音楽ナタリー PowerPush - MONSTER大陸×勝田文
ブルースに魅了された2組が語る“marry”
ブルースロックバンドのMONSTER大陸がベストアルバム「marry」を発表した。結成から2年で4枚のアルバムを発表するというハイペースな制作活動を行ってきた彼らがバンドの“第1期”の集大成と位置付けた本作には、メンバーが厳選した10曲に新曲2曲を加えた12曲が収められている。ナタリーではこのリリースを記念してMONSTER大陸と、彼らのファンを公言するマンガ家・勝田文の対談をセッティング。勝田は2014年8月からマンガ誌「Cocohana」にて、MONSTER大陸のナンバー「marry」に着想を得た、結婚を題材にしたラブコメディ「マリーマリーマリー」を連載している。なお今回のベスト盤のジャケットイラストも彼女の手によるもの。ブルースに魅了され縁を結んだ2組に、ブルースへの思いから結婚観に至るまでを語り合ってもらった。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 佐藤類
事後報告でした
──勝田先生はどういったきっかけでMONSTER大陸を知ったんですか?
勝田文 ラジオで彼らの生演奏を聴いてカッコいいなあと思ったのがきっかけ。その時点でアルバムが2枚出ていたのですぐ買って、やっぱりカッコいいなと思ったんですね。ちょうど当時ブルースが気になっていたんです。もともと1960~70年代のイギリスのロックをよく聴いていたんですけど、みんなブルースのカバーをやっているんですよ。そしたらMONSTER大陸のアルバムのライナーにも「ブルースロック」って書いてあったので、余計に気になって。
──実際に顔を合わせたのはどういったタイミングで?
勝田 私が彼らのライブを観に行ったんです。
藤倉嗣久(Vo, G) 去年の8月に僕らが大阪でライブしたときですよね。
勝田 そうですね。ちょうど新連載で描こうとしてた「マリーマリーマリー」の登場人物のキャラ設定をどうしようかなって考えていた5月くらいに彼らの音楽を聴いて、主人公の里多に出会ってすぐプロポーズする森田をブルースギタリストにしちゃったんです。藤倉さんをモデルに。それで彼らのライブを初めて観たのが8月。取材させてもらえないかな、とりあえずダメもとで行ってみよう、と。描いた原稿を2話分くらい持って。
──あ、もう描いてたんですね。
藤倉 事後報告でした(笑)。勝田さんが「皆さんをモデルにしてマンガ描いたんです、よかったら取材させてください」って。
──そのときって、皆さんどういった印象でしたか?
藤倉 僕らにインスパイアされてマンガを描いたっていうことに、単純に驚きましたね。すごいところ狙ってくるな、みたいな。
勝田 あはは(笑)。
吉田靖雄(B) なんか、全然現実味が……。僕らのバンドをイメージして描いてくださってること自体「どういうことだ?」 って(笑)。
優三(Dr) こういうこともあるんだなあ、っていう感じ(笑)。
千賀太郎(Vo, Harp) まあ、イメージソースは主に藤倉さんなんですけどね(笑)。少女マンガってほとんど読んだことがなかったんですけど、やっぱり俺らがよく見る少年マンガとはちょっと違う感じで。それは面白かったですよね。
勝田 そう、少女マンガなんで嫌がられるかなあってすごい思ってたんですよね。でも皆さん優しく受け入れてくれて。
──藤倉さんがモデルになった森田のことを聞いてもいいですか?
勝田 はい(笑)。藤倉さんの影響で森田は眼鏡キャラになったんですけど、最近は顔もどんどん似てきちゃってる気がする(笑)。
千賀 最初に藤倉さんをモデルにしたところは眼鏡と楽器、機材なんですよね?
勝田 そうですね、ブルースギタリストっていう部分で。でも本当に、ブルースギタリストの生態というものを全然知らなかったので、ネットとかで見た藤倉さんの経歴をまんま参考にしちゃったみたいなところもあって。
藤倉 へえー。
勝田 「これ絶対怒られるな」って思いながら。本当、すみません(笑)。
藤倉 いえいえいえ、光栄なことですよ。
勝田 私、絵を描くときに実際の人をモデルにしないと描けなくって。なので、今回の場合は藤倉さんと、眼鏡をかけてたときのマイケル・ケイン、あと映画「8 1/2」のときの(マルチェロ・)マストロヤンニなどをモデルにしました。
“Don't think, feel”
──知り合ってからのそれぞれの印象はいかがですか?
勝田 もうみんな優しい!
──それこそ、作品を描くためにメンバーに取材することも……。
勝田 ギターのことについて特に取材させてもらいました。
藤倉 「ピックは何回のライブで交換するんですか?」とか、そういう質問ですね。
勝田 あと、やっぱりブルースって結局なんなのか、私は未だにはっきりとわからないので。「ブルース」なのか「ブルーズ」って言わなきゃいけないのか?とかね。みんな「ブルーズ」って言います?
藤倉 僕らは「ブルース」って言いますね。
──勝田先生にブルースとはこういうものだよって教えるとしたら、メンバーの皆さんはどのように伝えますか。
藤倉 形とかじゃなく、ブルースのある音楽っていうのは絶対魂のある音楽だし、ブルースかどうかって、魂のある音楽かそうじゃないかだと思うんですよ。魂を感じることができる音楽だったら俺はなんでもいんじゃないかなと。
吉田 “Don't think, feel”ですよね……ブルース・リーとかけてるわけじゃないですよ?
一同 あははは(笑)。
──勝田先生、MONSTER大陸を知ったことでブルースへの理解や知識は深まりましたか?
勝田 そうですね。私はルーツをたどっていく作業が好きなので、イギリスのロックを聴く中でわりと昔のロックンロールとかも聴いたりはしてたんですけど、ブルースを最初聴いたときは眠くなっちゃう感じだったんです。だけどMONSTER大陸が昔のナンバーをカバーしているのを聴いたらすごくカッコいいなと思えて。そういう入り口から入ると、ちょっと聴こえ方が変わってくるんですよね。それで、ブルースって面白いんだなあと思うようになりましたね。
千賀 俺らは昔のブルースのカバーもやってますからね。それを聴いて、オリジナルも聴いてもらって、どんどん興味持ってほしいなっていう、バンドとしての思いがありますから。その思いが伝わったのはすごいうれしいですよね。
優三 勝田先生みたいな人が増えてくれるのが一番うれしい。
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収録曲
- The Grip
- lover,baby
- ランドリー
- Party
- Ms.Lover
- marry
- Monster73
- drunkard
- オトナゲ
- おまたせ!
- NABACCALIDA
- cold city
MONSTER大陸(モンスタータイリク)
藤倉嗣久(Vo, G)、千賀太郎(Vo, Harp)、吉田靖雄(B)、優三(Dr)からなるブルースロックバンドで、優三の呼びかけにより2012年7月に結成。それぞれのメンバーが多くのセッション経験を持っており、ブルースを基盤にしたバンドサウンドにはロックやオルタナティブロック、ファンク、R&Bなどの要素も取り入れている。2013年2月に1stアルバム「発見」をリリースしデビュー、その後は8月に2ndアルバム「上陸」、2014年7月に3rdアルバム「進撃」、同年10月に4thアルバム「開放」を発表と、ハイペースな創作活動を続けている。2015年1月にベストアルバム「marry」をリリース。4月5日に東京・渋谷La.mama、4月9日に大阪・LIVE HOUSE Pangeaにてベスト盤の発売を記念したワンマンライブを実施。
勝田文(カツタブン)
7月18日愛知県生まれ。1998年、「晩夏」が「YOUNG YOU」に掲載されデビュー。2007年には佐藤多佳子の小説「しゃべれどもしゃべれども」のコミカライズを担当し話題を集めた。代表作に「あのこにもらった音楽」「プリーズ、ジーヴス」「ちくたくぼんぼん」など。2014年8月より「Cocohana」にて「マリーマリーマリー」を連載中。「マリーマリーマリー」1巻のコミックスが2月25日に発売。