Monster Rion×Jinmenusagi|2つの対談で解き明かす 新鋭ダンスミュージックに宿るメッセージ

それぞれの活動のモチベーション

──Jinmenusagiさんからクリエイターとしての先輩であるMonster Rionのお二人に質問があれば、この機会にお願いします。

Jinmenusagi お二人の、一番のモチベーションってなんですか? 例えばこのアルバムを作ってた3年間は何を思ってがんばれたのか。

The BK Sound そうだなあ……(考え込む)。Monster Rionは今までの自分と違うやり方で制作してるって意識があって、その刺激がモチベーションだったかな。そもそも俺とSONPUBは曲作りの仕方が真逆なんだよね。SONPUBはミックスとマスタリングまで自分でやるっていうのもあって、どこに音を置いてどういうメッセージにするか、最初から立体的にイメージがある人で。反面、俺はレゲエ的なノリとバイブスでここまでやってきたから。俺にとってMonster Rionの制作は、SONPUBの作り方を勉強させてもらってるって意識は大きいかも。バイブスではやり過ごさず、こういう作り方をしてるからこんな音になるんだってプロセスを見て、音楽との新しい向き合い方を学ぶ修行みたいだったね。

SONPUB

SONPUB 昔から変わらずモチベーションになっていることは、日々1mmでも成長したクリエイターとしての自分に会うこと。ちなみにMonster Rionは、SONPUBとしてデビュー10周年を迎えた2014年にベストワークスアルバム「X -BEST WORKS-」を出して、次の年から何か新しいことをやろうと思って本格的に活動し始めたのね。俺としては次の一手となるこのプロジェクトで、ソロとは違ったサウンドアプローチで革新的なものが作れるのか、そして確固たる認知を得られるのかが挑戦だった。やっぱり新しいことは人から敬遠されるのを肌で感じたというか、今までフォローしてくれてた人から「大丈夫なの?」って目で見られることもあったから。だから挑戦や目標の達成のため。2015年の本格始動から決めていた「3年以内にアルバム」というMonster Rionの1つ目の目標に向かってく、すべてがモチベーションだったと思う。

Jinmenusagi そうなんスね。なんで聞いたかというと、単純に気になるのと、「俺なんかまだ全然だからがんばらなきゃな」って自分を鼓舞したかったので。Monster Rionの曲は、どれも背景や目的があってちゃんと計画を立てて作られてますよね。それにはすごく影響を受けて、自分も作る前にまず考えるようになりました。何を雛形にするかだけじゃなくて、それをローカライズして自分の近いところに届けるためには何が必要か。

──逆にJinmenusagiさんの活動の原動力は?

Jinmenusagi やっぱり、曲を作るのとライブをするのが気持ちいいんですよ。普通の人にとってのセックスとか酒とか、日々のストレスとか悩みを軽減してくれるものに俺は“音楽”が入ってるんです。だから、特別なモチベーションが必要というより生活の一部としてやっていくものって言うか。

SONPUB あー、その気持ちはまったく一緒。曲作って表現したいものができた瞬間、ものすごい達成感を感じるんだよね。そのとき一気に疲れが取れる。

Jinmenusagi あともう1つ素朴な質問が。「自分は音楽でやっていこう」ってマインドになってから数えて、キャリア何年目になりますか?

SONPUB 俺はちょうど20年目。ギターを始めたのはもっと前だけど、17歳のとき、プロでもなんでもないのに勝手にプロ意識を持ってる自分に気付いたんだよね。「俺はもうこれで生きていく」って覚悟を決めた自分がいた。

The BK Sound 俺は19歳ぐらいかなあ。だから15、6年目。

Jinmenusagi プロ意識を持ったって意味で言うと、俺は3年ぐらいかもしれないです。ラップのようなものを始めてからは10年ですけど。

SONPUB 2つともすごいいい質問だったね。

声を波動として使っていきたい

Jinmenusagi

Jinmenusagi まだ道半ばなんですけど、俺は自分の声をもっと楽器として使いたいんですよね。声を、単に言葉を発する手段じゃなくて楽器に近付けたい。最終的には声で人間以外と交信できるぐらいのところまでいきたいッスね。

SONPUB 人間以外って、例えば犬と話すとか?

Jinmenusagi いや、ワイングラスを声で割るヤツとかマジでいるんですよ。ホーミーの、もっと圧が強い感じというか、どんな大きさのグラスでも反響する音階を探して割っちゃうヤツ。

The BK Sound ヤバいね。

Jinmenusagi そんなふうに波動として使っていきたいです、声を。

SONPUB 自分の思いや生き様をリリックにすることがラッパーの王道スタイルとされている中で、そういう考え方の人あんまりいない気がするから面白いなー。自分の思いをリリックにするとかカルチャーを重んじるとか、ヒップホップのスキルを磨く人が多いから。

Jinmenusagi ヒップホップって価値観のプレゼンだと思ってて。現代の音楽がサウンドだけですでに情報過多なところに、ラップとなると詞の情報量も多くて、ヘタするとうるさく聞こえちゃうんですよね。でも、情報を減らしながらもメッセージの絶対量を変えないっていうのはできるはずで、そこが波動みたいなところだと思うんですよね。

The BK Sound ラップっていうアートだね、もはや。

SONPUB うん。今までの概念と全然違う表現を開拓しようとしてる。そういう意味でジメサギはアーティスティックなラッパーだなと思う。

Monster RionとJinmenusagi。
Monster Rion「Message」
2017年7月12日発売 / avex EDM
Monster Rion「Message」

[CD]
2592円 / AVCD-93694

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Yellow People Song feat. Jinmenusagi
  2. Monster Riot feat. Jinmenusagi
  3. Mosh Pit Jungle feat. MAKOTO & ISHI (SAND)
  4. Lee Perry (Skit)
  5. Future Rebel Music feat. Lee "Scratch" Perry & J-REXXX
  6. Message feat. 向井太一
  7. 10 to Dance (Skit)
  8. Ignition Riddim
  9. Secret Dancehall feat. IO, YOUNG JUJU & Thelma Aoyama
  10. Secret Crush feat. Konshens
  11. Yellow Man (Skit)
  12. Tropical Love
  13. Lion Chillin' feat. KIYOSAKU
  14. 獅子 Skit feat. Leon
  15. Stronger feat. Voice Magician
Monster Rion(a.k.a. 怪物獅子)(モンスターライオン)
Monster Rion
DJ / プロデューサー / トラックメーカーのSONPUBとMC / セレクターのThe BK Soundからなる、2015年に活動を開始したユニット。ユニット名の「Rion」はRebellionを略した造語。SONPUBがDJや楽曲制作、プロジェクト全般のプロデュースを担い、BKがMCを務める。お互いのルーツであるエレクトロニック、ヒップホップ、レゲエを昇華したダンスミュージックに定評があり、過去に配信リリースした楽曲はいずれもiTunes Storeのダンスチャートで1位を記録した。2015年から2016年にかけて100公演以上におよぶ大規模なツアーを実施。ブートミックスCD「R MIX」シリーズはライブ会場とWeb通販のみで累計売上が5000枚を突破した。2017年7月に、リー・ペリーなど国内外のゲストを多数迎えた1stオリジナルアルバム「Message」をリリースした。
Jinmenusagi(ジンメンウサギ)
Jinmenusagi
1991年11月生まれのラッパー。インターネットに自作音源をアップしながら活動を続け、2011年よりLOW HIGH WHO? PRODUCTIONに所属。2012年に1stアルバム「Self Ghost」を発表したのを皮切りに、フリーミックステープを含むさまざまな作品をハイペースで発表。2014年にLOW HIGH WHO?の再構築に合わせて独立し、自身で設立したレーベル・インディペンデント業放つから2015年12月にアルバム「ジメサギ」を発表した。2016年12月にはミニアルバム「はやいEP」とベストアルバム「2K11-2K15 JINMENUSAGI ANTHOLOGY」を発表している。