて柔軟性があるので、面白いです。
──そういう意味では「cold city」のような曲はこれから先「第2期」への足がかりにもなってるということでしょうか。
藤倉 そうですね。ただ、たとえ変わっていっても、僕はこの4人のルーツにあるものは絶対変わらないと思うので。だからいろいろやってみたいなと思ってます。変わることに対する恐怖はないですね。
ルーツをしっかり持っているから
──MONSTER大陸「第2期」に向けてのビジョンはすでにありますか?
藤倉 単純に言えば自分たちの音楽を多くの人に聴いてもらいたいっていうのがあって。それを通して自分たちのルーツであるブルースが日の目を見るというか……ブルースに出会う人が増えたら単純にうれしいなとは思ってます。
吉田 ルーツをしっかり持っているからどんな音楽に挑戦しても絶対自分たちのものになると信じていて。いつでも挑戦する気持ちでやっていきます。
優三 自分はもう、とにかく若い世代に聴いてほしい。今までのファンももちろん大事にしているけれど、もっと若い人にライブに来てほしいですね。
勝田 皆さんが「自分にはルーツがあるから」って言うのがいいなと思うんですよね。私けっこうグラグラしてるので。だから皆さんの言葉を聞いて自分を省みたりして……すごい皆さん熱い。申し訳なくなってくる(笑)。
千賀 ブルースはもともとは労働歌で、つらい境遇にいた人たちが働きながら歌った歌なんですね。「せめて音楽で明るくなろうぜ」「みんな大変だけどよ、がんばろうぜ」っていうような思いが込められた音楽。ブルースは渋い、暗いみたいなイメージもありますけど、決してそうじゃなくて……。
藤倉 そう。今勝田さんがおっしゃってたみたいに「私、自分のルーツがなんだかわからない」とか「グラグラしてる」っていう人けっこう多いと思うんですよ。先が見えない不安な世の中ですけど、それをタラタラ文句言いながら歌ってても面白くないしね。聴く人に元気を与えられるようなバンドになれたらなと思ってます。
収録曲
- The Grip
- lover,baby
- ランドリー
- Party
- Ms.Lover
- marry
- Monster73
- drunkard
- オトナゲ
- おまたせ!
- NABACCALIDA
- cold city
MONSTER大陸(モンスタータイリク)
藤倉嗣久(Vo, G)、千賀太郎(Vo, Harp)、吉田靖雄(B)、優三(Dr)からなるブルースロックバンドで、優三の呼びかけにより2012年7月に結成。それぞれのメンバーが多くのセッション経験を持っており、ブルースを基盤にしたバンドサウンドにはロックやオルタナティブロック、ファンク、R&Bなどの要素も取り入れている。2013年2月に1stアルバム「発見」をリリースしデビュー、その後は8月に2ndアルバム「上陸」、2014年7月に3rdアルバム「進撃」、同年10月に4thアルバム「開放」を発表と、ハイペースな創作活動を続けている。2015年1月にベストアルバム「marry」をリリース。4月5日に東京・渋谷La.mama、4月9日に大阪・LIVE HOUSE Pangeaにてベスト盤の発売を記念したワンマンライブを実施。
勝田文(カツタブン)
7月18日愛知県生まれ。1998年、「晩夏」が「YOUNG YOU」に掲載されデビュー。2007年には佐藤多佳子の小説「しゃべれどもしゃべれども」のコミカライズを担当し話題を集めた。代表作に「あのこにもらった音楽」「プリーズ、ジーヴス」「ちくたくぼんぼん」など。2014年8月より「Cocohana」にて「マリーマリーマリー」を連載中。「マリーマリーマリー」1巻のコミックスが2月25日に発売。