Monster Rion×Jinmenusagi|2つの対談で解き明かす 新鋭ダンスミュージックに宿るメッセージ

Monster Rion×Jinmenusagi対談

「Monster Riot」をキャリアに残せたことは誇らしい

──Jinmenusagiさんはアルバム中2曲に客演している、ゆかりの深い人物ということでお招きしました。

The BK Sound

The BK Sound Monster Rionの結成後、一発目の配信シングルとして「Stronger feat. Voice Magician」を出して、次はラップ曲を作ろうと思ってラッパーを探してたんですよ。そのときDJ SOULJAHくんのリリースパーティでSONPUBと一緒にジメサギのライブを観て「ジメサギいいねえ」って話になって、SOULJAHくんに紹介してもらったのが始まりですね。

──「いいね」となったポイントは?

SONPUB 自由なスタイルのラッパーだったので。最初に存在を知ったのは2015年にSoundCloudで出した、ベースミュージックをビートジャックしたミックステープ(「恐怖」)だったかな。グライムとかUK系の音に日本語ラップを乗せるって新鮮だった。俺もいろんなジャンルを聴く雑食派で、それをトラックメイキングに反映させてるんだけど、ラップに反映させてる人ってあんまり見たことがなかったんですよね。

Jinmenusagi あれはHyperJuiceのharaくんの提案もあって作ったんですけど、ラッパーって対応できるBPMが限られてる節があるなと思って、それなら新しい音にアルバム単位で挑戦してみようというのがきっかけでした。ヒップホップの王道を進もうとするとどうしてもリリックの内容を重視しなきゃいけなくて、でも俺には人生経験の厚みがなかったんで、無感情にリズムに集中できるようなビートのほうが自分には合ってて。ヒップホップ以外のサウンドでもラップできるのは強みなんだなって、発表後の反響で初めてわかったッス。

The BK Sound 「Monster Riot」は2016年5月に出したけど、トラックはSONPUBが2015年3月くらいに作ってたから1年越しのリリースだったね。

Jinmenusagi 俺はあの曲で有名にさせてもらったと思ってます。ラップの中にレゲエ要素を入れるという新しい試みも楽しかった。あの1曲をキャリアに残せたことはアーティストとして誇らしいですよ。あんなに太いビートの曲、やろうと思ってもなかなかできないので。

SONPUB 実際これがMonster Rionの現場で一番のアンセムになってるからね。ドロップ(サビ)に入った瞬間いきなり超ハードになるからみんなビックリするし、「ガオ! ガオ!」っていうフレーズもキャッチーだから。ジメサギはレゲエをイメージしたフロウに初挑戦してくれたけど、思ってもないクオリティでやっぱりスキルが高いなと思った。

Jinmenusagi いえいえ。「太い音」って簡単に言うけど、作るのめちゃくちゃ難しいじゃないですか。ベースミュージックは圧がないとカッコつかない音楽だし、パワーが弱いと俺みたいな機械的な声のラップはよさが半減しちゃう。なので、まずトラックの完成度があってこそでした。

家でトラップしか聴かないJinmenusagi

──2度目のコラボとなったアルバム新録曲「Yellow People Song」は、どのように制作されたんですか?

SONPUB 「Monster Riot」で相性のよさはわかってたので、今度はジメサギとメッセージ性のある曲を作りたいなと思って。「Yellow People Song」の元ネタは、エヴァートン・ブレンダーの「Ghetto People Song」っていうレゲエの有名な曲なんです。サンプリングすると(権利問題で)出せないからそれを彷彿させるサックスやギターフレーズを弾いて、それをサンプリングっぽく加工してヒップホップトラックを作って。元ネタは社会的なメッセージが強いレベルミュージックなので、それを僕らのモノにするために「Yellow People Song」にしました。だからこの曲もトラックとラップの両方にメッセージが宿ってます。

Jinmenusagi トラック自体は疾走感のあるトラップで今っぽい感じがしますよね。ただ、今回はレコーディング大変でしたねえ。「Monster Riot」の手応えがあったから、次にヘンなもの出せないみたいな共通意識があって(笑)。

The BK Sound 前のを越えなきゃっていうね。

Jinmenusagi ハードル高かったッス。トラップって曲調的にボーカルのエディットが肝だと思うんですけど、その面でも「YSP」ではうまくハマってよかったです。あと制作中、Monster Rionのお二人に、元ネタはこれなんだとか、レゲエの有名なフレーズをオマージュしてこういうものに作り変えたいんだとかいう話をしてもらって、ホント勉強になりました。僕は普段、家でトラップしか聴かないんで、こうやって別ジャンルの音楽の解釈の仕方を、段違いに知識のあるお二人に教えてもらったことで、自分のこれからの制作にも活きてくると思います。やっぱりいろんなジャンルを知った上でローカライズして新しい形にできる人たちとの制作が、一番刺激になりますね。

The BK Sound うれしいね。俺は「Yellow People Song」のラップにめっちゃラガを感じて。ダミアン・マーリーを思わせるフロウだなって。世界に挑むアルバムの1曲目にふさわしい、新しいダンスホールだと思う。

Jinmenusagi

Jinmenusagi ダミアン・マーリーのファンに怒られないといいけど……ありがとうございます。Monster Rionの曲のときは、喉を広げて腹から声出すようにしてるんですよ。っていうのも、SONPUBさんの作るトラックがバキバキだし、BKさんもライブのとき別人のようになっちゃうじゃないですか。こっちもエナジーを出さないとそのパワーに負けちゃうんですよ。

SONPUB 「Monster Riot」のラップパートはだいぶ音数を少なくしてるけど、それでもガッツリいかないとっていう感じ?

Jinmenusagi そうですねえ。吠えてる感じです。

SONPUB つーか、家でトラップしか聴かないの?

Jinmenusagi 気付いたらトラップしか聴かなくなっちゃったって感じですね。

SONPUB 俺は絶対無理だわー。

The BK Sound 俺も(笑)。

Jinmenusagi トラップなのかどうかは音の配置で決まるんで、どのジャンルでもトラップになりますよ。

SONPUB でも、やおや(TR-808)サウンドは重要だよね?

Jinmenusagi そうですね。やおやサウンドと歌い方でトラップになっちゃう。ただトラップばっかり聴いてると甚大な影響があって……夜、眠りにくいんですよ。聴いてるとテンション上がっちゃって。それが最近の悩みッスね。

SONPUB すごい悩みだね(笑)。

Monster Rion「Message」
2017年7月12日発売 / avex EDM
Monster Rion「Message」

[CD]
2592円 / AVCD-93694

Amazon.co.jp

収録曲
  1. Yellow People Song feat. Jinmenusagi
  2. Monster Riot feat. Jinmenusagi
  3. Mosh Pit Jungle feat. MAKOTO & ISHI (SAND)
  4. Lee Perry (Skit)
  5. Future Rebel Music feat. Lee "Scratch" Perry & J-REXXX
  6. Message feat. 向井太一
  7. 10 to Dance (Skit)
  8. Ignition Riddim
  9. Secret Dancehall feat. IO, YOUNG JUJU & Thelma Aoyama
  10. Secret Crush feat. Konshens
  11. Yellow Man (Skit)
  12. Tropical Love
  13. Lion Chillin' feat. KIYOSAKU
  14. 獅子 Skit feat. Leon
  15. Stronger feat. Voice Magician
Monster Rion(a.k.a. 怪物獅子)(モンスターライオン)
Monster Rion
DJ / プロデューサー / トラックメーカーのSONPUBとMC / セレクターのThe BK Soundからなる、2015年に活動を開始したユニット。ユニット名の「Rion」はRebellionを略した造語。SONPUBがDJや楽曲制作、プロジェクト全般のプロデュースを担い、BKがMCを務める。お互いのルーツであるエレクトロニック、ヒップホップ、レゲエを昇華したダンスミュージックに定評があり、過去に配信リリースした楽曲はいずれもiTunes Storeのダンスチャートで1位を記録した。2015年から2016年にかけて100公演以上におよぶ大規模なツアーを実施。ブートミックスCD「R MIX」シリーズはライブ会場とWeb通販のみで累計売上が5000枚を突破した。2017年7月に、リー・ペリーなど国内外のゲストを多数迎えた1stオリジナルアルバム「Message」をリリースした。
Jinmenusagi(ジンメンウサギ)
Jinmenusagi
1991年11月生まれのラッパー。インターネットに自作音源をアップしながら活動を続け、2011年よりLOW HIGH WHO? PRODUCTIONに所属。2012年に1stアルバム「Self Ghost」を発表したのを皮切りに、フリーミックステープを含むさまざまな作品をハイペースで発表。2014年にLOW HIGH WHO?の再構築に合わせて独立し、自身で設立したレーベル・インディペンデント業放つから2015年12月にアルバム「ジメサギ」を発表した。2016年12月にはミニアルバム「はやいEP」とベストアルバム「2K11-2K15 JINMENUSAGI ANTHOLOGY」を発表している。